2022 Fiscal Year Research-status Report
高齢者虐待による死亡事例等における検証の実施状況と活用に関する調査研究
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19K02168
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
山田 祐子 日本大学, 文理学部, 教授 (90248807)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 高齢者虐待 / 虐待 / 死亡 / 検証 / 介護殺人 / ソーシャルワーク / 権利擁護 / 地域包括支援センター |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、厚生労働省が日本社会福祉士会に「2022年度厚生労働省委託事業 高齢者虐待対応マニュアル改訂に係る調査研究事業」を委託し、厚生労働省老健局が市町村・都道府県担当者向けの高齢者虐待対応と養護者支援の手引書である『市町村・都道府県における高齢者虐待への対応と養護者支援について』の改訂作業を行った。申請者も委員として参加し、現在の時点で内容の公表はされていないので言及はできないが、この研究事業と成果については、本研究テーマである死亡事例の検証について、今後、市町村や都道府県の高齢者虐待対応の基準や質の変化について重要な影響がある。 また2022年度は高齢者虐待防止法をめぐり大きな動きを行った。2006年4月に施行された高齢者虐待防止法は施行後3年後を目途とした見直しが附則第3項に記されている。日本高齢者虐待防止学会は、2010年度に高齢者虐待防止法の改正案を国会議員および厚生労働省に提出し改正試案が作成される段階に至ったが、国会の動きの紆余曲折や障害者虐待防止法の成立等があり、未だ見直しが行われていない。そのような中で日本高齢者虐待防止学会は、2021年に再び高齢者虐待防止法改正の動きをつくり、2022年度に改正案を作成し国会議員と厚生労働省に提出、日本社会福祉士会、日本司法書士会連合会、日本弁護士連合会も其々改正案を年度内に作成した。法改正の動きは今後さらに活発に論議されていくと推察される。申請者が事務局長である日本高齢者虐待防止学会は、高齢者虐待防止法第26条の「調査研究」の条文等について、現状では調査主体を国のみとしている部分に「国及び地方公共団体」と地方公共団体も追加することを求めるとともに、「高齢者施設職員」の防止も明確に含めた調査研究と「検証」を行う改正案を策定した。なお本法改正案が国会で通過すれば、本研究の枠組みも大きく変化することが予測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度から本研究に甚大な影響を及ぼした新型コロナウィルスの感染拡大は、2022年度末、2023年3月13日以降マスクの着用は個人の判断となり、2023年5月8日より分類が5類となりインフルエンザと同格の扱いになる予定である。しかしながら、新型コロナ患者は法律に基づく外出自粛要請がなくなることで、高齢者施設は職員等の感染リスクが却って高まると予想され警戒感をもっている。研究テーマである高齢者虐待による死亡事例等における検証の実施状況と活用について、2020年度以来引き続き、新型コロナウイルスの感染拡大という状況に配慮し、感染拡大が本研究テーマに、どのような影響が出ているかについて情報収集を継続し検討する必要があると推察され、研究期間延長を行うこととした。 また2022年度は高齢者虐待防止法の改正の動きが本格的に開始された。また前年度の2021年度においては申請者も委員として参加した「2021年度年度度老人保健健康増進等事業:高齢者虐待における死亡・重篤事案等にかかる個別事例検証による虐待の再発防止策への反映についての調査研究事業」を行い、検証の手引きの改訂を行ったことも併せて、実施するという大きな動きがあった。成果物『高齢者虐待に伴う死亡事例等検証の手引き令和4年3月』を発行し、2022年度よりこの手引きを指針として、各自治体で検証が展開されるという大きな動きとなるため、本研究計画の大幅な見直しを図り、自治体への全国調査は保留とした。また、高齢者虐待防止が2023年度もしくは2024年度に法改正となり、検証に関する項目が追加、充実されていく可能性も見越した研究計画の見直しを行う必要性が再度昨年度に引き続き発生した。 以上のことから、研究テーマである高齢者虐待による死亡事例等における検証の実施状況と活用について、研究枠組みの再検討を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度から開始された本研究は、2020年より未曾有の新型コロナウイルス感染拡大により、関係機関はその対応に追われた為、調査実施を計画していたが収束を待ち延期した。また2021年度は厚生労働省が「検証」の手引きを改訂するという大きな動きがあり(申請者も参加)、2022年度は、厚生労働省が市町村と都道府県の高齢者虐待の「対応」の手引きの改訂を実施するという昨年に引き続いて大きな動きがあった。当該研究事業には申請者も参加したが、その公表は現時点ではされていないので、その分析や市町村・都道府県への影響の分析については更に時間を要することとなった。 調査計画については、2022年度においてもコロナの影響で関係機関が多忙であり、Withコロナ生活や不況等の影響で社会の変化による新たな課題も表出してきていること、2021年度の検証の手引きの改訂、2022年度の高齢者虐待対応の手引きの改訂という大きな動きの影響から、調査実施を引き続き保留するとともに、研究計画の大幅な変更を検討している。コロナの影響、検証の手引き改訂、更に市町村・都道府県の対応の手引きの改訂の影響のなかった2019年度実施の調査データ等の再分析を行うことも視野に入れ、再度、期間延長を行うこととした。具体的には、申請者が以前に実施した全国調査について、2021年度の厚生労働省老健事業で作成した検証の手引書の内容から、新たに分析を行うことを検討している。それに加え、2022年度の厚生労働省が日本社会福祉士会に委託し作成した『市町村・都道府県における高齢者虐待への対応と養護者支援について』の公表後(「2023年4月中に公表予定」と通知で公表)、その内容の分析を行い、それらを参考にしながら、調査データの分析と成果物およびその発信にかかわる費用の執行を計画している。
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Causes of Carryover |
2022年度に実施予定であった全国の都道府県、市区町村の高齢者虐待防止主管課への質問紙による郵送調査とそのテータ分析費用および、訪問面接調査の費用については、新型コロナウイルスの感染拡大により実施の再検討を行うこととし、2023年度以降の調査実施費用(全国調査および訪問面接調査)とそのデータ分析費用もしくは、調査実施を行わない場合、申請者が2019年度に実施した全国調査等の調査データの再分析費用に充てることとする。
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