2021 Fiscal Year Research-status Report
A Comparative Study on support policies and activities in the Defined Contribution Age - Focusing on situation in the U.S.
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19K02245
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
吉田 健三 青山学院大学, 経済学部, 教授 (80368844)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アメリカ / 年金システム / 確定拠出型年金 / 退職後所得保障 / 退職危機 / ミドルクラス経済 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の核心的な問いは「確定拠出型年金を有効に機能させる政策や支援はどのようなものか?」であった。この問いに取り組むため、2021年度においては、2020年度に構築した給付モデルに関する論文を土台に、確定拠出型年金が早くから普及しているアメリカにおいて、それが国民の退職後所得の手段として有効に機能しているかどうかの検証を課題とした。401(k)プランの普及現象に関しては、20世紀的なアメリカの経済秩序、例えばミドルクラス経済、フォーディズムといった経済秩序との関係の崩壊として消極的に言及される傾向にある。新聞などのメディアにおいても、各種調査からアメリカにおける「退職危機」への警鐘がしばしば鳴らされてきた。実際の年金研究においても、ボストン大学のA・マンネルらの研究グループをはじめ、近年における退職準備の不足や悪化、リスクの側面が強調される傾向にある。だが一方で、このような危機論に対して、アメリカの退職準備状況を楽観的に捉える言説やそれを支える実証研究もある。 このような状況を踏まえ、2021年度は、アメリカ年金システムの再構築という観点から高齢者の退職後所得および現役世代の準備状況について、現地の統計および実証研究の精査と批判的検討を行った。少なくとも資産の所有の範囲、平均や分散などの統計的指標において、アメリカの年金システムの機能はその以前より著しく悪化したという状況ではない。現在の「危機」は、むしろ伝統的な問題が401(k)プランの普及とともに可視化され、また対処可能な問題として認識されているという積極的な側面がある。一方で、「退職危機」事態が、統計で認識可能な状況ではなく、個々人にとっての不確実性、不安定性の拡大であることが示唆された。これは2020年度のモデル給付とも整合的である。この結果は、2022年度、社会政策学会で公表の上、論文として投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍により、当初予定していた海外での調査は全て先送りにされた。しかし、国内において行うべき研究は順調に進めている。2022年度以降、海外渡航が以前と同様に行える環境が整うのであれば、課題、及び計画の若干の調整により所定の成果が挙げられるものと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、コロナが蔓延する状況下でも滞りなく研究が進められるようオンラインでの資料収集、またコンタクトを試みる一方で、文献検討や資料 の整理、精査により大きな比重を置いていく。また、国際的な移動、ヒアリング対象の新規開拓が著しく制約される中、特に従来の蓄積やコネクションがあるア メリカ研究により比重を移していく必要があるが、一方で渡航制限については緩和傾向にあり、海外調査の再開に備えた準備も行っていきたい。
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Causes of Carryover |
コロナ蔓延による海外渡航調査が実施できなかったため。これによって生じた次年度使用金は、次年度に海外渡航が以前と同様に行える環境が整うのであれば、当初に計画されていた渡航調査に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)