2020 Fiscal Year Research-status Report
高齢者虐待による死亡事例等における検証の実施状況と活用に関する調査研究
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19K02168
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
山田 祐子 日本大学, 文理学部, 教授 (90248807)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 高齢者虐待 / 虐待 / 死亡 / 検証 / 介護殺人 / ソーシャルワーク / 権利擁護 / 地域包括支援センター |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、研究テーマである高齢者虐待による死亡事例等における検証の実施状況と活用について、新型コロナウイルスの感染拡大という状況に配慮し、大幅に研究計画を変更し、感染拡大が、本研究テーマに、どのような影響が出ているかについて情報収集を行い、研究計画および研究内容を調整、検討することとした。具体的には、(1)日本社会福祉士会が厚生労働省から委託を受けたプロジェクト「令和2年度厚生労働省委託事業 高齢者虐待の実態把握等のための調査研究」事業において申請者は委員の委嘱を受け、調査研究を行った。このプロジェクトでは、取組の底上げや横展開を目的に全国の都道府県・市区町村へのヒアリング調査を行い、各地域で行われている高齢者虐待防止の取組や工夫について調査を行ったもので、人口10万人未満の市町村を中心に20箇所のヒアリングを行った。本調査より、本研究テーマである検証の実施状況等について、最新の貴重な情報を得ることができた。また(2)2020年度において、申請者が委員を務める高齢者虐待防止連絡会等の首都圏の都道府県・市区町村についての情報収集や申請者も企画に参画した2021年3月7日実施の日本高齢者虐待防止学会理事会企画セミナーにおいて最新の情報を収集した。それに加え(3)申請者が実施した2019年度「高齢者虐待による死亡事例等の評価と検証にかかわる体制整備に関する研究」(基盤研究(C)課題番号16K04193)において全国調査を実施したが、2020度においても更なるデータ分析を行った。しかしながら、コロナ下の影響もあり自治体は疲弊し、本研究テーマに関する施策推進については低調であり、引き続きコロナ対策に追われる2021年度においても大きな進展等はみられない可能性も推察され、調査実施時期の再検討が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時において、2020年度の研究計画は、全国の都道府県、市区町村の高齢者虐待防止主管課への質問紙による郵送調査とその分析であった。しかしながら2020年4月に入り、日本国政府により緊急事態宣言が発令されたため、新型コロナウイルスの感染拡大防止に追われ、地方公共団体は多忙を極め、臨床現場は疲弊しきっていることから、調査実施時期の延期と調査方法について再検討を行うこととした。感染拡大の収束状況に配慮しながら調査実施時期を定めることとし、2020年度は全国調査の実施は延期することとした。 2021年度においては、2021年4月25日から5月11日まで、第3回目の緊急事態宣言が発令されたため、今年度に実施を検討していた全国調査および申請時に予定していた2021年度における訪問面接調査は、引き続き収束状況をみて再検討とするとともに、新たにWithコロナ下およびコロナ後の高齢者を取り巻く環境の変化や社会の変化についても視野にいれ、研究内容を検討していくこととする。 なお2020年度において検討することにしていた調査方法については、感染拡大下において、社会が急速に電子化、オンライン化しており、質問紙による郵送調査の手法について、調査対象機関のご担当者の方にご負担をなるべく回避する手法を検討することとし、電子化の導入を構想している。また、訪問面接調査の方法も、オンラインZoom等の同時双方向型の方法が、行政機関に浸透してきていることから、検討をする予定である。 いずれにせよ、新型コロナウイルスの収束状況と社会等の変化に配慮しながら、研究計画を柔軟に調整、変更を行い研究の遂行をしていく予定である。 研究成果を発表しようと計画していた日本高齢者虐待防止学会の2020年度の学術集会は中止されたため、前年度の研究成果の発信も2021年度以降となる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
申請時における研究計画は、2020年度においては、全国調査の実施とその分析、2021年度は、前年度の全国調査を踏まえての訪問面接調査の実施であった。しかしながら、周知のように新型コロナウイルスの感染拡大により2021年度は第3回目の緊急事態宣言が発令されるに至り、いっこうに収束の状況の予測がつかず、高齢者福祉関係機関は対応に追われ疲弊しきっている様相であり、新たな施策の推進が厳しいことが、2020年度の研究概要からも推察される。また、長期化するWithコロナ時代に伴う高齢者の取り巻く環境の変化や高齢者福祉関係機関も含む社会の変化により、研究内容の再検討も必要と思われる。具体的な変化としては、申請者が委員長であるMS&ADインターリスク総研株式会社が実施した「令和2年度厚生労働省老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業分)介護施設における効果的な虐待防止研修に関する調査研究事業」の成果として、誰でもが視聴可能な動画教材も含めた、介護職員を対象に想定したオンラインの虐待防止研修プログラムの開発があげられる。Withコロナ下において、研修事業の中止も相次いだが、研修のICT活用も急速に促進された。2021年度からは誰もがこの研修プログラムにアクセスし無料動画を視聴でき、知識とスキルのボトムアップが図られる。このように行政も急速にデジタル化を推進していくと思われる。政府は、2021年9月にデジタル庁を設置予定であり、デジタル・ガバメント実行計画(令和2年12月25日閣議決定)に基づき「地方公共団体における情報システム等の共同利用、手続の簡素化、迅速化、行政の効率化等を推進するため、地方公共団体の業務プロセス・情報システムの標準化に取り組む」としている(首相官邸HP)。従って、この点も視野に入れ、調査方法を検討し、調査内容を充実させ研究を推進していく。
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Causes of Carryover |
2020年度に実施予定であった全国の都道府県、市区町村の高齢者虐待防止主管課への質問紙による郵送調査とそのテータ分析費用については、新型コロナウイルスの感染拡大により実施の再検討を行うこととし、2021年度以降の調査実施費用(全国調査および訪問面接調査)とそのデータ分析費用に充てることとする。
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Research Products
(4 results)