2019 Fiscal Year Research-status Report
コメの放射性セシウム汚染に、高濃度セシウム含有不溶性微粒子は影響しているか?
Project/Area Number |
19K02331
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
桧垣 正吾 東京大学, アイソトープ総合センター, 助教 (50444097)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 放射性セシウム / 原発事故 / 不溶性粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度には、福島県内の水田において5月から8月まで毎月、土壌・用水の試料採取を行った。また、8月には稲の試料を採取した。採取した試料は研究室に持ち帰り放射性セシウム濃度の定量測定を行った。定量後の試料では、特に用水をフィルター濃縮した試料についてイメージングプレートによる解析を行った。今年度の試料からは放射性Cs含有不溶性微粒子(RCsBP)は発見されなかった。しかし、過去に同地点で採取した用水のフィルター試料から1個のRCsBPを発見し単離した。 フィルター試料からRCsBPを単離するにあたり、新たな単離手法の確立が必要になった。これは、不溶性の粒子が極めて多量に存在する土壌試料からの単離では超音波振動を使用した湿式分離が適しているが、超音波振動により散逸しやすい素材でできているフィルターからの単離では、同手法の適用が困難なことが明らかになったためである。新たな単離手法は以下の通りである。フィルター上でRCsBPが含まれる部分を特定した後、カプトンテープに付着させ、新たなカプトンテープを何度も接触させて移しとった。必要に応じてこのカプトンテープをエタノール中で超音波振動させてRCsBPを液相に移動させ、新たなカプトンテープに滴下して分離を完了させた。この手法は、その他の素材からのRCsMP単離にも応用できる。 新たに購入したGe半導体γ線スペクトロメーター用デュワーにより、長時間のγ線継続測定が可能となった。そのため、単離したRCsBPは、60万秒の連続測定により放射性セシウム134および137が精度良く定量できた。RCsBP粒子1個の放射能は測定時でおよそ0.3Bqであり、原発事故当時に補正した放射性セシウムの放射能比(134/137)は、1.07であった。これらの放射能や放射能比から、この粒子は2号機から放出されたものであると推定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度採取した試料では、マシンタイムの制約等のため分画したイネ試料の測定に一部完了していないものがあるものの、それ以外は全て測定が完了した。当初計画していた研究内容の想定よりも、RCsBPは発見されなかった。しかし、新たなRCsBP分離手法の確立や、放射能の小さいRCsBPであっても放射性セシウムの放射能比(134/137)を精密に長時間測定出来る機器を購入し、定量測定環境が整備できたため、十分な進捗があったと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度明らかになった知見を元に、以下の項目について研究を行う。 試料を、イメージングプレートによる短時間露光により濃度が極めて高いRCsBPを土壌粒子と区別できることを利用して、イネ中のRCsBP集積位置を解析する。今年度確立した迅速分離手法を用いてRCsBPを単離し、1個ごとの放射能、放射性セシウムの放射能比(134/137)を定量する。試料全体の定量結果から、稲作環境中の放射性Cs濃度に対するRCsBPの放射能比を決定する。 なお、新型コロナウイルスの感染拡大防止により、今年度は十分な試料採取が行えない可能性がある。その際には、過去に採取し、保存されている試料について研究を行う。
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Causes of Carryover |
予算に対する執行率は99.9%を超えている。2020年度請求額と合わせて物品費に充てる。
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Research Products
(7 results)