2022 Fiscal Year Research-status Report
住民福祉活動の拠点確保における空き家活用方策に関する研究
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19K02269
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Research Institution | Kanagawa University of Human Services |
Principal Investigator |
中村 美安子 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 教授 (30363857)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大原 一興 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 教授 (10194268)
藤岡 泰寛 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 准教授 (80322098)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 住民福祉活動 / 活動拠点 / 空き家活用 / 成年後見人 / 空き家情報 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究に先だつ<JSPS科研費JP16K04152>において得た研究成果である「生活支援活動に取り組む住民福祉活動団体が活用しうる空き家の必須条件」の普遍性を確認するため、2021年度は2019年度調査で「日常的な生活支援活動の実態がある」と回答した7社協のうち、 JSPS科研費JP16K0415で調査済みを除く6社協に対し、現地調査のプレ調査として電話によるヒアリング調査を実施した。 その結果、7社協全てで、概ね<JSPS科研費JP16K04152>の研究成果を裏付ける空間確保が行われていることを確認した。なお、店舗活用のみが4社協、店舗と民家活用の地区を有しているのは2社協であり、空き家活動拠点を有して生活支援活動の実態があるのは、4社協11地区あった。 今年度は、この4社協のうち市内24地区全てに活動拠点があり、そのうち7地区が空き家活用拠点を確保し生活支援活動を実施している船橋市社会福祉協議会に訪問し、詳細をヒアリングした。その結果、①家賃負担が生じる場合には、(当然ながら)市等の補助があることが有効である。②活動拠点に事務職員(非常勤)と生活支援コーディネーター(非常勤)を配置していることが住民の活動しやすさに寄与している。③市町村社協や住民福祉活動者が空き家活用に積極的になれないのは、「いつまでいられるかの不安(確保の不安定さ、次の物件確保の難しさ)」「鍵の開け閉めの負担」「維持管理の負担」があることを把握した。<JSPS科研費JP16K04152>で調査した茅ヶ崎市社協では、「いつまでいられるかの不安定要素」は同様であったが、「鍵の開け閉め」は使用者全員が鍵を保有することで負担を回避しており、維持管理の負担もそれほど感じないという結果だった。「鍵の開け閉め」「維持管理負担」「空き家情報の入手環境整備」が、活動拠点確保における空き家活用普及の課題として確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
住民の福祉活動拠点への現地調査を予定したが、新型コロナ感染症の影響で活動が休止している地区も多くまた、住民への配慮もあり実施できなかった。市社協1か所のヒアリングを実施しそのエリア内7か所の空き家活動拠点に関する実態把握はすることができたが、その他の予定の多くを実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の調査により把握した、住民福祉活動者やそれを支援する専門職などに空き家活用を躊躇させる要因(①確保の不安定さ、②次の物件確保の難しさ。③鍵の開け閉めの負担、④維持管理の負担)について実態および意識を把握するための調査を実施し、空き家情報の入手環境整備と空き家活用の推進について検討する。 また、これまでの調査で、空き家情報の集積場所の一つである成年後見人が、空き家を貸す場合に必要な要件だとするものは、一般的な賃貸と共通の「身元が確実」「明け渡し要請に対する速やかな退去」であることが明らかとなっている。社協や行政が支援しているような住民福祉活動団体は、一般の賃貸住宅借り受け者よりも身元はむしろ確実であり、居住権も発生しないことからリスクの低い借り受け者である。しかしそのことについての社会的な理解はほとんどないのが現状である。 2023年度においては、住民福祉活動への貸し出しが、地域貢献の意義を有するのみならず、所有者にとっても低リスクかつ安価に物件管理ができ、場合によっては休眠資源を有効活用できる、メリットのある取り組みであることを明らかにするとともに、それを関係者に周知するような手引となる報告書を作成する。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の影響により、予定していた住民福祉活動拠点への現地調査を実施することができず、また、その成果をまとめた手引の作成にも至らなかったため次年度使用額が生じた。2023年度は、現地調査を実施し、あわせて住民福祉活動に貸し出すことに関する所有者の意識把握、住民福祉活動に貸し出すメリットを伝達する内容を含む空き家活用拠点確保に関する手引となる報告書を作成する。
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