2019 Fiscal Year Research-status Report
国民経済の開放性が草創期の社会保険制度に及ぼした影響に関する国際比較研究
Project/Area Number |
19K02155
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
松永 友有 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (50334082)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ケインズ / 自由貿易 / 保護主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、19世紀末期から20世紀前半にかけての西洋諸国における通商政策が社会政策におよぼした規定的影響を検出することである。イギリスの経済学者ジョン・メイナード・ケインズは、当時における通商政策と社会政策の両面で、鍵を握るとも言える影響力をもった思想家であった。 このケインズに関して、私は「ジョン・メイナード・ケインズの国際経済思想」というタイトルの単著論文を作成し、経済学史学会の機関紙である『経済学史研究」に論説として2019年8月に投稿した。匿名査読者による審査を経たうえで、本論文は2020年2月に掲載決定となった(完成稿は3月に受理)。これは、2020年度の『経済学史研究』第62巻第1号で刊行予定である。 本論文では、特にケインズの通商政策思想に焦点を当てた。従来の研究史においては、ケインズのエッセンスを自由貿易主義とみなす見解と保護主義とみなす見解が相対立してきた。この論争に関して、私はケインズの政治党派、政治イデオロギーに着目することによって、一見矛盾するかに見えるケインズの国際経済思想を整合的に理解するためのオリジナルな観点を提示した。 より具体的に言えば、ケインズは常に海外市場よりも国内市場を重視し、国民経済における製造業の役割を不可欠とみなす点で、本来ならば保護主義と親和性が高い経済的ナショナリストであったが、その強烈な左派的政治志向と自由貿易主義国際平和論への思い入れのゆえに、1933年前後の一時の例外を除いては、保護主義への忌避感情を完全に払拭することはできなかったのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
経済思想史・経済学史分野では日本で最大の学会である経済学史学会の機関紙である『経済学史研究』に単著論文を投稿し、匿名査読者による厳正な審査を経て論文掲載が決定したことは重要な成果である。 この論文において、20世紀前半の西洋諸国の経済政策思想において決定的に大きな役割を担ったケインズの国際経済思想を解明したことは、通商政策と社会政策との関連をテーマとする本研究課題を前に進める意義をもつと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、イギリスに研究出張し、社会保障政策関連の各種史料収集に従事することを予定していたが、新型コロナウイルスの蔓延という予期せぬ事態を受け、これを実現することは難しいと思われる。 しかしながら、2019年2月に関西大学図書館に研究出張し、当図書館所蔵のジョゼフ・チェンバレン文書、およびケインズ文書を閲覧・複写したことにより、ある程度の一次史料の収集は既になされている。これらの一次史料の分析を中心に、既に収集した欧米諸国の社会政策関連の二次文献も調査しつつ、本研究を遂行していく予定である。
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Causes of Carryover |
予定していた海外出張をおこなうことができなかったため、繰越額が生じた。2020年度も海外出張は困難な状況であるが、文献収集を着実に進めていく予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Book] 禁忌の兵器2020
Author(s)
榎本 珠良
Total Pages
418
Publisher
日本経済評論社
ISBN
9784818825505