2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K02268
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
新井 利民 立正大学, 社会福祉学部, 教授 (00336497)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 災害福祉 / 避難行動要支援者 / 個別避難計画 / ガバナンス |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度にから最終年度にかけて行った東京都内の全自治体を対象に、避難行動要支援者名簿や個別避難計画の策定や活用・推進状況に関して調査について、集計・分析を行った。調査実施期間は2023年2月から6月であり、合計37市区町村より回答を得た(回答率59.7%)。その結果、①避難行動要支援者名簿掲載者のうち、個別避難計画策定の優先度が高い対象者を把握しているのは、5割弱であった。②個別避難計画策定支援者に対する報酬や謝礼については、5割が支給又は支給予定であった。③個別避難計画策定済のうち、避難支援者がすべて決まっている自治体は約3割に過ぎなかった。④個別避難計画にもとづく避難訓練を実施している自治体・実施予定の自治体は約2割に過ぎなかった。⑤名簿作成・個別避難計画策定のためのとり組み事項として実施中・実施予定のものは、関係機関との推進組織の設置、自立支援協議会での議論、避難行動要支援者への説明会などは2割前後にとどまった。⑥名簿作成や個別避難計画策定に対して、民間事業所、自主防災組織や民生委員、地域住民や地域住民等との連携・参画・協力については、7~8割の自治体において課題があると認識していた。⑦名簿や個別避難計画の作成・更新作業に関わる不足点としては、事業を進めるための人材、事業を進めるためのノウハウや知識が8割以上であったのに対し、事業を進めるための財源が7割弱に留まった。 避難行動要支援者名簿の活用と個別避難計画策定の施策進展度合いは、自治体規模や財政力だけではなく、障害者運動の歴史、災害経験や災害危機認識の要因などに規定されている。障害当事者や地域住民を巻き込んで取組を進めているところは進展しているが、逆に言えば住民とのかかわり方やリソースに課題があると進展が困難となる。災害福祉のノウハウがいかに自治体に蓄積され、あるいは伝播するのかについて、今後も研究を進めていきたい。
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