2020 Fiscal Year Research-status Report
デンマークのアクティベーション改革と支援組織の変容に関する研究
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19K02173
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
嶋内 健 立命館大学, 産業社会学部, 授業担当講師 (70748590)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アクティベーション / デンマーク / 就労支援 / 基礎自治体 / 職業学校 / 若者 / 公的扶助 / 労働市場政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、支援を担う末端組織の取り組みを中心に研究を進めた。具体的には、職業学校(後期中等教育レベル)が提供する若者支援プロジェクトである。このプロジェクトは、公的扶助受給者の若者を職業学校が支援し、正規の職業教育へつなぐことを目指している。困難を抱える若者が一般労働市場で就労できるよう導くことが、このプロジェクトに期待されている。地域の就労支援の拠点となるジョブセンター(公的雇用事務所)は、地域の職業学校と契約し、職業学校は公的扶助を受給する若者に支援プログラムを提供している。昨年度はジョブセンターに焦点を当てたが、今年度は若者に寄り添いながら支援を提供するストリートレベルの組織から、ジョブセンターの取り組みがどう見えるのかに注目した。さらに、若者に最も近い組織から見た若者の実態(学力、学校生活等)を探る試みを行った。 2018年に実施した聞き取り調査、学校から提供を受けた資料、自治体の公開資料等をおもに分析した。調査からは、職員の専門性や経歴、カリキュラム、若者との信頼関係の構築方法、インターンシップの調整方法等を知ることができた。また、プロジェクトの職員はジョブセンターによる予算配分や、同センターが学校へリファーする前提として実施するアセスメントの杜撰さに不満をもっていることも分かった。 さらに、調査を通して、若者が困難に直面する背景には、近年の教育制度改革の影響が少なからず存在している事を実感した。とくに、2000年代以降の国民学校(初等・前期中等教育レベル)の統廃合や、2011年以降の教育制度改革が、教師に多忙と負担をもたらし、最も支援を必要とする生徒への対応が置き去りにされている社会背景が新たに見えてきた。次年度以降は、当初の研究計画の遂行だけでなく、こうした教育政策をふくめたデンマーク社会の大きな構造変化の動きも見てゆくことにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
オンライン授業化により、教育業務が膨大になり、研究を実施する時間を十分に確保することができなかった。文献や資料の研究はある程度可能だが、昨年に引き続きコロナパンデミックの影響により、現地調査を断念せざるをえなかった。本研究課題は、現地調査に依拠する部分が大きく、その点では進捗は遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
デンマークの地方行政のしくみ、労働市場改革、教育制度改革が、末端の支援組織およびサービスのクライアントに与えた変化について理解を深める。 コロナパンデミックの影響次第で、来年度も調査が実施できるかどうか不明確である。事態が収束し、調査の実行が可能であると仮定すれば、今年度および昨年度に実施できなかったフィールドワークの繰り越し実施を含めて、年度末に調査を実施したい。調査対象候補は、①KL(全国のコムーネが結成する団体)、②地方議会の雇用委員会に所属する議員(就労支援の人材確保や支援プログラムの予算決定権をもつ)、③労働組合、④生活保護を受給する若者に就労支援を提供する教育機関、⑤NGOである。
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Causes of Carryover |
コロナパンデミックの影響により、2020年9月および2021年3月に実施する予定の海外調査が実施できなかった。調査に関わる旅費およびテープ起こし等の費用を使えなかったため予算を消化しきれなかった。日本とヨーロッパの双方のウィルスの感染状況が収束し、調査実施にとって安全な環境が整ったときは、断念した海外調査を次年度に繰り越して実施する計画である。
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Research Products
(2 results)