2023 Fiscal Year Research-status Report
Participatory action research on spirituality and organisational issues in self-help groups
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19K02197
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
岡 知史 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (50194329)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 自助グループ / スピリチュアリティ / 自死遺族 / 断酒会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、自助グループにおけるスピリチュアリティと組織論との関係を参加的アクションリサーチによって明らかにすることであったが、当初から研究対象である自助グループには、世間でいう「スピリチュアル」的なものを連想させるスピリチュアリティへの強い拒否感があった。これに対して、日本でいう「スピリチュアル」なものとは全く異なるスピリチュアリティの意味について説明を、私は機会を見ては行ったが、その拒否感を払拭するには全く力が及ばなかった。その代わりに以下の方向性を得た。 まず自死遺族の自助グループについては、「死別体験者」と「遺族」を区別した。「死別体験者」が、遺された家族の体験(特に心理的体験)を核とした概念であり、グリーフケア等の遺族支援の対象とされているものであるのに対して、「遺族」とは故人との関係性を核とした概念である。自助グループを「死別体験者」の集まりではなく、「遺族」の集まりであるととらえることによって、その自助グループは、スピリチュアリティと結びつく。なぜなら故人との「生きた関係」の基礎になるのが、スピリチュアリティだからである。 断酒会においては、スピリチュアリティはアルコホーリクス・アノニマスの特徴と理解されているので、その言葉は使わず、断酒会が伝統的に使っている「道」(「断酒道」)に着目し、「道」を歩む「修行」としてのスピリチュアリティを強調することにした。そして2022年度に行ったオーストラリアでの研究活動を通じて、キリスト教的伝統に基づかないオーストラリア・アボリジニのスピリチュアリティに基づく依存症対策について知ることになったが、それとの比較によって断酒会のスピリチュアリティを追究したいと考えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
前年度の報告にも記載したが、自助グループは、コロナ禍のため深刻な打撃を受けていて、「参加的アクションリサーチ」という自助グループ側の積極的な参加を前提とする本研究は進めることが難しかった。 また2023年度は、私が定年退職を迎える年度であり、学内業務は少なくなると予想していたが、2024年度も特別契約教授として継続して勤務することになり、かなり状況が変わってしまった。したがって、補助事業期間延長承認申請書を出し、2024年度まで研究を実施することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
自死遺族については、研究成果を一冊の本にしてまとめる予定である。断酒会については、オーストラリア・アボリジニの依存症についての研究者3名が、今年度、私の勤務先を訪問する予定であり、断酒会会員との交流により、アルコール依存症の治療にかかわるスピリチュアリティの考察を深めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
2023年度は、私の学内業務が少なくなる予定であり、研究計画にそって研究を進めていく準備をしていたが、2023年2月に2023年度は学科長に就任することとなり、学内業務が想定以上に増えてしまったことが理由の一つである。また私が研究対象とするアルコール依存症者のグループが、2023年度に数十年に一度という全国的な大きなイベントを実施することになり、調査の協力をお願いするタイミングを逸したということももう一つの理由である。自死遺族の研究については、これまでの研究をまとめることが理論的に難しく、成果を出さないままに次のステップに進むことが難しかった。以上の3つの理由により2023年度の研究は十分に進まなかった。
2024年度に学内で、オーストラリアから研究者を招き、アルコール依存症とスピリチュアリティをめぐる国際シンポジウムを開催することが決まっており、それに合わせて、アルコール依存症者の当事者団体である断酒会と連携することが決まっている。その成果を十分に活用するためにも、次年度に補助金を使用したい。また自死遺族の会も、行政との連携をもとに徳島県に新しいグループを発足させたばかりであり、その発展の過程の考察も次年度の課題とし、補助金を用いたいと考えている。さらに研究成果をまとめるべく、関連書籍を購入し、また国内の遠方で実践している団体の活動の参与観察およびリーダーのインタビューを行いたい。
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