2020 Fiscal Year Research-status Report
知的障害者のグループホームにおける成年後見制度利用の実態と支援モデルの開発
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19K02158
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
古井 克憲 和歌山大学, 教育学部, 准教授 (10553018)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 知的障害 / グループホーム / 成年後見制度 / 権利擁護 / 意思決定支援 / 質的研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、グループホーム(GH)で生活する知的障害者の成年後見制度の利用実態を明らかにし、支援モデルを開発することである。 2020年度は、計画をもとに研究を進め、主な成果は、①日本社会福祉学会でのポスター学会発表(「知的障害者のグループホーム事業者からみた『専門職後見への期待と不安』」)、②学術論文『社会福祉学』での研究成果の公表(「グループホームで暮らす知的障害者の成年後見制度利用における現状と課題」、③フォーラムでの講演(和歌山大学特別支援教育フォーラム2020年10月28日「知的障害のある人に対するパーソン・センタード・プランニングの視点と方法」)を行うことができた点にある。 以上では、近年の先行研究も踏まえながら、成年後見制度の利用はもとより、知的障害者の権利擁護として障害者本人の意思決定が困難な場合、本人の意思を最大限尊重しつつ、本人に加えて、日常生活を知り、親身になって考えている関係者による「意思決定支援」の「機会」と「プロセス」を保障することが必要になってくると考察した。 とくに②で、GH事業者の立場から、知的障害者の成年後見制度の利用の現状について次の点を明らかにした点が本年度の主要な研究実績として挙げられる。 研究対象であるGH事業者は、居住者の【親族後見の限界】に直面し、専門職後見の利用を思案している。【専門職後見への不安】【後見類型の判定への疑問】がある中、利用ケースでは【ステークホルダーの関係調整】をよりよい関係づくりのために模索しながら行っている。とくに【地域生活での金銭管理】については、後見人との意見調整が必要な事項であると捉えていた。知的障害者一人ひとりの地域生活を理解し、金銭管理のみではなく後見人が「権利擁護」を担えるような制度の見直しや、後見制度に替わるものの検討も含め【地域での権利擁護の仕組みづくり】を求めていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グループホーム(GH)での知的障害者の成年後見制度利用の現状と課題について、GH事業者の立場からではあるものの、その中で障害者本人や後見人、GH支援者の姿を記述し、利用の実態と課題を示すことができた。このことにより、今後の制度や支援の在り方をより明確にすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果を活かし、研究計画に基づいて、コロナ禍にあるフィールドの状況を見ながら、調査を慎重に進めていく。コロナ禍での後見人とGH居住者、GH支援者との関わりについても検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染予防の影響で、予定していた学会参加や学会発表がオンラインになったり、データ分析や資料整理を自分で行えるよう調整したりしたため次年度使用額が生じている。研究計画に沿って使用するとともに、オンラインで研究を遂行するために必要な機器・備品の整備についても検討する。
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Research Products
(2 results)