2019 Fiscal Year Research-status Report
Inclusive Approach as a research methodology
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19K02160
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Research Institution | Tenri University |
Principal Investigator |
森口 弘美 天理大学, 人間学部, 准教授 (10631898)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笠原 千絵 上智大学, 総合人間科学部, 准教授 (60434966)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | インクルーシブリサーチ / 研究方法論 / 知的障害者 / ビロング |
Outline of Annual Research Achievements |
本科研事業は、知的障害者が共同研究者として研究のプロセスに参画するインクルーシブリサーチを学術的な観点から検証し、インクルーシブアプローチという新たな方法論の提示を目指すものである。研究代表者らは民間の研究資金によって知的障害者との共同研究を行っているが、本科研事業ではその評価や発表を行い、検証することで方法論について検討している。本年度は、リサーチ①とリサーチ②の検証に着手し、リサーチ③の立案に取り組んだ。 リサーチ①将来の暮らし調査については、三菱財団の助成を受けて2018~2019年にかけて本人リサーチャーとの共同研究に取り組んできたが、本科研事業としては、それらの成果物を検証するために本人リサーチャーと一緒に学会発表をしたり、研修の講師として福祉事業所に赴くなどの試みを行った。 リサーチ②ロードマップ作成ワークショップは、ESRCの助成を受けて2018~2019年にかけて取り組んだ英国との共同プロジェクトであるが、研究方法論について検討するために、ここに本科研事業から追加の参加者を要請した。本年度内においてはビジュアルを多用した報告書の共同作成に取り組んだ。 また、リサーチ①と②の成果を踏まえて、リサーチ③の計画に着手し、民間の機関に研究費の申請を行った。 また、当初の計画にはなかったが、本研究の一環として国内の障害者福祉事業所においてインクルーシブリサーチの実践にも取り組んでいる。本年度は2名の当事者との共同研究に取り組み、事業所内での研究報告会の開催までを行うことができた。今後、別の当事者との協働研究を計画している。 以上のような実践的な研究を積み上げ、記録を検証することで、本科研事業の目的が達成できると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
リサーチ①将来の暮らし調査の検証を予定どおりに進めることができた。また、リサーチ②ロードマップ作成ワークショップについては、最も重要なキーワードである「ビロング」について検討した論文を発表することができた。また、英国と共同で作成した報告書をもとに次年度に評価や検証を行うことができると考えている。さらに、リサーチ①および②の取り組みをとおして、インクルーシブリサーチの国内のネットワークができつつあり、本人リサーチャーに対する仕事の相談もいくつか来ている。以上のことから、当初予定していたことは概ね本年度中に達成できたと考えている。 さらに、リサーチ①については当初は2020年度に予定していたアカデミックな場での発表を2019年度中に行うことができた。また、リサーチ③の立案についても予定よりも早く着手することができ、研究資金がつけば2020年度中には実施可能であると考えている。加えて、当初の予定にはなかった、障害者福祉事業所における障害当事者とのインクルーシブリサーチも並行して実施することができた。小規模な試みではあるが、実践を記録したデータが収集できているため、最終目標である研究方法論の確立に向けての重要なステップになると考えている。 以上のことから、本年度においては当初の計画以上に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
リサーチ①の研究成果の評価や発表について、2020年春以降も継続して計画していたが、新型コロナウイルスの影響により実施方法の変更を迫られている。2020年度においては、オンラインでの成果発表およびネットワークづくりに取り組んでいく予定である。 リサーチ③については、研究資金を獲得次第、夏以降に取り組む予定である。また、このリサーチ③はリサーチ②の成果を踏まえたもので、英国の研究者の協力を得て実施することから、リサーチ③を進めることでリサーチ②の成果の検討も併せて進めることができると考えている。 なお、2020年度の計画として海外(英国を予定)の情報収集と学術交流を予定しているが、直接海外に行って実施することが難しい場合は、オンラインでの情報収集や交流に取り組みたいと考えている。また、本事業は実践研究の検証であるが、「実践」という点では、新型コロナウイルスが終息しない現状において当初の予定にはなかった対応が今後必要になったり、あるいは新しいニーズが生まれてくる可能性がある。「方法論としてのインクルーシブアプローチ」という最終目標に至るために、現状をむしろチャンスと捉えて新たなインクルーシブリサーチの機会があれば取り組んでいきたい。
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Causes of Carryover |
リサーチ①に関連して、成果物を発表・検討するための研究会と勉強会を東京において企画していたが、新型コロナウイルスの感染拡大により延期とした。次年度に実施予定である。
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