2021 Fiscal Year Research-status Report
Toward advancing theoretical perspectives of hybrid organizations: Insights from faith-based social enterprises in the developing countries
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19K02285
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Research Institution | Ritsumeikan Asia Pacific University |
Principal Investigator |
木村 力央 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 教授 (50517034)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森田 哲也 東京基督教大学, 神学部, 准教授 (30747390)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 社会的企業 / カンボジア / エチオピア / ハイブリッド組織 / 制度ロジック / 批判的実在論 / 宗教性 / 開発援助 |
Outline of Annual Research Achievements |
カンボジアの調査に関しては、キリスト教に基盤を置く12のカンボジアの社会的企業に関する論文を学術雑誌Religionsに投稿し、出版された。論文は、それらの社会的企業のハイブリッド組織の形態の類型と、そのような組織形態に伴う緊張関係を特定した。また、どのように、そしてなぜ社会的起業家がそのような組織形態を考案し、維持したかを明らかにした。さらに、批判的実在論に基づいたグランデッド・セオリーに関する研究手法論文を執筆し、学術雑誌に投稿した。
エチオピアの調査に関しては、宗教的基盤を持つエチオピアの社会的起業家の中から、低学費私立学校(Low-fee private school)を個人事業者として創設・運営する起業家に着目し、彼らが掲げる宗教的使命の位置づけ、その実現に向けての戦略や課題について研究を進めている。公立学校における教育内容の質の低下や、生徒や教師の非道徳的な文化の浸透(非行、ネット依存、ドラッグ等)を憂慮し、私立学校への需要がエチオピアで急増している背景から、宗教が異なっても(例:イスラム教徒)キリスト教信仰を基盤とした教育機関へ子弟が送られる事態が発生している。しかし、そのような急速な需要に応える目的で学校の規模拡大が迫られ、創設当初の宗教的使命や価値を同時に体現して行くことの困難が浮き彫りになった。特に、宗教的価値を共有できる教師の確保が最大の課題であり、組織運営上で人的資源管理(human resource management)のスキル向上と共に、創設者のリーダーシップに依存しない経営体制の確立が急務であることが見えてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当該年度の主な計画には、宗教的信念や背景を持つ組織をそれぞれのフィールドで現地調査することが含まれていた。しかし、新型コロナウイルス感染症が収束せず、受け入れ国での体制が整わないことと、現時点での海外渡航は原則として自粛となっていることを受け、現地調査を取りやめたため。
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Strategy for Future Research Activity |
カンボジアの調査に関しては、類型化の論文を学会等で発表する予定。研究手法論文に関しては、査読後、加筆・修正する予定。この二つの研究により、社会的企業を取り巻く制度ロジックをさらに深く掘り下げる必要があることが明らかになった。市場競争の市場ロジックや、宗教やNGOに埋め込まれた社会福祉ロジックなどに関して、批判的実在論の視点からデータをさらに深く分析していく必要がある。
エチオピアでの研究に関しては、発展途上国における低学費私立学校(Low-fee private school)に焦点を当てた調査研究の多くは、ジェンダーの公平性(女子教育の提供)や最貧世帯への貢献度等に着目し、また組織の使命実現におけるジレンマについては「経済的利益か、それとも社会的貢献か」という二元論に限定した議論に集中する傾向があることが判明している。しかし、特に発展途上国における社会的起業家の中でも、宗教的基盤をもった組織が抱える課題を、そのような二元論的な視点で捉えることには限界がある。むしろ、起業家達の活動に非協力的な地元政府や、官僚的な行政、そして同じ宗教的価値や利害関係を共有する主体(教会、教団、信徒)とも、良好な関係性を継続的に構築しなければならない複雑な背景をも考慮することが不可欠である。また、起業家達の宗教的使命の遂行を実証的に測定することが困難であるという特殊な状況があることから、宗教的価値や信仰の形成に深く影響する社会的・文化的な構造や仕組みを読み解く必要があり、そのために有効な批判的実在論的な観点の応用が不可欠であることがこれまでの研究によって明らかになってきた。よって、この研究では、継続して批判的実在論の援用を研究の理論的軸に据えながら、本研究の主題である途上国における宗教を基盤とするハイブリッド組織の理論構築をさらに進めて行く計画である。
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Causes of Carryover |
理由:当該年度において計画していた現地調査が新型コロナウイルス感染症の影響で中止となったため。
使用計画:中止になった現地調査を2022年度中に実施し、収集したデータを基に研究を進めたい。
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Research Products
(2 results)