2020 Fiscal Year Research-status Report
生活困窮者支援における地域支援モデル構築と地域福祉計画の活用方法開発
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19K02266
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
加川 充浩 島根大学, 学術研究院人間科学系, 准教授 (40379665)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 生活困窮者 / 地域福祉 / インフォーマル資源 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究では、市町村設置の総合相談拠点に配属された社会福祉専門職が、個別支援と地域支援の2つを用いた支援を展開する際の、可能要因と課題を明らかにすることに取り組んだ。 意義としては、次の3つの点に着目したことである。(1)複雑化した困窮者のニーズに対応した支援のあり方、(2)多職種による困難事例解決の方法、(3)インフォーマル支援も取り入れた支援のあり方、の3つである。 調査は、社協職員からのヒアリングによる。被調査者は、総合相談拠点に所属する、地域包括支援センター職員とコミュニティソーシャルワーカー(CSW)である。6カ所でヒアリングを行った。合計、16名から採話を行った。 質問は、大きくは次の3つである。(1)インフォーマルを活用した支援をどう展開したか。(2)総合相談拠点で、地域包括支援センターとCSWの両者はどう役割分担したか。(3)多職種連携をどのような方法で展開したのか。 また、2つの実践事例を取りあげながら、以上の質問に答えてもらうよう依頼した。実践事例には、次の2点が含まれるよう依頼した。(1)住民の力を取り入れた、(2)多職種連携を図った、の2点である。 調査を通じて、次の3点について明らかにすることができた。3つの問いと、それへの回答という形式で記述する。(1)インフォーマル資源を活用した支援はどう行ったか。①専門職が、「住民の発見力」を利用した支援を行うこと。②要援護者の生活全体を捉えた支援を実施すること。伴走型支援も含む。(2)総合相談拠点の意義と機能は何か。①総合相談拠点という「場」を市町村に設置する重要性である。②CSWの役割を明確化すること。(3)総合相談拠点実施される多職種連携の方法はどのようなものか。①多職種連携で対応すべき支援対象(多問題家族事例など)を明確にすること。②多職種連携のための具体的方法を活用すること、である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査ができ、論文の原稿も80%程度執筆できた。2021年度当初に、地域福祉学会で報告を行う準備もできた。そのため、研究は概ね順調に進展していると評価した。 ただし、新型コロナウイルス感染症拡大のため、学会報告が不可能となった。また、調査で島根県外に出ることができなくなった。そのため、旅費の執行ができず、その分の予算を繰り越している。
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Strategy for Future Research Activity |
次の2つの視点から研究を推進する。 第一は、生活困窮者を支援するインフォーマル資源のあり方について調査を行う。特に、住民組織、および民生児童委員に焦点を当てる。困窮者を支援する地域づくりのためには、住民組織の働きが重要になる。しかし、専門職が地域住民を支援のための資源と見なすだけでは、地域社会の理解が得られない。地域住民が、主体的に活動を開始するのは、どのような条件下であるか。これについて考えたい。そのためには、社協のコミュニティワーカーが、地域にどのような働きかけをするのかを考察する。また、地域づくりの「受け皿」とも言える住民組織が、主体的に活動する要員は何であるかを探りたい。 さらに、民生児童委員は、地域における困窮者支援のキーパーソンと考えてよい。民生児童委員の困窮者支援の実態、および民生児童委員活動を支援する事務局組織のあり方にも着目する。 第二は、地域福祉計画に基づいた専門職支援が、どうすれば生活困窮者支援に有効に機能するか、追究する。この約5年の地域福祉計画を見ても、総合相談拠点を計画で構想する自治体が増加している。そこでは、困難事例を解決するための専門職支援が期待されている。特に、対象者を限定しない支援、住民と専門職が協働する支援、などが求められている。こうした、市町村が独自に構築する体制に着目する。 直近の政策動向も踏まえた研究にしたい。2021年度からは社会福祉法が改正され、「重層的支援体制整備事業」がいくつかの市町村で始まる。島根県では、3つの市町が取り組む。これは、他の都道府県と比較しても、数が多い。これら市町村で、どのような地域福祉の体制整備を行い、かつ要援護者を支援しているのか。その実態を明らかにする。ただし、近眼的な政策研究に陥らないよう留意する。そのため、多職種連携、地域を基盤としたソーシャルワークといった、地域福祉課題を見据えた研究とする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大により、県外移動が不可となった。そのため、旅費が執行できなくなった。旅費分を2021年度に繰り越した。
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