2020 Fiscal Year Research-status Report
コメの放射性セシウム汚染に、高濃度セシウム含有不溶性微粒子は影響しているか?
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19K02331
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
桧垣 正吾 東京大学, アイソトープ総合センター, 助教 (50444097)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 放射性セシウム / 放射性微粒子 / 分離 / イネ |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までは、福島県内の水田において5月から8月まで毎月、土壌・用水の試料採取を行うことができ、8月にはイネ全体の試料を採取することができた。しかし、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による緊急事態宣言を受け、東京から福島県への出張を行うことができず、2020年度は試料採取を行うことが全くできなかった。そのため、過去に採取し、保存している試料について検討を行った。イネは、茎、葉、籾などに分画して全体の放射能濃度測定を行ってきたため乾燥して保管している。ゆえに、少なくとも放射性セシウム分布は原状が確保されていると考えられる。これらの試料に対してイメージングプレートによる解析を行ったが、2020年度には放射性Cs含有不溶性微粒子(RCsBP)は発見されなかった。 一方で、昨年度確立したRCsBPの単離技術を適用することによって、原発事故直後採取し繊維製の試料から多くのRCsBPの単離に成功した。新たに購入したGe半導体γ線スペクトロメーター用デュワーにより、長時間のγ線継続測定が可能となったため、RCsBPの測定は昨年度以降順調に行うことができている。福島第一原発2号機から放出されたRCsBPは、球状で1個あたりの放射能が多くても数Bqのものがほとんどであり、広い範囲に分布しているとされている。単離したRCsBPについて60万秒の連続測定を行うことにより、放射性セシウム134および137を検出下限値0.01Bqと極めて微量の測定を精度良くできるようになった。 確立した分離技術により迅速に多量のRCsBPを単離できるようになったため、原発事故直後の放射性プルーム中に含まれるRCsBPの割合を実測できる可能性が出てきた。このことは、本研究の本来の目的からは外れる部分があるものの、科学的に意義のある成果を出す基礎となる重要な技術であると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を受け、2020年4月以降福島県の水田への移動が不可能となった。そのため、新たな試料を採取することができなくなったため。また、所属機関の活動制限方針に従って、研究室の滞在時間を減らさざるを得なくなったため。
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Strategy for Future Research Activity |
試料採取が不可能な状況は2021年度も続くことが想定される。そのため、これまで採取してきた試料および、前研究課題の遂行のため採取して保管していた試料を用いて研究を行う。また、不溶性微粒子の分離手法・分離技術の最適化を目指すことも検討する。その際には、不溶性微粒子が含まれている可能性の高い試料を用いて、捜索・単離・定量等を行うことにする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症感染拡大の影響により、試料採取に赴くことができなかった。また、関連学会もオンライン開催となったため、旅費の支出が全くなかったためである。 次年度もこの状況が継続されると想定されるため、今年度の未使用分と合算して物品費に充てる計画である。
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Research Products
(2 results)