2019 Fiscal Year Research-status Report
高齢者虐待による死亡事例等における検証の実施状況と活用に関する調査研究
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19K02168
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
山田 祐子 日本大学, 文理学部, 教授 (90248807)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 高齢者虐待 / 虐待 / 死亡 / 検証 / 介護殺人 / ソーシャルワーク / 権利擁護 / 地域包括支援センター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、都道府県、市区町村の高齢者虐待による死亡事例等における検証の実施状況と、その活用を研究のテーマとし、そこから「虐待防止を目的とした」死亡事例等の検証の実施と検証結果の効果的かつ実践的な活用を目指す。具体的には(1)都道府県、市区町村および関係機関等において調査研究を行い、検証の実施状況、検証事例と活用状況等について、数量把握も含めた実態把握を行う。(2)(1)の分析を行い、そこから導き出される課題の抽出と、ソーシャルワーク(社会福祉援助技術)を中心に支援方法の評価と再規準化を行う。(3)(2)をもとに、①発生予防から再発防止に至る、一連の包括的な高齢者虐待防止施策、②ソーシャルワークの再規準化、③「虐待防止を目的とした」効果的かつ実践的な検証の活用、について、提言を行う。 高齢者虐待の相談・通報件数の減少傾向はみられず、死亡および重篤事例は後を絶たない。2006年「高齢者虐待防止法」の施行後、国による大規模調査が行われ、虐待の概要はある程度明らかにされ、また、多くの痛ましい事件を受け、国による研究事業を経て2018年度には死亡事例等の検証の推進もスタートした。そこで学術的貢献で最も求められているのは、「虐待防止を目的とした」死亡事例等の検証の実施と検証結果の、効果的かつ実践的な活用を目的とする、都道府県、市区町村の高齢者虐待による死亡事例等における検証の実施状況と、その活用についての実態把握と分析であり、本研究テーマとするものである。 研究代表者は、今年度(2019年度)に「高齢者虐待による死亡事例等の評価と検証にかかわる体制整備に関する研究」(基盤研究(C)課題番号16K04193)において全国調査を実施の際、本研究テーマに関係する項目についても調査と分析を行い、重要な知見を得て、今後、実施を計画している調査計画に反映させるという成果を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究テーマは、「高齢者虐待による死亡事例等における検証の実施状況と活用に関する調査研究」である。 今年度の計画は、(1)文献調査と資料収集、(2)予備調査である。 (1)については、国内、国外の本テーマに関する学術論文をはじめとする文献と資料を収集することができた。 (2)については、研究代表者は、今年度(2019年度)に科学研究費助成事業(基盤研究(C)課題番号16K04193)「高齢者虐待による死亡事例等の評価と検証にかかわる体制整備に関する研究」において、全国調査を実施した。調査の対象は、1)全国の都道府県、政令指定都市の本庁、市区町村の高齢者虐待防止主管課(悉皆調査)、2)全国の地域包括支援センター2000箇所(都道府県人口割で無作為抽出)であり、質問紙による郵送調査を行った。その際、本研究テーマに関係する項目についても、調査と分析を行い、重要な知見を得ることができた。具体的には、高齢者虐待による死亡事例等についての、最新の検証にかかわる体制整備状況と実態、および事例について把握した。その調査データから得られた最新の情報と導かれた新たな知見から、本研究テーマに関する研究課題、調査仮説、調査項目等について、微修正、再設定等について検討する作業を行うことが可能となった。本研究は、来年度以降に、調査の実施を計画しているが、今年度は、計画した以上の規模で予備調査を実施することができたので、リサーチデザインの準備と、さらに研究の質を高めるという成果を得ることとなった。なお、次回の調査に際しては、質問紙等をチェックするため、予備調査は実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の申請時の計画は、全国の都道府県、市区町村の高齢者虐待防止主管課への質問紙による郵送調査とその分析である。 しかし、新型コロナウイルスの感染拡大防止について、地方公共団体は、多忙を極め、臨床現場は疲弊しきっていることから、計画を変更する予定である。具体的には、調査実施時期の延期と調査方法について再検討を行う。 調査実施時期については、2020年4月に入り、日本国政府、東京都知事より、緊急事態宣言が発令されたため、新型コロナウイルスの感染拡大の終息状況に配慮しながら時期を定める。 調査方法については、ウィルスの感染拡大下において、社会が急速に電子化、オンライン化していることから、質問紙による郵送調査の手法について、調査対象機関のご担当者の方にご負担をなるべく回避する手法を検討する。研究代表者が2019年に実施した調査(科学研究費助成事業・基盤研究(C)・課題番号16K04193)においては、質問紙による郵送調査の手法を採用した。その際、調査票の配布、回収については、かねてから調査対象者から要望もあったので、今回は、調査票をURLからダウンロードできるようにし、回答者から希望があった場合は、調査票の返信について、Eメールでも可能とするという、一部電子化を導入した。今後は、さらに回答者に負担をおかけしないようにするため、郵送調査とともに、電子化、オンライン化等の方法も探っていき、最適な方法で調査が実施できるように努力する。
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Causes of Carryover |
2019年度に実施予定であった予備調査は、同年度に、研究代表者が実施した全国調査(科学研究費助成事業(基盤研究(C)、課題番号16K04193)で、実施が可能となったため、予備調査に充てていた調査対象者・対象機関への謝礼金と、データ入力の人件費を使用する必要がなくなった。そのため、次年度以降の全国調査の実施の充実に充てることとした。 具体的には、回答者の負担を可能な限り回避し、調査の安全性と、質の高いデータ収集を行うため、調査手法の検討に充てる予定である。電子化、オンライン化の導入を想定に入れ、ネットワーク環境の整備等、ネットワークシステムの設備および整備に充てる予定である。かつ、調査結果、研究結果について、調査協力者や、関係専門職および社会に還元するため、ネットワークシステムの設備および整備も検討している。
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Research Products
(2 results)