2022 Fiscal Year Research-status Report
男性の養育主体としてのエンパワーメントを促進する家庭科のカリキュラムに関する研究
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19K02292
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
佐藤 裕紀子 茨城大学, 教育学部, 教授 (00272740)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 男性 / 育児休業 / エンパワメント / 家庭科 / 養育主体 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、前年度の予備調査の結果をもとに、育児への参画を促すための「子育てハンドブック」を作成し、これを用いて男子学生の「育児」(子どもの保育・世話、子どもとの遊び・子どもの相手、子育てにともなう家事労働、を含む)に対する関与意識の変化を検証した。今日の一定年齢以下の男性は、男女共通必修教科としての家庭科を学習した経験があることから、本研究は育児には幅広い活動が含まれることを示すことにより男性の育児に対する関与意識は高まるのではないかという仮説に基づき行った 研究方法は、98名の男子学生を対象に「育児」に必要な家庭科の既習事項の理解状況を調査し、その結果をふまえて「子育てハンドブック」を作成した。その後、男子学生18名に対しハンドブックを配布し、閲覧前後での「育児」に対する関与意識を調査した。分析方法は、夫婦の家事や育児の役割分担のあり方の希望と育児休業取得の意向について5件法で尋ね、ハンドブック閲覧前後での平均値の比較を行った。 分析の結果、「育児休業は夫婦どちらも取得したい」の事後の得点のみ有意に高いことが確認された[t(17)=-3.010,p.<01]。家事と育児の担当については有意差が認められなかった。 家事や育児に対する関与意識に有意差がなかった原因は、対象者はそもそも家事や育児への関与意識が高かったためであると考えられる。また彼らは家庭科の特に家事に関わる内容についての理解の程度も高かった。従って、本研究の結果からは、家事や育児への関与意識が高く、なおかつ家庭科の特に家事に関わる内容について十分理解しているならば、男性が家庭科の既習事項を振り返る機会を持つことや、子育てには子どもや親の生活を支える多様な活動が含まれることを知ることは、夫婦で協力して「育児」を行うというだけにとどまらず、育児休業取得への意欲を高めることに一定の効果があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和4年度は、これまでに実施した聞き取り調査の結果を公表することを予定していたが、コロナ禍が予想以上に長期化し調査が思うように進まなかったため、令和3年度に計画を見直し、当初はインタビュー調査の後に実施する予定であった教育方策としての教材として、家庭科版「子育てハンドブック」の作成し、その有効性の検証を行った。そのため、聞き取り調査の整理と公表は次年度に持ち越されることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、これまでに行った聞き取り調査の結果を分析し、論文として公表する。また、令和4年度に行った教材作成とその効果の検証結果をふまえ、家庭科教育につなげる取組について検討する。
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Causes of Carryover |
令和5年度に使用額が生じた理由は、これまで先送りにしてきたインタビュー調査の結果を整理し、論文として公表する必要があるためである。 インタビュー調査の文字起こし代、論文作成のための消耗品費、論文投稿料、抜き刷り代、などに充てる計画である。
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