2022 Fiscal Year Research-status Report
On the research on the relationship of volunteer transport workers consciousnesses, mental state and social capital
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19K02187
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Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
小熊 仁 高崎経済大学, 地域政策学部, 准教授 (00634312)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ボランティア交通 / ソーシャルキャピタル / 支払い労働意思量 / 支払い意思額 / 負の二項回帰モデル / CVM / 階層線形モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は前年度に行った高崎市倉渕地区の65歳以上高齢者1522名に対するアンケート調査の取りまとめと学会報告、および学術誌への投稿を行った。また、ボランティア交通に対する(潜在的な)ボランティア従事者の参加意識とソーシャル・キャピタルの関係を明らかにするため、文献調査をベースに対象地域の選定とアンケート調査項目の再検証を行った。その結果、次のような成果が得られた。 第1に、ボランティア従事者の参加意識は自発的動機と他律的動機から構成され、ソーシャルキャピタルはこれら相互に影響をもたらすとの仮説を得ることができた。とくに、ソーシャルキャピタルを構成する構造的SCと認知的SCという2つの要素のうち、自発的動機は前者、他律的動機は後者から影響を受け、これらの相互作用により、ボランティアへの参加が促進されることがわかった。 第2に、ソーシャルキャピタルには個人レベルのSCと地域レベルのSCの2つがあり、ボランティアへの参加は前者のみならず、後者からも影響が及ぼされることが判明した。また、両者は地域内および地域間でも差がみられ、これらはボランティア従事者の参加意識に対し影響を与える要因となり得るとの仮説を得ることができた。 第3に、ボランティア従事者を活用した交通サービスの提供は、NPOのほか町内会・自治会レベルでも実施されている。ソーシャルキャピタルは個人レベルおよび地域レベルで蓄積されるが、組織レベルにおいても蓄積されている可能性があり、それは組織間で何らかの相違がみられるはずである。そのため、同じボランティア交通でも複数のタイプの組織を対象に調査を試み、組織ごとの特性や醸成レベルの差異について分析することが必要である。 以上の検証から得た仮説は既にアンケート調査項目として取り込み、現在、次年度の調査に向け準備を整えているところである。早期の調査実施に向けて取り組んでいきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う影響が残り、アンケート調査にあたっての現地フィールドワークの実施や調査サンプルの取得に制約があったため、当初の予定通りに調査を行うことができなかった。その結果、所属学会での報告や論文投稿なども断念せざるを得ず、進捗に大幅な遅れが生じる結果となった。その一方で、昨年度別途実施した買い物弱者問題とソーシャルキャピタルの蓄積の関係に関する研究では、日本流通学会第36回全国大会で研究報告を行い、学会誌への投稿まで漕ぎつけることができた。ただし、当初予定していたソーシャルキャピタルの存在とボランティア交通に対する労働意思量や支払い意思額の関係をめぐる分析は、以上の理由から着手が遅れてしまったため、次年度以降に繰り越さなけれなならなかった。本年度後期から制限が徐々に緩和され、研究遂行の見込みが立ってきたため、来年度は調査の本格的実施に向けて取り組んでいきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、ボランティア交通におけるボランティア従事者の参加意識とソーシャルキャピタルとの関係について、様々な心理的要素の存在を考慮し分析を行うことが目標である。 初年度はボランティア交通にかかる活動の詳細や運用上の特徴について文献調査等を通して考察を行い、サービスの持続可能性や経営面における効率性など基礎的な情報の把握につとめた。 しかし、2年目からは新型コロナウイルス感染拡大に伴い、アンケートの実施に向けたフィールドワークやアンケートそのものを中止せざるを得なくなり、調査研究に大幅な遅れが生じる結果となった。その一方で、本年度後期からは新型コロナウイルス感染拡大による制限が徐々に緩和されてきたことから、来年度は本研究課題の要諦であるボランティア交通に対する労働意思量や支払い意思額とソーシャルキャピタルの関係、労働意思量や支払い意思と自発的参加動機と他律的参加動機との関係、およびが個人レベルのSCと地域レベルのSCがこれらに与える影響など様々な要素を考慮しながらボランティア従事者の参加動機について解明していきたい。既にアンケート調査票は作成済みで、調査対象地域との調整も済んでいることから、早期の調査実施に向けて準備をすすめていく。
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Causes of Carryover |
本年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響が残り、アンケートの実施に向けた現地フィールドワークや関係諸機関との調整を円滑にすすめることができなかった。そのため、当初予定した調査はもちろん、学会報告や論文投稿等も断念せざるを得ず、次年度使用額が生じる結果となった。しかし、本年度後期からも上記の制限が緩和されてきており、アンケート対象地域との調整も徐々にすすめることができているため、早期の調査実施に向けて準備をすすめていきたい。また、調査結果についても速やかに学会報告や論文投稿につなげていけるよう、全力を尽くしてつとめていきたい。
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