2023 Fiscal Year Research-status Report
Building a end of life care for persons with dementia-comparing Japanese and Swedish approach-
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19K02204
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
市瀬 晶子 関西学院大学, 人間福祉学部, 准教授 (50632361)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 認知症の人のエンド・オブ・ライフケア / パーソンセンタードケア / サルトジェニックケア |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、スウェーデンのX高齢者ケア住宅で行った計205時間の関与観察とインタビュー調査によって得られた実証的材料について、研究協力者と分析を行い、既存のサルトジェニックケア、心理・行動症状への対処、パーソンセンタードケアに対して、以下の新しい知見を得て、論文としてまとめた。 1)従来のサルトジェニックケアは、健康な面あるいは強さに焦点を向け、認知症の人の不安や落ち着きのなさは、その人にできることをしてもらって方向転換を図る。しかし、そうしたアプローチは認知症の人の不安や落ち着きのなさが何を意味しているのかを見逃してしまう。認知症の人の家に帰りたいという懇願は、気を紛らわせたり、方向転換したりするよりも自己やアイデンティティの基盤を失った苦しみとして理解する必要がある。 2)先行研究では、認知症の人の心理・行動症状に対してはその背景要因を分析し、その要因を取り除くことが推奨されている。しかし、関与観察の結果からは認知症の人の暴力的な行動は、裸を見られることや失敗が恥ずかしいという理にかなった反応と理解することができた。ただし、本人や環境の要因は日々変わっていくため、認知症の人の体言化されたメッセージを読み、その知識を積み重ねていく必要がある。 3)認知症の人は記憶障害があり理路整然と話ができなかったりしても、将来や人生の最後がどうなるのかという問いを持っていた。パーソンセンタードケアでの「その人を中心とする」ケアは、その人が過去から続けてきた習慣や生活を維持することだと理解されているが、それだけではなく、認知症を抱えて生きる現在のその人の関心や価値を置いていることを聴く必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、日本の認知症の人のグループホームとスウェーデンの高齢者ケア住宅で関与観察とインタビュー調査を行い、現在は調査で得られた実証的材料を分析して、結果をまとめている段階である。現在までに、研究実績で報告した内容を「認知症とともに生きるための知識の探究」として論文にまとめ、海外の専門誌に投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は調査で得られた実証的材料について、さらに協力研究者とともに分析し、グループホームにおける入居者のコミュニティや認知症の人のエンド・オブ・ライフケアについても得られた知見をまとめ、論文として公表していきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、スウェーデンの高齢者ケア住宅における調査の開始を2020年4月から2022年3月に延期せざるを得なくなり、スウェーデンでの調査の実施が2年遅れた。そのため、分析や研究のまとめの作業も当初の計画より遅れ、2023年度から現在も継続中であり、分析や研究報告にかかる経費を必要としている。2024年度も学会参加や論文執筆等、協力研究者とともに研究成果の報告をするための経費に支出する予定にしている。
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