2022 Fiscal Year Research-status Report
知的障害者のグループホームにおける成年後見制度利用の実態と支援モデルの開発
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19K02158
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
古井 克憲 和歌山大学, 教育学部, 准教授 (10553018)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 知的障害 / グループホーム / 成年後見制度 / 権利擁護 / 意思決定支援 / 質的調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、グループホーム(GH)で生活する知的障害者の成年後見制度の利用実態を明らかにし、支援モデルを開発することである。 2022年度の主な成果は、①日本社会福祉学会第70回秋季大会でのeポスター発表(「重度知的障害者における医療同意も視野に入れた意思決定支援:人生の最終段階における支援付き意思決定の文献整理を通して」)、②オーストラリア・メルボルンでのフィールドワーク、③日本質的心理学会第19回大会シンポジウム「『障害』と『病い』をめぐる質的研究」での発表(「重度知的障害者の地域生活支援の現場でのフィールドワークから」)を行った点にある。 前年度に引き続き、①では、成年後見制度を含め、知的障害者の成人期移行の社会的支援の中でも、社会的に代替する仕組みが未整備な領域である「医療同意」について、グループホームでの実態を検討していくために、海外文献をもとに研究の分析枠組み及び、日本の今後の研究・実践課題について整理することができた。この研究過程の中で、オーストラリアのWatsonら(2017)による支援付き意思決定モデルが日本の実践にも参考になるものと確認し、②オーストラリア・メルボルンで資料採集及び現地の障害福祉の支援者の聞き取りを行うことができた。日常生活や社会生活場面での意思決定と,医療同意にかかる意思決定を切り離さず連続して捉えられる支援モデルの必要性を再認識することができた。 ③では、本研究を進めていく上での研究方法について省察を行った。「語ること」が困難な(意思疎通にも困難のある)障害のある人に対して、質的調査を行なっていくうえでの倫理的配慮や、より長期的な視野に立ったフィールドワーク、支援者からのエピソードの集積、エピソードのメタ的分析、記録分析の重要性について提示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フィールドワークを継続的に行っており、グループホーム事業者の立場からを主とするものの、成年後見制度の利用において、居住者本人の姿を捉えることにつながるエピソードの集積につとめることができている。前年度に引き続き、本研究のテーマであるグループホームでの知的障害者の成年後見制度利用の実態と支援モデルの開発に向けて、国内外での研究を広く視野にいれ、日常生活及び社会生活場面から医療同意の場面を連続して捉えた支援モデルの開発に向けて研究を進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果を活かし、研究計画に基づき、フィールドの状況を見ながら、調査を慎重に進めていく。日本のこれからの研究・実践課題を包括して捉えることができるように、権利擁護、意思決定支援の視点を取り入れた、グループホームでの知的障害者の成年後見制度利用にかかる支援モデルについて検討・提言することを目指す。
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Causes of Carryover |
前年度に続き、新型コロナウイルス感染予防の影響で、予定していた学会参加や学会発表がオンラインになったり、データ分析や資料整理を自分で行えるよう調整したりしたため次年度使用額が生じている。研究計画に沿って使用するとともに、資料整理やデータ入力にかかる費用、研究成果の公表及び情報収集のための学会参加や当該領域における研究者との面談、海外文献や研究に必要な物品の購入について検討する。
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Research Products
(2 results)