2021 Fiscal Year Research-status Report
日中間の社会事業政策移転のメカニズムに関する研究:1920~40年代を中心に
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19K02224
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
沈 潔 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (20305808)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
趙 軍 千葉商科大学, 商経学部, 教授 (30301831)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 社会事業 / 中国と日本 / 政策移転 / 東アジア / 女子教育 / 正田淑子 / 上代タノ / 戸田貞三 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度では、予定されていた中国現地での研究活動は新型コロナウイルスパンデミックの影響で中止せざるを得なかった。それと関連して、中国語で刊行された戦前の社会事業に関連する行政刊行物及び雑誌や新聞史料の収集、確認も影響を受けていた。また、 海外の当事者や研究者を対象としたオーラルヒストリも影響を受けた。 こうした影響を受けながらも、2021年度には、以下の研究活動を行い、実績を挙げた。(1)史料発掘・分析の重心を日本国内にある史料の再発掘に変更し、新たな発見が得られた。例えば、婦人運動、女子教育及び家族の分野において、これまで見落とされてきた日本人研究者個人の活動は、当時の中国社会事業行政・政策の形成及び社会事業人材教育に対する影響の具体的な経路や細部を解明することができた。具体例を取り上げてみると、まず、1920年代頃に活躍した婦人解放運動のリーダである上代タノが、中国の女子教育や婦人運動に助言した史実の発掘;また、日本女子大学校社会事業学部長を務めていた正田淑子が中国本土及び満洲地域に何度も視察し、現地の女子教育及び救済活動に携わりなど史実の解明;さらに家族社会学者の戸田貞三が、満洲地域の家族調査及び調査結果の分析により、中国の家族問題の対応に指摘したことを明らかにした。 (2)オンライン形式のワークショップと公開講座を通じて、北京大学社会学科の「海外学者系列講座」、復旦大学社会管理と公共政策学部の「海外社会科学前線系列精品講座」及び中国社会政策学会「国際社会政策論壇」などの学術交流の場において、基調講演を行い、研究成果を公表した。 上述した研究活動によって、やや遅れている部分もあるが、おおむね順調に展開しており、研究成果の公表に向けてよい基礎を築くことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍によって予定された海外での研究活動が、やや遅れている部分もあるが、オンライン会議の活用及び史料発掘・分析の重心を日本国内にある史料の再発掘に変更することにより、本研究はおおむね順調に展開している。 計画された①民間社会事業団体における日本と中国の交流経路の解明、②中国社会事業人材育成における日本からの影響の解明という課題は、おおむね達成できた。 いま、研究成果の公表に向けて、雑誌に学術論文の投稿や研究成果のデータペースを海外への発信に進めており、これまでの遅れを取り戻すために努力中である。
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Strategy for Future Research Activity |
①計画された課題の一つである「社会事業の形成と展開における日本と中国の特質」について、今後の研究の中で考察をより深めていく予定である。 ②コロナ禍の国際的鎮静化に従い、海外の国際シンポジウムへの参加と国内を会場とする研究成果講評会やワークショップの開催によって、研究課題及び研究成果における日中間の共通認識を深めていく。その際、海外の研究者の招聘も視野に入れたい。 ③オンライン会議やホームページによる情報発信と基礎資料・研究成果の公開に力を入れていく。 ④学術論文の公表を通して、本研究の成果を社会へ還元する。
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Causes of Carryover |
主に予定された海外への現地調査と資料調査などの費用は、コロナ禍の影響によって次年度での使用に繰り下げたためである。今後、コロナ禍の沈静化にしたがい、海外への現地調査と資料調査を速やかに実施したい。調査先の目的地に関して、外務省の海外渡航安全情報の指導と各所属研究期間の規則に従って選定し、適宜に実施する予定である。
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