2019 Fiscal Year Research-status Report
社会的マイノリティへの偏見軽減要因の探索 無関心という壁を越えるために
Project/Area Number |
19K02191
|
Research Institution | University of Kochi |
Principal Investigator |
玉利 麻紀 (平井麻紀) 高知県立大学, 社会福祉学部, 助教 (80573154)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 社会的マイノリティ / 偏見 / 無関心 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,選択的非注意の解除と注意の般化に着目し,複数のマイノリティとの接触が一般の人に与える影響について明らかにし,その促進要因についても探索することを目的とする研究2のプレ調査を実施した. プレ調査では,社会的マイノリティ当事者として,トランスジェンダー,精神障害者,不登校経験をもつフィギュア作家の3名に協力していただいた.参加者は精神保健福祉業務に従事する成人19名であり,社会的マイノリティ当事者と参加者との直接対話のプログラム後,参加者によるアンケート調査を実施した.ただし,研修という場の設定上,統制群の設定はなかった.対話プログラムでは,各参加者が1人の社会的マイノリティ当事者とのグループ対話を行う「単数対話群」を2セッションと,社会的マイノリティ同士の対話を見ている形での1セッション,計3セッションに参加した.また,プログラム実施後には,社会的マイノリティ当事者と共にプログラムを振り返り,現段階でのプログラム計画や狙いに関する感触や感想について,当事者との共同創造の観点から聞き取り調査を行った. プレ調査では,参加者19名のうち,18名からアンケートを回収した(回収率94.74%).性別は性自認を問う形で質問し,男性6名,女性12名であり,年代は20代5名,30代3名,40代5名,50代2名,60代1名,70代2名であった.一方,社会的マイノリティ当事者は男性2名,女性1名,年代は30代,40代,50代各1名ずつであった.アンケートは5件法(強くなった:5、弱くなった:1)で回答を求め,「関心」においては平均値4.17(SD 0.24),「他のカテゴリーへの関心」は平均値3.82(SD 0.53)であった.他の項目についても概ね高い得点が得られたため,参加者の満足度は高かったと考えられるものの,統制群や長期的変化指標の不在により,効果に関する言及には課題が残る.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初,初年度には研究1として,学生への調査を計画していた.しかし,2019年12月に,精神保健福祉業務に従事する成人を対象とした研修を行う機会を得たため,先に研究2のプレ調査を実施する方向で研究計画を変更した. 研究2の本調査では,選択的非注意の解除と注意の般化に着目し,複数のマイノリティとの接触が一般の人に与える影響について明らかにし,その促進要因についても探索することを目的とする. そして,社会的マイノリティとの直接対話が偏見や関心に及ぼす影響について,学生を被験者として実施する予定である. 2019年度は研究2のプレ調査を実施し,その結果を分析するとともに,今後の本調査の実施に向けた課題抽出を行った.ただし,専門職者研修という場においてプレ調査を実施したため,複数の制限があり,本調査で予定している群の設定などができなかった.そのため,プレ調査の結果は実験協力者としての社会的マイノリティ当事者による,プログラム内容の検討や,目標達成への可能性を高める仕組み作りの検討を主軸として位置付け,当事者からの聞き取りについて,質的に分析していきたい.なお,聞き取り内容の質的な分析は今後,実施の予定である. 新型コロナウィルスの感染拡大を受け,今後,計画していた対面型の実験の実施が難しくなることが考えられる.そのため,まずは研究1「学生への調査」を方法等を検討した上で実施し,その後,その時々の社会情勢で実施可能な形へ研究計画を柔軟に変更しながら,本研究を実行していきたいと考えている.
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度は,研究2「マイノリティとの接触により,『見える』ようになるのか?―接触方法の実験的検討」の本調査を実施の予定であった.しかし,新型コロナウィルスの影響により,直接接触を基盤とする研究の実施自体が難しい状況にある.そのため,現状でも実施可能と思われる方策として,学生を対象としたオンライン調査等への変更を検討している.まずは研究1「マイノリティは『見えて』いるのか? ―選択的非注意と偏見との関連の検討」を実施し,結果の発表をしていく予定である. ただし,実験2の本調査以降の研究計画については大幅な変更の可能性がある.対面実験の実施については,新型コロナウィルスの影響の見通しが立たず,方法等を検討する必要があるためである.オンラインツールを利用した方法に変更可能であるか検討するとともに,研究計画の大幅な変更が必要となった場合には,テーマに沿った形で柔軟に対応し,着実に進めていきたい.
|
Causes of Carryover |
今年度は,統計処理用ソフトウェア SPSS Statistics Base(DVD版)等,物品の購入は大学における共有ソフトを使用することで賄うことができたため,物品費(350千円)の使用は翌年度に変更することとした.さらに,研究計画の変更と進捗の遅れにより,実験用映像作成依頼(150千円)を計上した人件費・謝金も次年度へ変更した. これらに関しては,次年度は質問紙調査の実施や分析,及び,実験を主な研究計画とし,最終年度の実験に向けて,実験準備を進める予定である.したがって,統計処理用ソフト類や映像関連の物品の使用頻度も大幅に増えることが予想されるため,これらの物品を購入することを予定している. 一方,研究計画の変更に伴い,翌年度に予定していた研究協力者への旅費の支払いが必要となった.したがって,予定していた2学会への出席を控え,研究協力者への支払いへと当てた経緯がある.
|