2020 Fiscal Year Research-status Report
多様な災害弱者の命を守る-新たな福祉避難所ガイドラインと自治体の制度設計
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19K02248
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
鈴木 秀洋 日本大学, 危機管理学部, 准教授 (30780506)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 福祉避難所、災害時要配慮者 / 災害時避難行動要支援者 / 災害弱者(高齢者・障害者・子ども・妊産婦等) / ガイドライン、取扱指針の改定検証 / 公助・共助 / 新型コロナウイルス感染症下の避難所 / 人権・ジェンダー・多様性尊重 / 行政連携(福祉と危機管理と男女共同の連携) |
Outline of Annual Research Achievements |
1調査研究/リモート(ズーム使用)で、直接宮城県岩沼市、岡山県倉敷市、愛媛県伊予市、東京都豊島区、東京都文京区、東京都品川区等の調査を行い、岩沼市及び倉敷市については、被災時の状況やその後の防災の取組等の意見交換を行った。文京区及び品川区においては現状の取組を調査した。筆者は内閣府の委員委嘱(昨年度の「男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン」検討委員に引き続き、今年度は「防災研修プログラムの改定に関する検討会」座長)を受けており、実際に、文京区、品川区、愛媛県伊予市の防災研修(試行)プログラムを提供するとともに試行研修にも参加し、課題の抽出と全国に発信する研修プログラム案の策定を行った。 2研究・成果発信の取組/国及び自治体の防災の取組調査を継続し、福祉避難所の機能向上のためには、自治体の福祉部局の取組だけでは難しく、防災・災害・総務部局、男女共同部局、その他自治体の各部局との連携が必要であり、各部局への働きかけや役割分担等について話し合う機会や合同の研修の必要性が見えてきた。筆者自身も自治体内部組織間での課題共有・会議連携の場に同席・参加させてもらった。自治体現場での課題共有・会議を通じ、国のガイドラインの問題点が一層浮かびあがった。国への問題提起は継続して行っている(筆者論文・新聞・テレビでの発信)。なお、これまでの研究成果(第一次避難所の制度設計のままでは機能不全が繰り返されること、その点のガイドラインの改定が必要であること等、東日本大震災津波被害の分析(裁判検証)等)については、研究成果として著書(『虐待・DV・性差別・災害等から市民を守る社会的弱者にしない自治体法務』(2021、第一法規))をまとめて公表した。 3今後/上述成果記述のとおり、福祉部局、男女共同部局、防災・災害・総務部部局等の連携・連動の機会設定の取組研究、支援を行いながら、研究を深めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査研究自体はおおむね順調に進んでいる。 筆者は、内閣府「防災研修プログラムの改定に関する検討会」座長委員及び品川区の福祉部災害時等対応等検討委員会アドバイザーを務めており、国の立場と自治体の立場の双方の立ち位置から避難所(特に福祉避難所)の在り方を調査検討することができている。繰り返される災害に対して、今後の福祉避難所の機能が発揮されるためにはどのような課題があるのか、その点に関しては、これまでの研究を通じて多くの課題抽出ができた。そもそもの福祉避難所の制度設計・ガイドラインの問題点、国の方針と自治体の取組の連動・役割分担の問題点、行政内部の縦割りの問題点等である。現在災害対策の基本法である災害対策基本法の改正やガイドライン改定の動きがあり、新たな内容を踏まえて、更なる課題抽出と課題解決のための具体的研究提言をまとめていく。 福祉避難所のガイドライン制度設計つまり「第一次避難所としての福祉避難所」という制度設計の問題が大きいとの筆者の研究仮説については、繰り返される震災の研究(調査)を進めれば進めるほど、実際に証明されてきた実態がある。今年度も著書・論文・新聞コメント等でこれまでの研究発表を行っているが、研究最終年の成果発表に当たり、国の現時点での制度改正後に生じる新たな課題等について更なる抽出や取組の具体例について(例えば福祉避難所を第一次避難所とした場合の数や種類・類型の増加確保(コロナ感染症下で更なる確保の必要性)、福祉避難所を民間機関に依頼する場合の協定内容の詰めや財政支援等)、現場におけるエビデンス収集を進めていく。 研究自体は、新型コロナウイルス感染症下で直接のヒアリングができなくなった点をリモート等代替手法で補っており現時点では順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、福祉避難所の機能向上のための課題抽出はできている。 今後は、現在国が災害対策基本法及び福祉避難所に関する「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」(また関連する「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」)の改正を発表しており、この改正の中身を精査して、更なる課題抽出を行う。 また、新型コロナウィルス感染症下における避難所の在り方についても研究当初に十分想定されていなかった課題であり、この研究で可能な限り課題抽出に努めることとする。 これまでの震災時の福祉避難所の機能不全は、福祉避難所を第二次避難所としていることであるとの筆者仮説は調査を進めるごとに証明されつつあり、既に著書及び論文等の公表を行ったところである(著書・論文の外①20210316中京テレビ放送報道情報番組「キャッチ」「介護・介助が必要な人はどこに避難?」、②20210224東京新聞「福祉避難所「非公開」、③20201010毎日新聞「千曲川沿い15市町村アンケート(上)」、④同1008読売新聞「要配慮者施設公表進まず福祉避難所(上)」等でも研究成果コメント・提言)。研究最終年では、研究発表の一層のエビデンス収集を行うとともに、国の法律改正等を踏まえた上で、その先の機能充実のための残された課題や新たな課題抽出と課題解決の具体的方向性について研究報告書をまとめる(自治体内部の部局間の連携の問題や福祉避難所を民間に依頼する場合の役割分担と支援の在り方等を追記する)。
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Causes of Carryover |
第一に、新型コロナウイルス感染症下であり、出張が不可能となり旅費分の予算執行がなくなったことである。第二に、今年度も国及び自治体の審議会委員活動により、ヒアリング調査経費等について科研費使用をせずに、ヒアリング調査及び資料収集ができたためである。新型コロナウイルス感染症下の状況は未だ終息の兆しが見えない中、また研究の対象及び相手方(ヒアリング対象等)が自治体行政であるため、現状の感染下では、計画的なヒアリング等はできないため、相手方の対応が可能な時に、個別・随時・臨時的な形でヒアリング依頼・遂行、研修・訓練との工夫等を行っていく。そのために必要な機材・機器・物資(パソコンその他電子機器、福祉避難所用備品・消耗品等)の購入を予定している。
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