2022 Fiscal Year Research-status Report
OECD社会支出データベースの分析による福祉財政の長期的変動に関する国際比較研究
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19K02259
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Research Institution | Nishikyushu University |
Principal Investigator |
坂田 周一 西九州大学, 健康福祉学部, 教授 (20133473)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 社会支出 / 福祉財政 / 経済成長 / 高度成長期 / 石油危機対応 |
Outline of Annual Research Achievements |
OECD加盟国の社会支出の時系列変化について、1960年以降の高度成長期と1975年以降の石油危機対応期に分けて検討した。実質社会支出のGDP比が1960年に最も高い値を示したのは西ドイツの20.5%である。日本は8.0%であり主要7カ国の中で最も低い値であった。それ以降は、どの国も社会支出の伸びが見られ1981年には、日本は2.2 倍となる17.5%へと上昇した。もともと高水準であった西ドイツは 1.5 倍の 31.5%となっている。この変化について、経済成長率との関連性を把握するため、実質社会支出の所得弾力性、すなわち、実質 GDP成長率に対する実質社会支出成長率の比率を算出したところ、高度成長期平均が1.9であるのに対して石油危機対応期平均は2.3へと上昇した。このことは、石油危機前よりも危機後に所得弾力性が上昇した国が一定数存在したことを示している。すなわち、フランス(1.6 → 2.2)、ベルギー (2.1 → 3.6)、ギリシア(1.2 → 2.7)、ニュージーランド(1.4 → 8.8)、スウェーデン(2.0 → 4.7)、スイス(2.2 → 2.8)など国々である。これらの国では、経済危機の中であっても福祉支出を切り下げなかった、ないし、できなかったと思われる。逆の対応をとった国として、西ドイツ(1.8→0.8)、 オランダ (2.3→0.8)、ノルウェー (2.4 → 1.1)、アメリカ(2.4 → 1.0)、オーストラリア(1.9 → 1.0)などが挙げられる。これらの国では、社会支出を大幅に抑える対応をしたことがわかる。石油危機後の所得弾力性は国別のバラツキが大きく、危機への対応が国により大きく割れていて、経済成長率と社会支出との関連性は一様でないことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究期間中に新型コロナウイルス感染症の世界的蔓延があり、海外渡航が禁止ないし制限されたことにより、海外における研究情報の収集が不可能であったため、当初の研究計画の遂行が遅延する影響があった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間の延長が承認され、また、海外渡航の制限が解除されたことにより、今後は遅延していた研究計画の部分をカバーし、研究の完遂ならびに取りまとめを行うこととしている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症による海外渡航禁止、制限により海外での学会参加等のための旅費を使用することができず次年度使用額が生ずることとなった。 使用計画は下記のとおりとする。 (1) 旅費、学会参加「The 19th Annual Conference of the East Asian Social Policy Research Network」(オーストラリア、シドニー市)航空運賃(25万円)滞在費(8万円)(2) 物品費、情報処理関連機器(8万円)、ドキュメントスキャナー(5万円)。(3) 学会会費、イギリス社会政策学会(1万5000円)、アメリカ社会学会(1万5000円)、日本社会福祉学会(1万円)。(4) その他経費、報告書印刷費(39,259万円)、以上総合計539,259万円
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