2020 Fiscal Year Research-status Report
被占領期における方面委員・民生委員活動の実際についての研究
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19K02284
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Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
小笠原 慶彰 神戸女子大学, 健康福祉学部, 教授 (00204058)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 占領期社会福祉 / 方面委員 / 民生委員 |
Outline of Annual Research Achievements |
旧生活保護法の制定と時を同じくして、救済行政の補助にあたっていた方面委員を衣替えするために昭和21年9月13日勅令第426号をもって新たに民生委員令が制定され、同10月1日より施行された。この時点での民生委員は生活保護実施の補助機関とされていたが、その存在の重要性や勅令を根拠にすることの不適切性もあり、1948(昭和23)年7月29日には民生委員法(法律第98号)が施行された。さらに1949(昭和24)年10月31日付社発第72号社会局長児童局長連名通知「公的保護事務における民生委員(児童委員)の活動範囲について」では、その「公的保護事務取扱要領」において「民生委員は名誉職の社会奉仕者たる本質よりみて適当と思われる範囲において有給吏員に協力することを明確にするものである」とされ、生活保護実施の協力機関であることが明確にされた。ところで旧法下の生活保護行政の現場、つまり主として民生委員令下で民生委員が補助機関とされていた時期における事務所は、戦時下において旧方面事務所等から転用されていた町内会事務所等が民生事務所として生活保護申請の相談窓口に利用されていたらしい。さらに、一時はGHQの意向も踏まえて民生委員を有給吏員とするような考えもあったようだが、それは実現していない。しかし生活保護行政の実務が複雑化するにつれて、民生委員による対応に課題が生じただけではなく、また実際に実務担当が困難ともなって、民生事務所の有給職員配置が強化されていったようだ。 第2年度の研究実績としては、以上のことを先行研究によって再度明確化し、今後の研究方針に齟齬がないことを改めて確認したことである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
第1年度には、文献研究で確認できることは、ほぼ確認し、学会発表の機会を得て成果を公表した。 しかし第1年度および第2年度に予定していた岐阜県における現地調査がCOVID-19のために全く実施できなかった。そのため研究がほとんど進捗せず、やむなく文献研究で確認できた成果を再度明確化する作業を行った。 そのため研究計画からすれば、ほとんど進展がなかったことが遅れている理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の最終年度である第3年度も、少なくともその前半はCOVID-19の影響によって岐阜県における現地調査の実施は困難であると予想される。 そのため第3年度後半に現地調査を実施する可能性を残しながらも、被占領期及び福祉六法体制期の生活保護行政に関して、当時の行政関係者に対するインタビューの録音記録を文字化し、本研究を進めることを考えている。その録音記録は所属する大阪社会福祉史研究会の定例会の場での証言として行われたものである。しかしまだ文字化されて発表されていたいため、それを研究資料として利用できるようにすることで現地調査ができなかった場合の不足を補うようにしていきたいと考えている。 それによって最終年度である第3年度の研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
研究の第1年度も第2年度もCOVID-19の影響によって、岐阜県における現地調査が不可能となり、旅費支出がなかったため次年度使用額が生じた。 最終年度である第3年度の現地調査を年度後半に実施する可能性を視野に入れつつ、すでにある証言記録等のデータ化等に切り替えて、次年度使用額を使用していく計画である。 さらに最終年度にも現地調査が実施できない場合には、可能な限り文献研究による補足の可能性を高めるため、最新の関連文献の購入に充てる予定である。
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