2021 Fiscal Year Research-status Report
咀嚼・嚥下行動を支配する食品のレオロジーおよびトライボロジー特性に関する研究
Project/Area Number |
19K02321
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
田代 有里 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 講師 (10293094)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | こんにゃく入りゼリー / 咀嚼 / 嚥下 / 静止摩擦係数 / TPA / 応力緩和 / 唾液 / 食塊 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトの咀嚼・嚥下行動を支配する食品側の要因をレオロジーおよびトライボロジーの面から解明するため、2021年度は、主に、こんにゃく入りゼリーを試料とした研究を推進した。これに加え、餅の動摩擦係数測定も実施した。 こんにゃく入りゼリーについては、多糖類の組成比の異なるゼリーを調製し、テクスチュア・プロファイル・アナリシス,応力緩和測定,破断強度測定,静止摩擦係数測定,水分含量測定を行なった。さらに咀嚼行動の観察実験では、協力者20名により、試料を嚥下するまでの咀嚼回数、唾液分泌量、食塊中の粒子数、平均粒子断面積を計測した。 ゼリー表面の静止摩擦係数は、試料間に有意差が認められ、多糖類濃度の低いゼリーが最も低く、窒息の危険性が予想された。一方,ゼリー食塊では試料間に有意差が認められなかったことから,嚥下衝動時の静止摩擦係数が一定の値に到達するまで咀嚼が継続されると考えられた。機器測定パラメータと咀嚼行動との関係は、かたさ、ねばり、付着性、緩和時間、破断に要したエネルギー、ゼリー表面の静止摩擦係数において、咀嚼回数、咀嚼時間、咀嚼速度、唾液量と正の相関、食塊中の粒子数と負の相関傾向がみられた。これらのことから多糖類濃度が高く、弾力性があり、べたつき感のあるゼリーは、よく咀嚼されているが、三次元網目構造が強固に構築されていることから、十分に噛み切られていないことが窒息事故の危険性につながっていると考えられた。一方、多糖類濃度の低いゼリーは表面の潤滑性が高まっていることが、咀嚼を要さない無意識の判断をもたらし、窒息事故の危険性につながっていると考えられた。どちらにおいても、窒息事故防止のためには、意識して十分に咀嚼することで、食塊を噛み切り、かつ唾液を十分に分泌して食塊の摩擦係数が嚥下に適した値に到達させる必要であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は、新型コロナウィルス感染拡大防止措置により、緊急事態宣言期間中ならびにまん延防止措置期間中は、出張を自粛せざるを得ない状況であったため、東京都産業技術研究センターでの動摩擦係数測定ならびに動的粘弾性測定の実施が制限された。 上記の理由により、全体計画の半分程度しか研究を遂行できておらず遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は最終年度を予定しているため、当初に計画していた試料(餅、こんにゃく入りゼリー)の応力緩和測定データおよび動的光散乱測定によるゲル構造解析、および動摩擦係数測定を実施する。そして、2019年度からの研究成果の全体をまとめる計画である。 なお、ゲル構造解析は当初は動的粘弾性測定により実施する計画であったが、新型コロナウィルス感染症拡大の影響により装置の使用に制限があることが予想されたため、他の方法を模索した結果、動的光散乱測定に手法を変更することにした。 なお、動摩擦係数測定についても、所属機関では測定装置を所有しておらず、他機関での実施の必要があるが、新型コロナウィルス感染症拡大状況によっては実施が困難となる可能性がある。実施できない場合には、得られている成果で研究をまとめる。
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Causes of Carryover |
2020年度以降、新型コロナウィルス感染拡大防止措置により、緊急事態宣言期間中ならびにまん延防止措置期間中は、出張を自粛せざるを得ない状況であったため、東京都産業技術研究センターでの動摩擦係数測定ならびに動的粘弾性測定が予定通りには実施できず、十分なデータを取得することができなかった。そのため国内旅費およびその他の経費(装置使用料および実験器具類運搬費)については、当初予定よりもかなり少ない使用額となった。また、物品費等についても研究に遅れが生じているため残額が生じた。 2022年度において、2020年度ならびに2021年度に実施できなかった実験および上記測定のための消耗品費、国内旅費、謝金、その他の経費(装置使用料および実験器具類運搬費)として使用する計画である。なお、今後の国内における新型コロナウィルス感染症拡大の状況により実施できない場合には使用しない。
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