2020 Fiscal Year Research-status Report
Building a end of life care for persons with dementia-comparing Japanese and Swedish approach-
Project/Area Number |
19K02204
|
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
市瀬 晶子 関西学院大学, 人間福祉学部, 准教授 (50632361)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | エンド・オブ・ライフケア / 共有システム / 文化としての認知症ケア |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウイルスの感染拡大によって、2020年3月よりAグループホームを訪れての関与観察の実施ができなくなってしまったため、2020年7月21日~2021年3月13日にかけて、オンラインにより参加観察を行った。2021年1月までにAグループホームでの調査によって得られたデータについて、共同研究者とともにSpradley(1980)に基づいて分析を行った。その結果、「A:地域におけるように普通に生きる」、「B:認知症ともに生きる」、C:「“最期”とともに生きる」という3つの文化的意味のカテゴリーが見出された。この分析から、グループホームでの人生の最終段階とエンド・オブ・ライフケアの特徴として、次のことが明らかになった。 1点目はグループホームにおけるエンド・オブ・ライフケアは、複数の段階(ステージ)から成り立っていることである。従来の医療のモデルと比較して、グループホームでは入居した時からエンド・オブ・ライフケアが始められ、それが積み重ねられてエンド・オブ・ライフケアが構成されていた。 2点目は、「“最期”とともに生きる」という文化的意味が見られたことである。入居者は日常的な話題の中で自分の“最期”の時のことを具体的に話しており、スタッフも「入居者にいつ何が起きるかわからない」という意識を持ち、入居者の日常の人との接し方や最期の生き方から学んでいた。 3点目は、エンド・オブ・ライフケアは、本人、家族、スタッフで共有されるシステムとして捉えられることである。ある入居者の看取りの事例では、本人に最後まで食べてもらいたい家族と無理に食べさせることが本人にとって良いのか懸念するスタッフの葛藤があった。このことから、葛藤は避けられないが、本人の福祉を擁護しながら、本人、家族、スタッフで共有できるシステムとしてケアを作り上げていくことがエンド・オブ・ライフケアと考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の計画では、2020年度はスウェーデンのグループホームで約1年間の関与観察を実施し、本人、家族、スタッフ、地方自治体の保健福祉関係者にインタビュー調査を行うことを計画していた。しかし、2020年度中、外務省の渡航中止勧告が継続し所属機関の許可が下りなかったため渡航することができず、当年度に計画していた調査は実施することができなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年4月末現在も渡航中止勧告が継続しており、スウェーデンでの調査の計画は延期せざるを得ない。スウェーデンへの渡航が可能な状態になれば、2022年2月に渡航し半年間(所属機関の許可が得られた期間)、スウェーデンのグループホームで調査を実施する。 日本においても緊急事態宣言の発令中であり、Aグループホームでの関与観察は実施できない状態が続いているが、オンラインにより可能な参与観察を継続し、データの収集を続ける。また、これまでに得られたデータの分析から明らかになった知見をグループホームの職員にフィードバックを行う。フィードバックによって職員から得られたデータをもとにさらに構造的質問を立て、焦点化観察を行い、グループホームにおける「A:地域におけるように普通に生きる」、「B:認知症ともに生きる」、C:「“最期”とともに生きる」という3つの文化を続けて明らかにしていく。調査から得られたそれらの知見をもとに認知症の人のエンド・オブ・ライフケアを構築する。
|
Causes of Carryover |
当初の計画では、2020年度はスウェーデンのグループホームで約1年間の関与観察を実施し、本人、家族、スタッフ、地方自治体の保健福祉関係者にインタビュー調査を行うことを計画していた。しかし、新型コロナウイルス感染拡大のため、2020年度中、外務省の渡航中止勧告が継続し、当年度に計画していた調査を実施することができなかったため、旅費、調査協力先・調査協力者への謝礼、通訳への謝礼等のその他の経費に次年度使用額が生じた。 スウェーデンへの渡航が可能な状態になれば、2022年度にスウェーデンのグループホームで調査を実施する際の旅費、調査協力先・調査協力者への謝礼、通訳への謝礼等その他の経費として使用する。
|