2019 Fiscal Year Research-status Report
ライフステージ毎に必要なリスクマネジメントとESDを学ぶ住教育体制の構築
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19K02316
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
飯野 由香利 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (40212477)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 裕子 静岡大学, 教育学部, 教授 (20136154)
倉渕 隆 東京理科大学, 工学部建築学科, 教授 (70178094)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 実験型ジグソー法 / 原理原則 / 省エネ / 家電住教育 / 住教育 / 高齢者 / 熱中症 / ヒートショック |
Outline of Annual Research Achievements |
学校教育期の研究として、新潟市立A小学校の5年生を対象に実験型ジグソー法の授業を行った。1時間目のエキスパート活動時において実験を行い、各環境の原理原則を、夏期と冬期の熱環境での温冷感を体感で、太陽光の室内入射の光環境を可視化で、換気での気流環境を可視化で学んだ。2時間目のジグソー法活動では相互の環境の原理原則を説明し合って学びを深め、3時間目のクロストークではクラス内で快適で省エネな住生活上の工夫点を共有した。この結果、科学的な観点から室内環境を捉え、住生活を多種多様な環境の観点から把握することができた。 成人教育期の研究では、大学生を対象にアンケート調査を行って生活上の省エネの実態や問題点を明らかにした。省エネ対策として電気・水道代を節約したいという傾向があり、省エネをしない要因として面倒であることなどが挙げられた。この知見を踏まえて、各家電や住設備の省エネな使い方や購入時の選択指標、及び入浴時の水道の節約に繋がる簡易的にできる省エネ方法を示す冊子を作成し、大学生に読んでもらった結果、役に立つという回答を得た。 高齢者教育期での研究では、県営のB住宅において夏期と冬期に全住民65世帯を対象にアンケート調査を行った結果、夏期の暑さや冬期における浴室の寒さの問題の指摘から熱中症やヒートショックの危険性があることを確認した。さらに、夏期と冬期に高齢者6世帯の3室と外部、及び冬期には脱衣室と浴室を追加して温湿度を測定し、夏期には熱中症対策に繋がる教育を2回行い、冬期にはヒートショック対策となる浴室壁面全体を断熱材で覆い冷放射の影響を緩和する実験を行った。その結果、WBGT計や冊子を用いた教育により熱中症対策に繋がる生活に変更した世帯があり、断熱材による冷放射の緩和効果を確認した。これらの知見を踏まえて、県営C住宅の高齢者28人を対象に熱中症とヒートショック対策の住教育を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度予定であった3つの教育期での研究は、順調に推進することができ、各々において研究成果が出た。実験型ジグソー法の授業については論文としてまとめ、日本家庭科教育学会投稿した。他の教育期での研究成果を学部紀要などにまとめる予定である。 ・実験型ジグソー授業は前年度の2018年度に試行的に1回行っていたことから、その授業をPDCAサイクルでのP(Plan:授業構想)とD(Do:授業実践)に位置付け、科研での2019年度の授業では、C(Check:問題点の検討)とP(Plan:授業の再構想)、及びA(Action:改善授業の実践)を行うことができた。授業を通して、太陽光の利用や通風・換気による自然エネルギーの活用に気づき、夏期の日射遮蔽方法や冬期の断熱方法を生活に取り入れようとする姿勢が見られた。 ・教員養成学部の講義において、大学生2~4年生を対象にアンケート調査を実施し、自身の省エネ行動を振り返ってもらい、その実態や対策を冊子を用いて熟知してもらうことにより日常生活で実践することに繋げることができた。 ・これまでの研究において、何度か調査にご協力いただいている県営住宅に再度調査の依頼をし、2019年度の調査においても協力を得ることができた。高齢者の生活において住環境での問題となる夏期の熱中症問題や冬期のヒートショックの対策方法を教示することにより対策を取れば改善できることを検証し、調査結果や本教育方法を踏まえて、他の県営住宅の高齢者に住教育を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
学校教育期の研究においては、2019年度に小学生を対象にしたことから、2020年度には中学生を対象とした鳥瞰図を用いた知識構成型ジグソー法授業を実践する予定である。本研究を実践していただける1年生(5クラス、約160人)と家庭科教員は決まっている。新型コロナウイルスの感染防止を考慮して、授業実践は年度末に行う予定である。本授業は、各部屋の特性をA:家族と共に住まう、B:快適で健康な住まい方、C:日常生活での安全性、D:防災(地震、火災)の観点から学習し、家族一人ひとりが自分の部屋や共有空間で過ごしやすくなるための住生活での工夫を協働で学習する。 成人教育期の研究では、2019年度には省エネに関する調査を行って来たが、2020年度にはリスクマネジメントの一環である家電の安全対策に関する教育を行う予定である。最初に、大学生を対象にした講義においてアンケート調査を行い、住環境の問題点と家電の使用方法の実態を把握する。その結果を踏まえて、住環境の問題に繋がる家電の使用方法と、文献やデータ調査により分かった事故に繋がる家電の誤った使用方法を冊子にまとめ、安全な住生活をすることができる方法の周知啓発を行う。 高齢者教育期の研究では、2019年度に住環境と関連の深い死亡事故に繋がる問題の対策(リスクマネジメント)を教育して来たが、2020年度には高齢者H大学の受講生を対象に、生活上での省エネに関する実態をアンケートにより捉え、家電を含めた省エネな住まい方について大学の講義で教授し、1~2か月後に再度アンケート調査を行って家庭実践における教育の効果を明らかにする。
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Causes of Carryover |
アメリカの研究所での研究推進を予定し、その滞在費や旅費に使用することにしたため。さらに、これまでのいくつかの研究成果を論文投稿費用に充てるため。
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