2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of social participation support in "Basic security benefits for job-seekers"
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19K02169
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
布川 日佐史 法政大学, 現代福祉学部, 教授 (70208924)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ハルツⅣ / 雇用創出 / 社会的労働市場 / 生活保護 / 生活困窮者自立支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
ドイツにおいては、長期失業者対策が大きな政治課題となってきた。2018年12月に成立した「一般労働市場および社会的労働市場において長期失業者の参加チャンスを創出するための法律(参加チャンス法)」 による「求職者基礎保障(社会法典Ⅱ)」第10次改正によって、二つの新たな施策が成立し、2019年1月から施行されている。 一つは、失業期間が2年を越える受給者に一般労働市場の社会保険加入義務のある雇用を促進する賃金助成(社会法典Ⅱ第16e条)である。もう一つは、受給期間が6年を越える受給者に、「社会的労働市場」において社会保険加入義務があり、労働協約賃金が支払われる雇用を提供する賃金助成(社会法典Ⅱ第16i条)である。連邦政府は、貧困と社会的排除の中に置かれた長期失業者・長期受給者の社会参加促進として、2022年までに40億ユーロをあてるとしている。 今年度は、新施策の実施状況や成果と課題の調査・分析に先立ち、まずは新施策の制度上の特徴とその意義について整理し、検討した。それを通じて、最低生活保障制度である求職者基礎保障が、一般企業に就職するのが困難な受給者に、ノーマルな雇用を提供し、ミニマムではなく、ノーマルな生活水準を保障していることを確認した。 連邦労働財源をもとにした労働エージェンシーによる労働市場政策(第16i条)は、長期受給者に対し、ノーマルな労働を通じた社会参加そのものを目標とする施策を展開するものであり、低賃金就労を強制し、働くことで最低生活を保障するという、かつてコッホ・ヘッセン州首相が提唱したモデルとは違う。また、働かなくてもミニマムを保障するというベーシックインカムとも違う。働くことで最低生活以上の、ノーマルな社会参加を保障するというものである。労働市場施策において、一般労働市場への参入ではなく、社会参加そのものを目標にした支援が始っているのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)まず、就労支援・社会参加支援の施策について、2005年制度導入時からの社会参加支援策に、2011年制度改革で加えられた支援策、さらに2014年以降の新たな取り組み、2019年から実施される施策を合わせた全体像を明らかにした。 (2)次に、2つの新施策のうち、受給期間が6年を越える受給者に「社会的労働市場」において社会保険加入義務があり、労働協約賃金が支払われる雇用を提供する賃金助成(社会法典Ⅱ第16i条)について、その前史にさかのぼり、制度創設時の論点を整理することができた。 (3)施行1年目の現状把握のために、現地調査を予定し、ヒアリング先と日程を確定したが(3月16日~20日)、新型コロナ感染の急拡大を受け、渡航制限がかかったことにより、直前で調査を中止せざるを得なくなった。渡航自体はコロナ危機が過ぎ、再度ヒアリングが可能になるのを待つしかないが、メールでの意見交換を今後続けていくつもりである。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)新型コロナ感染対策により、ドイツの労働市場は大きく変化しつつある。2020年4月の失業者は、3月から30.8万人増、前年同月比で41.5万人増の264.4万人となった(失業率は3月から0.7%増の5・8%)。また企業が操業短縮の申請をした人が過去最高の1010万人にのぼっている。新規求人も大きく減っている。こうした状況の中で、そもそも一般企業への就職が困難な長期失業者の就労促進は、大きな困難に直面することになろう。それに対し、「社会的労働市場」の拡大を目指す側が、支援をどのように位置づけ直し、具体的支援策を組み直しているのか、検討を進めたい。 (2)現地調査がすぐには困難な下で、この間インターネットを通じて意見交換が可能となった研究機関の研究者、福祉団体の政策担当者とのつながりを生かして、資料収集と分析を進める。具体的には、次の人たちである。1)Dr. Philipp Ramos Lobato、Dr. Kupka、Instituet fuer Arbeitsmarkt- und Berufsforschung der Bundesagentur fuer Arbeit (IAB),2)Tina Hofmann,Referentin fuer Arbeitsmarkt- und Sozialpolitik beim Paritaetischen Gesamtverband,3)Dr.Judith Aust,bag arbeit e.V.
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Causes of Carryover |
2020年3月にドイツ調査を予定し、メールでヒアリング先との調整を終え、航空券の予約購入、宿泊先ホテルの予約を終えていたが、出発直前に新型コロナウイルス感染対策として渡航が制限されたため、調査の延期を余儀なくされた。そのため、旅費を次年度に繰り越すこととなった。 2020年11月に2019年度分の旅費にてベルリンを中心にドイツ調査を行い、2021年2月に2020年度分の旅費にて、ニュルンベルクを中心にドイツ調査を行うこととする。
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Research Products
(3 results)