2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K02308
|
Research Institution | Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University |
Principal Investigator |
野村 陽子 沖縄科学技術大学院大学, サイエンステクノロジーグループ, サイエンス・テクノロシ゛ー・アソシエイト (90302794)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 芭蕉布 / イトバショウ / 繊維 / 簡易採繊 / 顕微鏡観察 / 庶民 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、科学的見地から芭蕉布の伝統的な方法を解析し、より効率の良い製造方法(特に採繊)を確立し、生産に役立てることを目的とした。 まず、原材料植物のイトバショウについて調査を進め、イトバショウ自体の不足ではなく、特殊な剪定を要する、伝統工芸用に栽培された植物体が少ないことを確認した。調査の際、COVID19流行により各自治体での植物採取ができず、検討中であった、植物から抽出された遺伝子の違いからではなく、外観(葉柄の開閉)からイトバショウを判別した。 採繊方法の解析には、市町村誌に記載された芭蕉布作製方法の精査(2019年度)と、工房での現地調査を計画した。しかし、COVID19流行により後者は断念し、替わりに芭蕉布作製に詳しい所属大学職員の協力を得た。市町村誌調査から、貢納布の他に、庶民が自身の衣類としても芭蕉布を生産していたことに着目し、職人の経験に頼らない、簡易採繊を確立した(2020年度)。この採繊の詳細と、得られた繊維の微細形状の特性が専門誌に掲載された(家政誌 2021年度)。 2022年度(最終年度)は、伝統工芸に使われない過度に成長したイトバショウからの簡易採繊を試み、その繊維形状が若い植物体の繊維より伝統工芸の繊維に近いことを明らかにした(国際会議ICCT2022 ポスター賞受賞)。今日では利用されない状態のイトバショウから簡単に繊維が得られたことは、芭蕉布生産の改善の一助になると考えられる。さらに、実を収穫したシマバナナの偽茎から簡易採繊し、現在、得られた繊維の特性を調べている(2023年度日本家政学会大会にて発表予定)。 また本研究は、芭蕉布の独特な仕上げ加工による効果の検証(日本女子大学紀要 2020年度)や、庶民の芭蕉布について服飾史における議論(国際会議ICDHS13 2022年度)に発展し、新たな研究への展開も見込まれた。
|