2021 Fiscal Year Research-status Report
On the research on the relationship of volunteer transport workers consciousnesses, mental state and social capital
Project/Area Number |
19K02187
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Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
小熊 仁 高崎経済大学, 地域政策学部, 准教授 (00634312)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ボランティア交通 / ソーシャルキャピタル / 買い物弱者 / 支払い労働意思量 / 負の二項回帰モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は交通空白地有償運送が高齢者の移動機会の確保に向けて果たす役割を明らかにするため、高崎市倉渕地区の65歳以上高齢者1522名を対象にアンケートを行った。とくに当該地区の交通空白地有償運送は買い物弱者問題の解決を目的に設置された経緯から、交通空白地有償運送および地区内におけるソーシャルキャピタルの蓄積が買い物弱者問題の解決に寄与するかに着目し調査を試みた。 調査の結果、有効回答サンプル653件のうち、44%の被験者が買い物に不便や苦労をかかえており、その背景には①自家用車等の手段を用いて遠方に移動しなければならないこと、②移動手段の確保や身体上の問題により買い物に支障をきたしていることなどの要因が存在することが判明した。また、買い物の不便や苦労を左右する主な要素は自家用所所有の有無と宅配の利用可能性の2つであり、交通空白地有償運送やバス・タクシー等の公共交通はこれら問題の解消にさほど貢献していないことが明らかになった。 その一方で、知人の送迎や住民間の「おすそわけ」の存在が買い物に対する不便や苦労の解決に寄与していると回答した被験者は24%に上り、地区内のソーシャルキャピタルの存在が買い物に代表される高齢者の移動機会の確保や生活の維持に貢献している結果が示された。また、交通空白地有償運送に対しても被験者の18%が今後の利用意向を示唆しており、小売店(あるいはそれを代替する手段)や宅配の充実化に加え、交通空白地有償運送の継続も地域の買い物環境の改善において重要な支援策となることがわかった。 今後の分析課題はソーシャルキャピタルの存在が買い物困難の解決に向けてどの程度貢献するのかを定量的に分析すること、ソーシャルキャピタル醸成の背景にある環境属性を解明すること、ソーシャルキャピタルの存在と交通空白地有償運送の存続との関係を明らかにすることである。これらは今後の課題としたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Covid-19の影響により調整が難航していたが、今年度は既にサンプルを取得していた高崎市倉渕地区を分析対象とし交通空白地有償運送が地域住民の移動手段の確保に果たす役割について、ソーシャルキャピタルの蓄積が買い物弱者問題の解決に向けて寄与するか否かに着目し研究を試みた。しかし、地域におけるソーシャルキャピタルの存在、あるいは交通空白地有償運送に対する労働意思量や支払い意思が交通空白地有償運送の存続にどの程度貢献するのかに至るまでは明らかにすることができなかった。 Covid-19により、当該地域のみならず交通空白地有償運送の多くにおいてドライバーやボランティアの不在が課題となっていることから、今後は交通空白地有償運送のみならず、それ以外の分野を事例に調査を行うことも視野に入れながら、引き続き研究を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、ボランティア交通におけるボランティア従事者の参加意識とソーシャルキャピタルとの関係について、様々な心理的要素の存在を考慮し分析を行うことが目標である。 Covid-19の影響により今年度になりようやく分析対象地域の調査に漕ぎつけることができたが、今後の感染拡大の状況により外出はもちろん対面調査等が困難になることが予想されるため、将来的な見通しが立っていない状況にある。そのため、今後はボランティア交通のみに分析対象範囲を絞るだけではなく、それ以外の分野を事例に調査を行うことも視野に入れ、郵送アンケートからWebアンケートへの変更、オンラインによるモニタリング実施など様々な選択肢を検討しつつ研究をすすめていきたい。
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Causes of Carryover |
Covid-19の影響により今年度に入りようやく当初の分析対象地域の調査を行うことができたが、依然として感染拡大の状況により外出や対面調査等が左右されてしまい、先の見通しが立たないなかで研究の継続を余儀なくされた。今後はボランティア交通のみに分析対象範囲を絞るだけではなく、それ以外の分野を事例に調査を行うことも視野に入れながら、アンケートの方法にも工夫を凝らしつつ、課題の執行に向けて取り組んでいきたい。
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