2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of evaluation method to develop mushroom cultivation method aiming at functional enhancement in a short time.
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19K02327
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Research Institution | DAIICHI UNIVERSITY OF TECHNOLOGY |
Principal Investigator |
吉本 博明 第一工業大学, 工学部, 教授 (30516919)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ヒラタケ / NF-kappa B / きのこ / 機能性 / 栽培法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、培養細胞を使用したin vitro 試験法により、きのこの健康効果を増強する栽培法を短期間でスクリーニングする方法を提供することを目的とする。きのこはヒトの健康維持、予防および疾病改善にも寄与する食品で、ヘルシーフードとして欧米においても利用が拡大している。きのこは栽培方法により健康効果を増強することが可能であり、健康効果を増強した新規の栽培法が求められている。しかし、栽培法の改善には動物試験など莫大なコストと期間が必要であり、近年動物倫理上からも、研究経済からも新規開発のネックになっている。 本研究では、きのこの持つ抗炎症作用に着目し、炎症反応の上流域で作用する因子を検討し、きのこの健康効果増強の新しいストラテジーの構築を試みる。これにより、短期間で健康効果の高いきのこの生産する方法を開発する土壌をつくり、他国の追随を許さない、輸出を視野に入れた強い農業に寄与することを目指す。 初年度である2019年度は、モデルきのことして選定したヒラタケ(Pleurotus ostreatus)に食品産業廃棄物由来で培地に添加することで血小板凝集抑制作用、ケモカイン遺伝子発現抑制作用などが向上することが複数のきのこで確認されている既知物質を用いてヒラタケを栽培し、試験サンプルを調整した。また、機能性が既知のヒメマツタケ培養菌糸体に波長の異なるLEDを照射して機能性改変を試みたサンプルも調製した。 調整サンプルの効果の差異を確認するために、抗酸化作用(DPPH radical assey)を確認したところ、有意な差異が確認された。このサンプルを使用して、市販NF-kappa B 1Elisa kitを使用した試験に着手し、試験条件の検討をおこなっているところである。 本研究の成果の一部は、2020年3月、第70回日本木材学会(鳥取大会)で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年研究計画にしたがい、モデルきのこであるヒラタケ(Pleurotus ostreatus)子実体を機能性増強について実績のある食品産業廃棄物であるクロレラ抽出残渣を濃度を変えて添加した複数の培地で栽培し子実体抽出物を作製した。本サンプル作製にあたり、クロレラ抽出残渣の提供を企業に依頼したが、先方の製造スケジュールとの関係から入手時期が当初想定していた時期(7月)から年末までずれ込み、モデルきのこを使用した子実体生産時期が遅延した。栽培については協力研究者に依頼し、適切に仕込みを完了し、培養も順調に進み、予定通りに培地組成のことなる複数のヒラタケサンプルを調製完了した。また、同様に機能性が既知であるヒメマツタケを使用し、波長の異なるLED光を照射した栽培を試みたが、子実体原基は形成するものの、子実体の成長までには至らず、方針を変更して培養菌糸体を解析対象とし、培養菌糸体サンプルを作製し抽出物を作製した。 それら子実体抽出物の機能性の差異を確認するために、スクリーニングとしてDPPH Radical Asseyを用いて差異を確認したところ、高濃度群、および赤色LED照射群において有意な差が認められたことから、同サンプルを使用した市販NF-kappa B Elisa kit(invitrogen InstantOne ELISA Kit)を使用した試験に着手した。しかし、ヒラタケ子実体抽出サンプルの製作が遅延したことから、KIT発注も遅延し、in vitro試験の一部を次年度に繰り越すこととした。 2019年研究計画では、NF-kappa B分子のうち、p65など複数の分子を検討し、検出力が高い分子の決定をおこなうために、その他の機能性との相関を検討する予定であったが、上記の遅延理由により、年度内に決定するまでに至っていないことから本区分とした。
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Strategy for Future Research Activity |
年度末からの新型コロナ感染症に伴う、大学での研究環境が十分に機能しない事、また、研究代表者の所属研究機関変更により、研究室立ち上げに労力を取られていることから、本年度の研究スタートは遅れている。 しかしながら、当初の目標通り、R2年度中には、昨年度計画を先延ばししたNFkB分子のうち、どの分子が、その他の機能性解析結果と相関が高いのかを検討し、解析のターゲットとなる分子の決定をおこなう。具体的には、ヒト繊維芽細胞をLPS刺激で反応を惹起し、これにモデルきのこ等の抽出物を添加し、NFkBの発現量を定量する計画である。研究の課題としては、①惹起刺激がLPSが適切なのか、②LPS濃度はどの濃度が最適なのか、③培養細胞はヒト繊維芽細胞が適切なのか、④きのこ抽出物の添加濃度の決定などが課題である。③については、これまでの先行論文等では、ヒトマクロファージ細胞を使用した論文が散見されるが、ヒトマクロファージ細胞の入手は、本予算の範囲内では実験遂行が不可能なため、課題ではあるものの検討はおこなわないと考えらえる。 NFkBのassey KITは高額であることから、これら課題のいずれかが難航した場合は、本年予算内で収まらない可能性があるので、慎重に作業を進めていく予定ではあるが、来年度に継続させることも視野に入れて研究をすすめる。 また、その結果の再現性を確認するために、再度モデルきのこであるヒラタケの栽培をおこない、大量の解析用サンプルの調整をおこなうことを当初の計画としていたが、上記理由により、各種濃度の決定など条件決定が遅延した場合、今年度の計画からヒラタケ栽培と子実体抽出物サンプルの調製は中止する可能性がある。いずれにせよ、本研究計画の目的は、簡便かつ実効性のある機能性きのこ栽培方法開発に資する解析手法の確立であるので、条件検討について最も注力する予定である。
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Causes of Carryover |
2020年3月に開催予定であった第70回日本木材学会大会(鳥取大会)参加旅費として使用予定であったが、新型コロナウイルス感染症対策にともない大会開催が中止されたため、当該金額の未使用が生じた。次年度使用額については、次年度の旅費として充当する計画である。 また、次年度使用額によって支出する旅費によって、今年度予算で計画していた旅費予算については、培養細胞の購入等に充当し、適切に使用する。
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Research Products
(2 results)