2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K02314
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
南 道子 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (70272432)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫛山 暁史 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (30435820)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 食物繊維 / 健康寿命 / アンケート調査 / 動物実験 / 血液生化学分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国では食の欧米化による生活習慣病の増加がとりあげられて久しいが、申請者らは、脂質の摂取増加以外にも食物繊維摂取減少も大きな原因の一つではないかと考えた。国民栄養調査では、20代では推奨量の350g を大きく割り込んで約232gである。 そこで、まずこれらの実態調査をして摂取量減少の理由等を明らかにし、実験により食物繊維の有用性を検証することとした。食物繊維の生理的な役割として、糖質・脂質の腸管での吸収遅延や吸収阻害により血中での脂質濃度の減少や血糖値の上昇遅延傾向がある事が知られている。また、食物繊維摂取の種類や量により腸内細菌叢の変化をもたらすという知見は数十年前から報告されている。近年、若年層を中心に摂取量が徐々に減少している食物繊維であるが、それが原因で生活習慣病と名前がつく手前の未病状態にいるものは多のではないかと考えた。 最近の若年層では結婚年齢の遅延により、大学進学・就職からの単身暮らしが20年近くなり、栄養素量の失調した状態で過ごす期間が長くなっている。国民栄養調査の調査方法を行う事に前向きな国民の実態を示しており、興味のない人間の実態は結果と乖離していると考える。 今回、野菜摂取の実態調査は、20代前半の若者を対象に自宅生や下宿生の区別や、野菜摂取の状況、野菜摂取に関する必要性の認識や、基本的な知識、摂取を規定している因子などについてアンケート調査を行った。個人が特定されないように十分に配慮したことや、答えたくない場合は答えなくてよいこと、成績には関係ないことを説明し、調査する。回収した質問紙の管理は鍵のかかる棚にしまい、分析後は廃棄するなどの倫理審査(受付番号403)に適合するようにした。解析は、二群間比較か多変量解析により検討を行い、国民栄養調査の結果との比較を行い、国民栄養調査に参加できない層の実態を明らかにし、総括したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度としては、まず若年層の野菜摂取状況を調べる目的で、アンケート調査を行なった。調査は東京学芸大学の学生2~4年生、男女合計計231名を対象に質問紙調査を行なった。 食事調査については自記式の24時間思い出し法を用い、料理名、食品名、食品の重さを記入してもらい、集めたデータはExcelへ入力、また食事内容はこのような形に栄養計算ソフトへ入力し、一日の摂取栄養素を算出した。 居住形態においてその他と回答した学生と未記入だった学生計7名を除いた224名を実家生、下宿生、運動あり、運動なしの4つの群に分類しています。専攻は文系、理系、体育会系、芸術系と多岐に渡っていて様々な志向の学生を対象にした。 朝食欠食をしている学生が全国平均より多く、3割以上であり、特にそれらの学生の牛乳摂取が少なく、基準値を大きく下回っていた。また、当然、1日に摂取する目標の食事バランスガイドのSV数も3割ほど少なかったが、タンパク質の摂取量は満たしていた。たんぱく質はどの群も基準範囲内だったが、脂質は運動あり群で摂取が多く、炭水化物は下宿運動なしを除いて基準よりも摂取が少ないという結果が出た。また、運動強度の高い学生の栄養摂取量の充足率が高く、脂質は飽和脂肪酸摂取が高い結果となった。 魚の摂取をしない学生が半分近くを占めた。また、食事形態はほとんどが洋食やエスニック料理が多く、1週間の中で毎日和食の調理品を摂取している学生は自宅生でもほとんどないという結果であった。さらに、ご飯・和風の汁物・焼き魚や大豆製品・和風の副菜という1食が全て和食の惣菜で整えた食事をしている学生は皆無と言って良く、洋食が若年層では食事の基本となっている事がわかった。これらのことから、若年層においては食の欧米化が加速しており、脂質過多・炭水化物摂取不足、副菜が少ないためにビタミンやミネラルが恒常的に不足している状況が見て取れた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、他の期間で動物実験を行う予定であった。しかし、3月からのコロナウィルスの蔓延により、どの機関でも研究が中断している現状である。今年度は、相手先の動物実験施設の状況次第で、いつ研究が再開されるか不明である上、その研究機関で行うべき動物実験が優先されるので、年度末に動物飼育と解剖を行えれば良いと考えている。 昨年度に行なったアンケート結果から、大学生の食事の傾向が示されたので、それを元に餌を作りマウスの飼育を行う。今までの研究では理想的な餌の組成を一部変更して、通常の餌と比較し、その食品独自の成分が持つ機能性を検討していたが、現代の日本の若い人の食生活,未病状態や健康長寿を考えるには、現代の日本が直面している食の欧米化と、知識不足から様々な栄養素の不足の総合的な影響を考える事が大事かと思われる。現在、栄養計算ソフトを用い、実際の若年層の食生活について食事摂取基準に比べてどの程度の量を摂取しているか検討を行っている。全ての結果が出揃ったところで餌の作成を行う。 現時点では、大豆油を洋食を主に摂取しているので、飽和脂肪酸の多いラードかヘッドにする。タンパク質も和食の代表である大豆タンパクでなく、カゼインを用いる予定であり、炭水化物はやや減少させる。減少率については現在検討している。これをコントロール群として、それに食物繊維を添加した飼料を用いて、腸内環境改善により、動物性脂質の摂取が多い状況で体内の酸化状態をどれだけ軽減できるか、酸化ストレスの程度をキットにて検討する。また、炎症系、免疫系に関与しているサイトカインであるIL-6の遺伝子を中心にPCRを行うとともに、タンパク質レベルでも発現を確認したい。緊急事態宣言が終了したら、共同研究者と動物実験実施に向けた指針をたてる予定である。
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Causes of Carryover |
昨年度は、大学内の主任業を3種類と全国組織の庶務主任を担当しており、大会運営や会議の運営を行なったため、研究時間が大幅に削られてしまった。また、動物実験を行う共同研究者が研究所から大学へ教授として転出し、昨年度は研究室のセットアップを行なったため、動物実験をすることができなかった。研究室の学生も、資格取得のための授業時間確保で研究に携われる時間が限られており、研究室内のマンパワーも不足していた。 そこで、動物実験ではなく計画していたアンケート調査と解析を中心に行い、更に他の食物繊維の飼育条件で行なった実験でストックした肝臓の臓器でqPCRを行なって、次年度の動物実験で行うPCRの予備的な情報収集をした。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Possible involvement of normalized Pin1 expression level and AMPK activation in the molecular mechanisms underlying renal protective effects of SGLT2 inhibitors in mice:2019
Author(s)
Inoue MK, Matsunaga Y, Nakatsu Y, Yamamotoya T, Ueda K, Kushiyama A, Sakoda H, Fujishiro M, Ono H, Iwashita Mf Sano T, Nishimura F,Morii K, Sasaki K, Masaki T and Asano T
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Journal Title
Diabetol Metab Syndr,
Volume: 57
Pages: 1-11
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Xanthine Oxidase Inhibitor Febuxostat Exerts an Anti-Inflammatory Action and Protects against Diabetic Nephropathy Development in KK-Ay Obese Diabetic Mice:2019
Author(s)
Mizuno Y, Yamamotoya T, Nakatsu Y, Ueda K, Matsunaga Y, Inoue MK, Sakoda H, Fujishiro M, Ono H, Kikuchi T, Takahashi M, Morii K, Sasaki Kg Masaki T, Asano T and Kushiyama A.
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Journal Title
Int J Mol Sci,
Volume: 20
Pages: 1-12
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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