2022 Fiscal Year Research-status Report
日中間の社会事業政策移転のメカニズムに関する研究:1920~40年代を中心に
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19K02224
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
沈 潔 日本女子大学, 人間社会学部, 研究員 (20305808)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
趙 軍 千葉商科大学, 商経学部, 教授 (30301831)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 社会事業 / 中国と日本 / 政策移転 / 河田嗣郎 / 山川菊栄 / 堺利彦 / 矢内原忠雄 / 遠藤隆吉 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主な狙いは、1930年代ごろ、日本と中国の間で行われた社会政策移転のプロセスの中に、中立性・共益性の側面があるのかを追究することにある。目下、日中関係が揺れている中、本研究の意義がより重要になりつつあると思われる。 今年度では、引き続きオンライン会議と対面会議を活用した研究活動を続けていた。研究実績について、1)研究成果を発信する。代表者はオンライン形式を通じて中国で開催された社会政策国際論壇に参加し、歴史経緯に照らして日中間の社会政策移転の方式について発表した。また、論文の「超少子化現象的政策思考;兼論日本と韓国の経験と教訓」、図書『日本社会保障制度』が公表された。2)引き続き、資料整理・翻訳作業を作業し、データベースに蓄積し続けている。特に1920年代に日本国内社会政策学界でも注目されていた山川菊栄『婦人与社会主義』、河田嗣郎『農業社会化運動』、堺利彦『現代社会生活』、矢内原忠雄『人口問題概述』などの著書は、中国語に翻訳、出版された経緯、影響を分析し、こうした日中間の社会政策移転の中立性・共益性を見出すことを試みた。3)2023年3月に上海の復旦大学、上海交通大学を訪ね、研究成果の発信と意見収集などを行った。 分担者は今年度にネットで公開されつつある新聞・雑誌などの中国語資料を収集・分析し、民間団体と民間人による往来、そして近代日本の社会学など理論と思想の中国での伝播に対する研究を続けていた。研究実績について、1)論文「漢学の革命と革命の漢学ーー遠藤隆吉の『漢学の革命』をめぐって」、講演「高遠から見るアジアーーアジア主義者としての中村弥六」を発表できた。2)シンポジウム「甦る中村弥六・布引丸事件」を企画・主催し、シンポジウム「第5回新世紀人文学研究会研究大会」、「第1回日本華人教授会議鹿児島コラボ学術交流会」などに参加し、研究成果の発信と交流を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの影響で、中国など海外への研究調査と学術交流が3年間ストップされ、研究プロジェクトの全面的展開に大きな支障を来された。その中で、本年度の3月に代表者が中国の復旦大学、上海交通大学に行くことが実現でき、限られた時間での研究調査と学術交流を行った。 また、研究メンバーは、web会議の形で様々なミーティングを開き、国内外の研究者を呼び掛けて、研究成果の検証をしてもらう。そして、国内外で開催されたさまざまな学術的イベント参加し、本研究プロジェクト関連の情報・成果を発信するとともに、資料共有の努力を努めた。しかし、予定されていた海外研究調査をはじめ、研究プロジェクトの特徴となる社会事業政策の「国際的移転のメカニズム」視野での全面的点検と概観するに、史料批判や論点の析出に再考せねばならない必要性も感じられ、海外への渡航環境が緩和される次第、資料調査と現地視察を再開し、これまでの不足を補うつもりである。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度では、本研究プロジェクトの集大成として、以下のような推進方策を取りたいと考えている。 1)研究成果の総括と公開。代表者と分担者は、2023年度に日本及び中国で開催する学術会議に積極的に参加し、実証研究の成果を発信する。また、オンライン会議の形を活用しながら、本研究テーマと関連する研究グループとの学術交流を図り、研究成果を発信し、外部からの検証意見を収集する。 2)研究論文の執筆と公開。本研究プロジェクトの完成に向けて、研究論文シリーズの執筆に取り組み、日中の学術誌などに発表し、本研究プロジェクトで得た認知と識見を公にして行く。 3)資料データベースの充実。引き続き中国語の関連資料を発掘・蒐集し、日本語資料などと照らして整理し、データベース蓄積の作業を充実し、完成していく。
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Causes of Carryover |
1)研究成果の最終確認や公表する為に、日本及び中国でワークショップを開催する計画を立ており、代表者、分担者の海外出張並びに海外研究者を招聘するにあたる旅費、謝礼を使用するためである。 2)研究成果公表の為に生じた翻訳代や日本語校正サポート費用を使用する予定がある。 3)PC消耗品の購入に使用する予定がある。
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