2022 Fiscal Year Research-status Report
第三者評価事業が社会福祉施設に根づくための実践モデルの形成と有用性の検証
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19K02256
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Research Institution | Gifu Kyoritsu University |
Principal Investigator |
谷口 真由美 岐阜協立大学, 地域創生研究所, 研究員 (90413301)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢島 雅子 京都ノートルダム女子大学, 現代人間学部, 准教授 (60581600) [Withdrawn]
北川 博司 中部学院大学, 人間福祉学部, 講師 (90788879) [Withdrawn]
兼松 博之 中部学院大学, 人間福祉学部, 講師 (70912583)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 福祉サービス第三者評価事業 / 実践モデル / 継続評価 / より良いサービスを受ける権利 / モバイルチーム / 改善の評価 / 対話 / 観察者 |
Outline of Annual Research Achievements |
「福祉サービス第三者評価事業」が、利用者のより良い生活の実現と、職員の業務に関する気づき・変革を促す装置として機能することを目的に、第三者評価事業の実践モデルを創設、実際に高齢者施設にて用いて有用性を検証した。モデルの具体的な内容は①受審施設に業務改善過程を新設し、評価機関が継続的に関わる。②その過程にモバイルチームを発足させ、業務改善を評価する流れを観察・記録・サポートする。最終的にはサービスの質を評価機関が継続的に評価し、有意義な業務改善へ繋げるシステムを構築、福祉現場に根づかせる。そのことにより、国民のより良いサービスを受ける権利の実現を目指している。 2022年度の主な研究実績は実践モデルを稼働し、以下の(1)(2)を得ることができた。 (1) これまでのサービス評価の前後と改善に着手した後の職員アンケートの分析、職員懇談等から①受審施設の改善のターゲットの導き方(選択方法等)、改善の評価項目を検討した。さらに改善の評価項目の着眼点・受審施設、評価機関、モバイルチームそれぞれの役割分担とパートナーシップのあり方・対話型評価の明確化・具体化を図った。対話とは新たな思考価値を生みだすことで様々な技法を使用する。その対話型評価により受審施設職員と評価機関調査員、モバイルチームは対等・安全な関係を築き、単に評価項目ができているか否かを評価するのではなく、改善を主体的に進める役割を相互が担えるよう目指している。 (2) 福祉現場の業務優先の実態の中で、第三者評価事業が利用者優先のより良いサービスを受ける権利を守り機能するには、従来通りの事業の意義・目的・指針を外形的に短期で実施するには限界がある。サービスの質の評価や業務改善には繋がりにくい。改めて評価過程を観察・記録するモバイルチームの導入で、評価技術向上や具体的な業務改善を目指す新しい実践モデルを形成する必要が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍で2022年度も2021年度からの研究計画を引き続き以下の(1)(2)の内容を継続した。 (1) 実践モデルにおいて主に改善点の選択方法と評価項目・対話型評価方法等について評価機関・受審施設・モバイルチームで時間をかけ検証してきた結果、実践モデルの構造的課題も見つかり修正を図り、実践モデルをより具体化できた。コロナ禍で受審施設では家族を含む外部からの面会禁止、研究チームのメンバーも県外の移動の禁止や柔軟な参加が困難となった。受審施設職員からは「施設を知ってほしい」と、研究チームとの交流を望まれたがその機会も減った。研究会の開催は対面よりもリモート参加者が増え、協議する項目への共通認識を図るのに困難を要した。具体的には福祉現場の基盤とされる、人を中心としたパーソンセンタードケアの実体をどのように捉えるか、職員の主観的自己評価への示唆等、十分協議できなかった。以上の状況下で2022年度の計画における受審施設職員の改善への意識調査及び改善の継続評価の実施については、計画通り進められなかったが、モデルとなった受審施設が確実に改善に取り組む準備と体制は現在も整えられているため、引き続き取り組んでいく。 (2)先進事例地域(ドイツ)の福祉国家発における利用者優先の内容とドイツの社会保険制度の仕組み等を研究チームで共有、ドイツ訪問調査への準備(利用者のより良いサービスを受ける権利を守るための評価システムと、福祉施設職員の専門的倫理の教育と実践を明らかにする等訪問調査の目的の共有、役割分担)を行う。先進事例(ドイツ)への訪問調査は、視察先の内容もほぼ確定して現地コーディネーターとの打ち合わせも定期的に行ってきたが、海外情勢により訪問不可の状況が続くこととなった。1年研究を延長し、確実に第三者評価の実践モデルの有用性に繋がるシステムへ準備を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
以上を進めるため、研究チームが県や国・先進国と「福祉サービス第三者評価事業」が、利用者のより良い生活の実現と、職員の業務に関する気づき・変革を促す装置として機能する研究テーマで繋がる。具体的には、実践モデルに関わっていただいた機関や、第三者評価事業の全国研修を担当する全社協及び第三者評価事業の指針をつくる厚生労働省との合同研究会を持ち、システムの精査を図る。モバイルチームのシステムへの導入はベルキーの精神医療改革から学び取り入れたが、その役割とパートナーシップあり方についてさらに精査する必要がある。国外の先進事例(ドイツ)の訪問調査又は現地の施設職員とのアンケート調査・合同研究会が実施できるよう引き続き準備を進める。ドイツにおけるサービスの質の確保のための法体系と福祉施設サービス評価システムを検証する。令和2年度の第三者評価事業の実体調査報告を作成した全国福祉サービス第三者評価調査者連絡会をはじめとする調査研究機関・団体と交流を図る。本研究課題で得られた成果は、日本社会福祉学会・人間福祉学会に投稿予定である。新たな視点で、「第三者評価事業が社会福祉施設に根づくための実践モデルの有用性の検証」を行い、システム確立へとつなげていく。 第三者評価事業の実践モデルから権利擁護(アドボカシー:利用者の代弁や弁護を行うこと、支援を通じて権利を守ること)を福祉現場で実体化する。権利擁護は、論者によってまちまちで、現場ではどのように実践すべきか混乱もみられる。福祉実践活動の中で改めて権利擁護の概念化(個別の物事が共有する性質や本質を体系的にまとめ上げ、理論化するプロセス)を図る。 権利擁護の概念化がなぜ現場で必要か、認識されている権利擁護とされていない権利擁護実践活動の中で検証し制度を問い直す。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で受審施設では家族を含む外部からの面会禁止、研究チームとの交流も制限された。さらに研究チームのメンバーも県外の移動の禁止や柔軟な参加が困難となり、研究会の開催は対面よりもリモート参加者が増え、協議する項目への共通認識を図るのに困難を要した。先進地域(ドイツ)への訪問調査も、海外情勢が加わって延期された。 2023年度にこれまでの未使用額の研究費(旅費)を執行する予定である。
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