2019 Fiscal Year Research-status Report
咀嚼・嚥下行動を支配する食品のレオロジーおよびトライボロジー特性に関する研究
Project/Area Number |
19K02321
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
田代 有里 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 講師 (10293094)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 咀嚼 / 嚥下 / レオロジー / テクスチュア |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、ヒトの咀嚼・嚥下行動を支配する食品のレオロジー因子を解明するため、窒息事故が頻発している餅を試料とし、レオロジーパラメータと咀嚼行動との関係を調べた。 うるち米ともち米の配合比の異なる餅を3種類調製して試料とし、テクスチュア・プロファイル・アナリシス(TPA)、応力緩和測定、破断強度測定、引っ張り測定を行った。また、健康な20代の男女20名の協力者が試料を咀嚼嚥下する間の咀嚼回数、咀嚼時間を計測し、嚥下衝動時の食塊から唾液分泌量を計量し、画像解析ソフトにより食塊中の粒子の数と平均断面積を計測した。これらに加え、嚥下衝動に達してからさらに10 回咀嚼し、その食塊中の粒子数、平均断面積も計測した。 TPAの凝集性、弾力性は、もち米のみの試料が他の2種類と比較して有意に高く、値が1より大きかったことから、餅は圧縮により大きな変形を受けても新たに構造を形成する特徴を持つと考えられた。配合比が1:1の試料において、ヤング率、弾性率が大きく、破断に要するエネルギーが小さく、緩和時間が短かったことから、噛んだ瞬間はかたく感じるが、変形を受けやすい構造であると考えられた。食塊中の粒子の平均断面積は、標準偏差が大きかったことから、よく噛み切らずに嚥下している者が認められたが、さらに10回多く咀嚼することにより標準偏差が小さくなり、窒息事故のリスクを低減できることを示した。 TPAの硬さ、ヤング率、弾性率、粘性率は咀嚼行動パラメータと正の相関が認められたことから餅において嚥下衝動に到達するまでの咀嚼回数を決定するレオロジーパラメータであると考えた。一方で、食塊中の粒子サイズの標準偏差が大きかったことから、個別のレオロジーパラメータで嚥下時の食塊の粒子サイズを予測することは限界があり、今後の課題となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度の目標としていた、餅のレオロジーパラメータと咀嚼行動との関連づけができたことから順調に進行していると判断した。なお、計画では動的粘弾性測定を実施し構造の考察までつなげる予定であったが、試料調製や測定条件の検討に時間を要したため、まだ1種類のサンプルのデータしか取得できていない。測定法が確立したので、2020年度で速やかにデータ取得ができると考え、順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は前年度中に完了しなかった餅の動的粘弾性測定に加え、トライボロジー測定を実施する。トライボロジー測定では、人工食塊を調整し、静止摩擦係数測定および動摩擦係数測定を実施する。 これに加え、窒息事故で問題となっているこんにゃくゼリーについて、2019年度と同様な実験を実施し、レオロジーと咀嚼行動との関係を明らかにしていく。 2019年度に得られた研究成果については学会発表していく予定である。
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Causes of Carryover |
餅が様々な物に付着するため、テフロン加工処理を施した実験器具が必要となり購入したが、想定していたより若干安価に購入できたため、残額が生じた。2020年度において、消耗品費として使用する計画である。
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