2021 Fiscal Year Research-status Report
人のリジリエンスを促進するコミュニティ要因の実証研究―国際地域比較調査を通して―
Project/Area Number |
19K02218
|
Research Institution | Hokusei Gakuen University |
Principal Investigator |
中村 和彦 北星学園大学, 社会福祉学部, 教授 (20330673)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋山 薊二 関東学院大学, 社会学部, 名誉教授 (50133575)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | resilience / リジリエンス / レジリエンス / コミュニティ・レジリエンス / adversity / 災害ソーシャルワーク / メンタルヘルス・ソーシャルワーク / ユース・ソーシャルワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の一大目的は、人がリジリエンスを発揮するために必要となるコミュニティの資源・環境について、日本(北海道、広島市等)および北米(カナダおよび米国)の複数のコミュニティにおける聴き取り調査を実施し、実証的に人びとの生活支援に必要な資源とその供給方法を探求することにある。 上記の目的を達成するため3年間の研究期間を設定し、①人のリジリエンス促進に影響を与えるコミュニティ・リジリエンスの理論枠組みを精緻化し、②7つのリジリエンス資源を基盤にしたリジリエンス促進要因把握のための調査項目を設定し、③地震等の災害時のアドバーシティ状況を経験し、そこからの回復を経験している北海道内の自治体(釧路市や浦河町等)での調査を実施することを柱としていた。 しかしながらこの2年間のコロナ禍の影響を直接的に受け、実態把握を主眼に置いた調査の中止、延期を余儀なくされた。そのため、(1)コミュニティ・リジリエンスに関する文献調査を精力的に実施し、コミュニティ・リジリエンス概念の日本の地域福祉との関連について研究成果を公表した。(2)調査対象を“困り感”を抱えた若者とし、若者のリジリエンス発揮とコミュニティ資源の関係に焦点化したインタビュー調査(若者と支援者)と、リジリエンスを測定する尺度(これまで日本では使用されていない尺度)を用いた量的調査を実施し、研究成果について公表できるところまで漕ぎつけることができた。 加えて、これまでの研究成果である、コミュニティ・リジリエンスにかかる理論枠組み、リジリエンス思考による「災害ソーシャルワーク」、「メンタルヘルスソーシャルワーク」、「ユースソーシャルワーク」、リジリエンス構築のマニュアル本『What Works』の翻訳等からなる出版の具体的計画を立案することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
人のリジリエンスを促進し、それを発揮するためには、コミュニティ資源(環境)、コミュニティ・リジリエンスが不可欠な要素となるという仮説の下、先行研究レビュー、理論研究を進めてきたが、実態把握のための質的調査を計画通りには進めることができなかった。 他方で研究対象の焦点をやや移動させ、学校や職場における“困りごと”を抱え、難事・難局状態にある若者のリジリエンス把握とコミュニティ資源との関係把握のため、若者支援施設を利用する若者本人への量的および質的調査、支援者への質的調査を実施した。 「やや遅れている」としたのは、新たな調査を実施することができたこと、研究全体の成果取りまとめについては、さらに時間を要することが明らかになったためである。
|
Strategy for Future Research Activity |
3カ年にわたる研究について、コミュニティ・リジリエンスを中心とした文献収集、先行研究レビューを実施し理論枠組みの整備、災害、メンタルヘルス、若者支援領域でのリジリエンス思考による実践の基本的考え方と基礎的要素の実態把握、リジリエンス構築マニュアル本の翻訳等を実施することができたものの、研究計画全体を通じた包括的な考察、その公表は課題として残っている。 そこで、研究期間の1年延長を願い出て、研究成果の公表(研究発表や論文執筆)を行うとともに、2022年度末の段階で、学術書出版の形で結実させたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
当初計画していた現地対象先に赴いての聴き取り調査を実施することができなかったことが主な理由である。研究実施を1年延長させていただき、不足の調査実施と学術書としての研究成果物を出版する費用に充てたいと考えている。
|