2020 Fiscal Year Research-status Report
Public Pension Reform and Institutional Reformation for De-destitution among the elderly
Project/Area Number |
19K02229
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
鎮目 真人 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (50285508)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
城下 賢一 大阪薬科大学, 薬学部, 准教授 (70402948)
近藤 正基 京都大学, 公共政策連携研究部, 教授 (80511998)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 年金制度 / 言説的制度論 / 制度変化類型論 / 福祉レジーム / 社会保障制度改革史 / 比較福祉国家 |
Outline of Annual Research Achievements |
ジェンダーや移民にまつわる新しい社会状況に対して、年金制度を始めとする社会保障制度がどのような対応を迫られ、制度改革がなされてきたのかということについて研究を行った。 具体的には、第一に、新しい社会的リスクに対して、日本の年金制度において、縮減政策とともに、どのような制度的対応が図られてきたのかということを明らかにした。その制度的対応としては、補償政策(代償的補償政策)と制度の再調整を意図した補償政策(制度再調整的補償政策)とに分けられる。前者の代償的補償政策は、年金制度と補完的制度関係にある労働施策を拡充する政策であり、定年制度の延長、雇用保険制度における年金給付調整の緩和や高齢者への賃金補助政策の拡充などを指摘することができる。後者に関しては、女性の年金権を保障するための個人単位化の推進、年金制度の分割、育児休業中の年金保険料の免除制度などをあげることができる。また、こうした補償政策は年金制度における新しい政策手段とともに打ち出されてきた。新しい政策手段とは、部分年金制度、概念上の拠出建て制度などである。 第二に、こうした改革を経た年金制度が日本の福祉レジームという文脈で見た場合、どのような特徴と問題点を有するのかということを分析した。日本の福祉レジームは、企業がフリンジベネフィットとして男性正規社員に対して福祉的サービスを保障する形式が一般的であり、そこでは、大企業の従業員は厚生年金とともに企業年金や退職一時金が給付され、最も充実した給付を享受している。また、中小企業の正規従業員は、大企業の正規従業員ほどではないが、厚生年金に加え、退職一時金が保障されている。しかし、非正規従業員や自営業者などは、最も給付水準の低い国民年金しか受給できない。このように、年金制度を始めとする日本の社会保障制度には階層性が存在しており、それが脱貧困化効果を減じていることが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は新型コロナ禍の影響により、対面で行う予定であった研究会を実施することはできなかった。しかし、以下に記すように、オンラインで国内外で多くの研究者の参加を得てワークショップの機会を持つことができた。 1.2020年10月28日、Sigrid Leitner、Varieties of Familialism:Germany in comparison to other EU member states 2.2020年12月5日、永吉希久子、社会保障はなぜ、いつ排外主義と結びつくのか また、上記の研究会以外にも、研究テーマに関する著書、論文を予定通り発表した。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は研究の最終年度に当たる。引き続き、オンライン等による研究会を開催しつつ、研究目的を遂行する。具体的には、以下の内容を実施する。 1.年金制度を始めとする日本の福祉レジームを諸外国の福祉レジームと比較して考察する。 2.日本の年金改革の縮減政策を諸外国と比較して分析する。 3.日本の年金制度を始めるとする制度改革史について考察する。 4.ヨーロッパ、とくにドイツにおける年金制度を始めとする社会保障制度の制度改革について解明する。
|
Causes of Carryover |
次年度使用が生じた理由は、研究報告のための学会等の出張が新型コロナウィルスによる感染症の蔓延によって中止になり、そのための出張旅費が未使用となったことによる。未使用額は、次年度が研究の最終年度であることを見据え、国内外の研究者を招いた研究会の謝金、研究テーマと関連した書籍・論文・資料の購入、研究内容のインプットとアウトプットの際に必要な物品の購入等に使用する予定である。
|
Research Products
(12 results)
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Book] 政治経済学2020
Author(s)
田中 拓道、近藤 正基、矢内 勇生、上川 龍之進
Total Pages
286
Publisher
有斐閣
ISBN
9784641150799
-
-