2019 Fiscal Year Research-status Report
Socio-historical Research on Cooperation among Cooperatives and Partnership in Civil Society
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19K02182
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
伊丹 謙太郎 千葉大学, 人文社会科学系教育研究機構, 特任助教 (30513098)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 協同組合間協同 / 協同組合 / パートナーシップ / 非営利組織 / 賀川豊彦 / SDGs / 社会的連帯経済 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、協同組合間協同の歴史をひとつの軸として非営利組織間および非営利セクターと行政や企業などのセクターとのパートナーシップの課題について検討するものである。研究初年度ということもあり、主として関連文献等の収集・整理のほか、並行して参加している日本協同組合連携機構の「日本の協同組合間の連携に関する研究会」での共同研究の実施に重きを置く形で研究を推進する形となった。日本協同組合学会秋季大会では、「コミュニティの中間支援組織としての協同組合の可能性 」というタイトルにて個別報告(テーマセッション)を行い、協同組合組織間の連携の意義とともに協同組合型の中間支援組織運営の可能性について展望する議論を行った。 また、7月には、前年度より準備を進めていた「つながる経済フォーラムちば」のシンポジウムを開催した。千葉県域にある協同組合組織、地域貢献志向のある地元企業および行政から千葉市の参加を得て、広く市民社会におけるパートナーシップの意義について共有できる重要な機会となった。 11月には、「SDGsと賀川スピリッツーだれ一人とり残されることのない社会」というテーマの下、賀川豊彦シンポジウムを企画・開催、女性の社会参加支援(村木厚子)や農福連携(濱田健司)、労働組合による社会活動(逢見直人)についてそれぞれパートナーシップの視点から検討をいただいた。歴史研究の一方で、現在の非営利組織パートナーシップに係る国内の動向に直接コミットしながら研究を推進している。 海外における連携事情の調査については、社会的連帯経済という枠組みで中心地となる南欧および南アメリカ諸国の取組の文献調査を進める一方で、オンライン会議等への参加を通して現地の実務者たちとの交流を進めている。なお、海外渡航自粛の情勢で、2年度目以降も含め、計画において予定されていた調査計画の方向性を練り直す必要が生じてきている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の進捗においては、海外調査等の面でやや遅れが生じるとともに、今後の計画の見直しが必要となってきている。一方で、国内の連携事例の収集等にあたっては、日本協同組合連携機構の協力を得て、おおむね順調に進展している。 日本における協同組合間協同の歴史を考察する場合に、事業ベースでの連携と活動ベースでの連携、および同分野間と異分野間の連携によって大きく区分することができる。10年来継続しているライフワークである賀川豊彦研究における成果も本研究において有益な資料となっている。たとえば、賀川が設立者あるいは設立に関与した関西圏および関東圏にある消費組合は共益社グループとして事業を推進していたが、それぞれに独立した組織であるため、消費組合協会を通して商品の卸事業を共通化していた。事業ベースでの連携は、人材の交流なども促進させ、結果事業だけではなく、大きく社会活動の連携と促進にも結びついている。こうした事例は、岡本利吉による共働社を中心に関東消費組合連盟が設立されるなどの運動にも見られる。共働社の場合は、共益社以上に労働運動との関係が深く、労働組合組織の確立と支援という機能も強く持っていた。これらについては、戦後の勤労者福祉運動が事業体として全労済や労働金庫を設立する流れにおいても類似した特徴が見られるものである。 本研究を進める中では、協同組合をめぐる法制度の諸課題について改めて掘り下げた研究が必要であることが確認された。この点では、当初計画では運動面に軸足があったことで、あまり自覚的ではなかったが、協同組合の特徴である事業と運動の二重性を踏まえた運動史研究においては、協同組合法理や法制度の変遷が極めて重要な位置をもつものであり、戦前の産業組合諸法をはじめとして法的枠組に焦点を充てた資料収集と分析を当初計画に追加する形で進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗でも言及したように、今後の研究推進方策においては、1)海外調査における方法や時期の見直し、2)協同組合諸法および非営利組織をめぐる法的整備の変遷についての検討、という2点で研究計画の修正を行う必要が出てきている。 1)については、一定期間海外渡航自粛が前提となる以上、実際の渡航は2021年度以降にずれ込んでしまう可能性が高い一方で、この間の情勢変化により、海外研究者もウェブセミナー等による研究交流の機会を増やしてきている。こうしたリソースをなるべく活用しながら、海外の取組事例について情報収集するとともに、本研究における成果を適宜海外に向けて発信し、意見を聴取していくことを想定している。 2)については、初年度購入した史資料のほか、新たに1960年代までの立法過程についての資料・記録を収集することで、より深い分析を進める予定である。 2020年度より勤務先が変わり、都心に研究室がある環境となった。このため、近隣にある協同組合関係の研究機関・資料室等を積極的に利用できるとともに、計画にて予定されているインタビューの実施にも利便性が高まっている。海外調査については、情報機器等を積極的に活用することで当初計画から困難になった部分を補完し、期間中に適切な成果を生み出せるよう工夫していく予定である。
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Causes of Carryover |
2019年度は、計画していた海外でのインタビューが困難になったこととともに、延長した研究課題の最終年度と重なることで、最終年度の課題を終了させることを優先させた結果、大きな額を次年度使用へと移す結果となった。また、4月より別の研究機関に移ることになり、当該年度研究費の執行時期を早めに切り上げることになった。研究年度は全体で4年間あるため、この期間において研究における遅れ等を取り戻すとともに、研究費執行についても適切に進めていく予定である。
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Research Products
(16 results)