2019 Fiscal Year Research-status Report
A Developmental Study of Riskassessmentsheets on Neglect and Psychological abuse riskassessment sheets on Child abuse
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19K02257
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Research Institution | University of Human Environments |
Principal Investigator |
山田 麻紗子 人間環境大学, 人間環境学部, 特任教授 (90387746)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邊 忍 日本福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (50634606)
千賀 則史 名古屋大学, ハラスメント相談センター, 准教授 (70803782)
姜 民護 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 客員研究員 (60802254)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ネグレクト・心理的虐待のアセスメントシート / 児童相談所との共同研究を基盤に実施 / 量的・質的の両面からの研究・開発 / 国際比較研究による客観性と普遍性 |
Outline of Annual Research Achievements |
名古屋市児童相談所(以下「市児相」)から、日常的な援助活動により蓄積した基礎データ(2015(平成27)年度から2017(平成29)年度の3年間に市児相が受理した事例の相談台帳および対応台帳に記載されたデータを結合した延べ11,024件)の提供があり、産総研の協力を得て量的研究としてAIを使用して、2018(平成30)年度に分析を行った。その際AIが一時保護および再虐待の予測を不能とした事例があった。それら予測不能となった全事例について、市児相から提供された児童相談受付票(受理会議資料)または援助方針会議資料および一時保護検討のためのリスクアセスメントを精読し、分析・まとめを行い、ネグレクト・心理的虐待の種別ごとの特徴を明らかにする。 次に、質的研究として複数回ネグレクト・心理的虐待で通告された事例の担当職員へのインタビューを複数回実施する。加えて、市児相職員(福祉司、心理司、一時保護所職員等)計20人にインタビューを複数回にわたって実施する。実施にあたっては事前に所属所長の書面による同意、協力職員にも同意を丁寧な説明等の後に同意を得る。インタビュー内容を録音し、テープ起こしした資料を精査し、市児相のネグレクトや心理的虐待の特徴、対応の傾向を探り、アセスメント項目、着眼点等を明らかにする。そして、実務の実態に即したネグレクト・心理的虐待のリスクアセスメントシートの研究・開発を行う。 また、平成27年以降協力関係を築いてきた韓国保健福祉部・中央児童保護専門機関、国内でもアセスメント票の開発を独自に行い実施している三重県および岡山児童相談所との意見交換を通して、明らかになった事例の特徴、リスクアセスメントシートの内容・項目、児相職員の対応傾向に関する情報を精査し、国内・国際比較研究により客観性や普遍性を持った同シートの開発を3年間で行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究推進のための名古屋児童虐待研究会を、今年度は第21回(第16回5.3実施から第36回同令和2年3月23日実施)まで、合計21回を実施できた。また、複数回児童相談所に通告された事例の担当児童福祉司(同一人物)に合計3回のインタビューを実施し、その内容はTEMを使用した質的研究に関する研究として分析した。その結果、①担当職員の事例取り組みの実際、②リスクアセスメントに必要な着眼点などを具体的にできた。また、この成果を論文化し、1月下旬に「子ども家庭福祉学」第20号に投稿した。 次に児相職員ら初期対応班と地区担当班の福祉司、心理司および一時保護所職員等計20人を3グループに職種ごとに分け、それぞれについてグループインタビュー形式で1時間15分から20分ずつ、合計3回にわたり聴き取りを実施した。それらの内容はGTAを使用した質的研究に関する研究としてまとめ、分析した。その結果、得られた成果を踏まえてネグレクト、心理的虐待に特化したリスクアセスメントシート開発のために必要な項目、着眼点等を概ね概括できるところまで研究が進んだ。 本研究では産総研の協力を得てAIを使用して量的研究を行ったが、その際AIが一時保護および再虐待の予測を不能とした全事例について、児童相談受付票(受理会議資料)または援助方針会議資料および一時保護検討のためのリスクアセスメントを市児相から提供を受け精読し、分析・まとめを行った。その結果、AIが予測不能であったネグレクト・心理的虐待の種別ごとの特徴や課題、リスクアセスメントに当たっての留意点等が明らかになった。 更に、参考として三重県児相のヒアリングを実施し、アセスメントシート開発の一方法としての知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までに得られた分析結果や知見等を基に、リスクアセスメント項目、同シートの構成・内容を練り、現在までに開発されている三上邦彦他(2008)「子どもネグレクトアセスメント[改訂版]」、加藤曜子他(2018)「児童相談所と市町村の共通アセスメントツール作成に関する調査研究」、岡山児童相談所「子どもが心配」などのネグレクト等の重症度に関する尺度や調査研究を精読し「ネグレクト・心理的虐待のリスクアセスメントシート」の開発を行う。 また、来年度中(当初の予定は9月上旬であったが、コロナウイルス感染拡大のため3月まで)を目途に、韓国の児童虐待に携わる機関や職員とのネグレクトや心理的虐待事例の特徴、リスクアセスメント項目、リスクとストレングスのとらえ方およびアセスメントの留意点等について意見交換の機会を持つ。更に、韓国以外に近年児童虐待への積極的取り組みで注目されているシンガポールも研究の比較対象に入れることを考慮し、(当初の予定は来年度末の3月ころまでであったが、再来年度夏ころまでに)シンガポールで、関係者らとの意見交換の場を持つ機会を作る。 加えて、来年度開発したリスクアセスメントシートを再来年度は、市児相職員に実務で試みに数ヶ月程度使用してもらい、その結果についてをアンケート等で調査して問題・課題等を探る。それらの結果と海外での意見交換で得られた資料を基に、リスクアセスメントシートの修正を行い、客観性や普遍性を持った同シートの開発を実践する。 ただ、コロナウイルス感染拡大が継続し、渡航制限が継続している現状では、海外での研究が困難な状況が継続する可能性もあるため、今後状況を見ながら柔軟に可能な方法を模索し、研究を遂行したい。
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Causes of Carryover |
今年度末に支払予定のテープ起こし作業費の支払いが、コロナウイルス感染拡大防止のため、未支払いになっている。来年度は2回海外ヒアリングのため出張する予定で、海外調査旅費の支払いに使用する。
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Research Products
(1 results)