2021 Fiscal Year Research-status Report
Enhancing expertise in "after-school day service"for disabled students
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19K02243
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Research Institution | Tokyo University of Social Welfare |
Principal Investigator |
立松 英子 東京福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (20510613)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 放課後等デイサービス / 専門性向上 / 発達支援 / 認知発達 / シンボル機能 / 行動障害 / 視覚-運動機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、放課後等デイサービスにおける発達支援について、現場に密着した視点から実践的で応用可能な体系を作ることを目指している。放課後等デイサービスの利用者の実態は幅広いが、本研究では、言語的コミュニケーションが困難な対象(特別支援学校在籍者)に焦点が当たっている。方法は3つに分けられる。 ①調査研究:400か所の社会福祉施設・事業所(以下「事業所」)に質問紙調査を行い、発達支援のニーズを把握した(2019年)。回収率は低かった(74事業所:19%)が、発達支援への顕著な関心を示す内容であった。②実践研究:事業所6か所の協力を得て、保護者の了解のもと、直接観察の対象となった事例に教材教具を使った個別学習を実施し、動画を通して認知特性への気づきを職員と共有した(2019年~2022年)。各事業所が選んだ事例の多くが、認知発達がシンボル機能の芽生え前後の段階であったことから、現場の職員はこの段階の利用者への対応を特に難しく感じていること、認知発達に着目することで対応の指針が明確になることが示唆された。本研究で、認知発達の評価法として使用した「太田ステージ評価」と「鳥の絵課題」については、中国の楊州大学主催の2021 International Symposium on Exercise Intervention for Autism Spectrum Disorders(自閉スペクトラム症に関する実践的介入の国際シンポジウム)において概要を発表することができた。 ③文献研究:研究代表者による先行研究(2004)のデータを見直し、認知機能の中でも視覚-運動機能の発達を実践的に捉えるために開発した独自の評価法(鳥の絵課題)の発達的意義を再確認した。この評価を指標に、言語理解がシンボル機能の芽生え段階に当たる高等部の事例の癇癪と視覚-運動機能との関係を検討した(2021-2022年)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の中心は、実践研究である。各事例、その保護者、直接担当する職員に対面して情報収集することは必須と考えられるが、2年次以降新型コロナ感染症の影響で対面実施はほとんど叶わなかった。勉強会(事例検討会)では、放課後等デイサービスで直接支援に当たる職員が「言語理解」「言語表出」「ジェスチャー」「個別学習時の様子」「日常生活」「行動面での特記事項」などの項目で対象事例の様子を報告し、それぞれの場面の動画を提供してディスカッションするという手順で進めたが、それだけでは不十分であり、研究代表者が直接各事例と対面し、個別学習を行いながら詳細な観察を行いたい。また、勉強会において示した指針に基づき対応を工夫した結果についても情報収集する必要があるので、今年度4-5月に訪問を実現したい。文献研究を踏まえて考察・結論に至る前提として、これらの手順を踏む必要があることが、研究に遅れが生じている理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
①調査研究:2019年に実施した。2021年に専門誌に投稿したが、査読と修正を経て同年12月、採択が見送られたことが伝えられた。理由は、新型コロナウィルス感染症が社会全体に影響を及ぼし始めた当初の実施により回収率が低く、また、倫理審査(*)の結果を得る前に実施したこと等が考えられる。しかし、各事業所の、発達支援への顕著な関心を示す内容であったので、令和5年6月30日までに作成する研究報告書で詳説する予定である。 *倫理審査:本研究の倫理審査については、東京福祉大学倫理・不正防止専門部会でなされ、2020年9月10日に承認されている。しかし、調査研究はそれに先立って実施したため、調査研究の部分は承認の範囲に含まれていない。 ②実践研究:今年度も、各事業所で抽出された事例において引き続き個別学習と行動観察を続ける。新型コロナウィルス感染症の影響により訪問は限られると予測されるが、機会を捉えて可能な限り訪問する。各事例において発達評価(「太田ステージ評価」「鳥の絵課題」)に加えVinelandⅡ適応行動尺度を記入しているので、事例の担当者(放課後等デイサービスにおける直接支援者)による報告と関係づけつつ考察を進める。認知発達に視点を置いた指針の判断が妥当かどうか実践的に検証する。 ③文献研究:放課後等デイサービスの職員が「シンボル機能の芽生え段階」前後の事例への対応に難しさを感じていることが明らかになってきたため、認知発達(コミュニケーション手段や視覚-運動機能の発達)と情緒や行動との関係に視点を置きながら、各段階で対応が異なることを踏まえて体系化していく。その裏付けとして、障害児(主として知的障害を伴う自閉スペクトラム症)に関する文献のみならず、定型発達の行動に関する文献に間口を拡げて文献研究を進める。実践現場で応用可能な内容にするために、放課後等デイサービスに関する文献も概観する。
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Causes of Carryover |
研究の終了時に冊子を作成する予定だったが、実践研究の進行が遅れ、冊子をまとめるに至っていないため。
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