2019 Fiscal Year Research-status Report
弱酸性ポリエステル繊維の抗かゆみ効果がもたらす深い睡眠への評価と寝具への応用
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19K02325
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Research Institution | Matsumoto University |
Principal Investigator |
弘田 量二 松本大学, 大学院 健康科学研究科, 教授 (20448385)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水谷 千代美 大妻女子大学, 家政学部, 教授 (00261058)
梶原 莞爾 信州大学, 繊維学部, リサーチフェロー (10133133)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 化学繊維 / かゆみ / 睡眠の質 / レム睡眠 / ノンレム睡眠 / 弱酸性ポリエステル / 布団内部温度 |
Outline of Annual Research Achievements |
「研究の目的」2019年度では、快適な睡眠がとれるベッド内の温度である31-36℃、湿度50-60%にすばやく達する室内環境や寝具素材について明らかにすること、弱酸性ポリエステル製ナイトウエアが、睡眠の質を改善することを少人数試験で検討することである。 「成果」被験者男性5人女性5人の布団内部温度の測定をおこなった。人工気象室室内温度(10、20、30℃)と寝具素材(羽毛、コットンキルト)の組み合わせのいずれにおいても、快適な睡眠がとれるとされる31℃に到達する時間有意な差は認められなかった。従って、室内温度の影響を受けずに睡眠実験の検討が可能であることが示された。3人の化学繊維に過敏な被験者に対する睡眠実験では、深い睡眠の割合が高いほど不眠度が低い、寝返り回数が多いほど深い睡眠の割合が低い、かゆみ度が高いほど深い睡眠の割合が低いことがわかった。また、就寝前と起床時の皮膚の黄色ブドウ球菌の細菌量を比較したところ、未加工ポリエステルを着用したときの細菌量が非常に多いのに対して、弱酸性ポリエステルを着用したときは細菌の増殖を抑えられていることが分かった。さらに、被験者3人の寝衣によるかゆみ度の回答を比較したところ、全員が弱酸性ポリエステルを着用したときの方がかゆみ度が低かったため、弱酸性ポリエステルを着用したことで細菌の増殖が抑えられ、睡眠中のかゆみが軽減されたことが分かった。脳波計による睡眠の質の計測では、弱酸性ポリエステルによってかゆみが軽減された被験者の脳波は、弱酸性ポリエステル着用時に比べて未加工ポリエステル着用時の方が、レム睡眠の割合が少ない傾向が認められたことから、かゆみが生じている睡眠期間中には、脳の休息が十分に行われていない可能性が考えられた。20年度の課題として、ナイトウエアに過敏の被験者数を増やし、研究のエビデンスレベルを上げることが目標である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
布団内部温度の測定に関しては、精密な室内温度・湿度を制御できる人工気象室を、共同研究者の所属機関から研究計画通りの日程でレンタルすることができたこと、被験者が解析に必要な人数である男女5人ずつ計画内機関でリクルートできたこと、により、次の試験である睡眠の質の評価試験が遅れることなく開始できた(9-10月)。さらに、同一被験者の冬季(2-3月)における睡眠の質評価試験が実施できたことは、臨床試験の再現性を評価ための貴重なデータが取得できた。このように本研究は、当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、睡眠の質の評価のための被験者を夏から秋にかけて15人時実施する計画であった。しかし、交付金額が申請書採択段階の2/3であるため、10人に変更する。また、新型肺炎ウイルスの影響により大掛かりな臨床試験が実施しにくい状況となりつつある。この場合には、11月から試験を開始できるように計画を遅らせる。 19年度から20年度にかけて弱酸性ポリエステル着用時に比べて未加工ポリエステル着用時の方が、眠りが浅い傾向や黄色ブドウ球菌が増えやすい傾向など、弱酸性ポリエステルの優位性を示す評価結果が揃いつつあるので、予算の不足分については、他の外部試験の獲得を目指すなどし、本年度中に科学的なエビデンスを証明できる被験者数の確保と次年度以降の申請につながるエビデンスを確保したい。
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Causes of Carryover |
19年3月に実施した脳波解析の請求(約13万円)が20年度の請求になったこと、研究打ち合わせの旅費が、共同研究者在籍の研究機関で行ったため、その研究分担者の旅費10万円が未執行で、他の研究者は自分の研究費で出張したため、余剰になった。被験者の研究脱落者2名を予定していたが、被験者の脱落者が発生しなかったため、謝礼に余剰が発生した。この3つの理由が差異の主な理由である。
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