2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K02268
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
新井 利民 立正大学, 社会福祉学部, 准教授 (00336497)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 災害福祉 / 避難行動要支援者 / 福祉避難所 / 防災訓練 / ガバナンス |
Outline of Annual Research Achievements |
自治体災害福祉政策がいかに採用され維持されているのかについて、2つの自治体の避難行動要支援者支援制度について資料とインタビューにより事例検討を行った。避難行動要支援者名簿に書かれた情報を、地域住民等に提供することへの「不同意者」を把握し、意思表示がないものは「推定同意者」とみなす「逆手あげ方式」について取り上げた。「逆手あげ方式」を採用している自治体は少数だが、2つの自治体の事例を見ると、前提として様々な地域福祉活動と災害時の支援活動とをリンクさせて地域づくりを行ってきた到達点とみることができる。災害時に援助が必要であると自ら認める者(名簿情報の提供に同意する者)とともに、なかなか意思表示を行うことができない者(推定同意者)もしっかりと捕捉すること、不同意者のリストも作っておくことは、多層的な災害時の支援を行うためには必要なことであろう。またこれは平時からの福祉的課題(世帯の孤立化・孤独化)へもアプローチする契機にもなりえる。 一方この逆手あげ方式が兵庫県や千葉県に偏在していることは注目に値する。同一県の各市の状況を見ると、県庁所在地であり政令指定都市の神戸市、千葉市も同方式をとっている。そして兵庫県では三田市は神戸市の状況を鑑みて条例を制定したことが資料からも読み取れ、加東市は三田市の条例を踏まえて制度化したという。このように、近隣の大規模自治体のシステムが広まっていく「制度的同型化」が観察されたが、同型化を促進する要因としては、普段からの小地域活動等が活発だったことも要因と推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
より多くの事例検討を行うため、全国各地の自治体に訪問し資料収集とインタビュー調査を行う予定であったが、新型コロナウィルス感染症蔓延に伴う移動制限のため、実施することができなかった。また、同感染症蔓延に伴ってオンライン授業の準備など、教育活動へのエフォートが高まり、所期に予定していたような研究時間を割くことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
総務省が令和3年3月30日に発表した「避難行動要支援者名簿の作成等に係る取組状況の調査結果」をもとに、これまでの調査との比較検討を行い、取り組み状況が進んでいる自治体と進捗が思わしくない自治体をピックアップし、その要因について、社会経済的要因、政治行政的要因を明らかにするべく、比較検討を行っていく。なお、研究はだいぶ遅延しているため、研究期間の延長を予定している。
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Causes of Carryover |
研究活動の遅延による。新型コロナウイルス感染症の状況を勘案しながら、訪問調査やサーベイ調査の時期を十分に見計らい、適切に執行できるように努める。
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Research Products
(2 results)