2020 Fiscal Year Research-status Report
筋骨格シミュレーションによるボタン掛け外し動作の解析
Project/Area Number |
19K02332
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
堀場 洋輔 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (00345761)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ボタン / ボタンホール / 筋骨格シミュレーション / 衣服 / バリアフリーデザイン / 動作解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では高齢者向け衣服におけるボタンの掛け外し動作を人間工学的手法により解析を行ない、人間工学的に最適なボタンおよびボタンホールの条件を明らかにすることを目的としている。当初の計画では、2020年度は初年度に作製した実験試料を用い、留め外し動作の計測と、計測された動作データを用いた筋骨格シミュレーションを実施する予定であったが、コロナ禍のため動作計測が計画通り実施できなかった。そこで、初年度に実施した実験に関する論文執筆と、一部の試料における留め外し動作のデータを用いた筋骨格シミュレーションを実施した。 動作計測においては、初年度に作製した試料の中で、ボタンの大きさが22mmでボタンホールの方向が異なる3種類(縦、横、右斜め45°)の試料を、他者に見立てたトルソーに着用させた状態で、第1ボタンから第4ボタンまで順番に、立位でボタンの留め外しを交互に10回行なわせ、その動作をモーションキャプチャシステムで計測した。 筋骨格シミュレーションでは、筋骨格シミュレーションソフトAnyBodyを用い、ボタンの留め外し動作の計測データを入力することで、動作を生成するために必要な関節トルクや筋活動度の推定を行なった。解析の結果、いくつかの関節においては、試料の違いにより、関節トルクの仕事や仕事量の大きさに差異が見られた。たとえば、ボタンの留め動作の際の主要な関節運動の1つである左肩の外・内転運動においては、一元配置分散分析の結果、ボタン留め動作に要する仕事は縦穴・斜穴に比べ、横穴の方が大きい結果となった。このことは横穴の方が多くの筋活動を要することを示唆するものであり、ボタンホールの方向により筋負担の程度が異なることが考えられる。また、留め動作と外し動作を比較すると、ボタンホールの方向に依らず、留め動作における仕事の方が大きい傾向が見られ、筋負担は留め動作の方が大きいことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要に示した通り、コロナ禍により当初予定していた被験者を用いた動作計測を実施することができなかった。そのため、ボタンの留め外し動作の筋骨格シミュレーションを実施できたのは一部の試料のみであり、計画よりも研究はやや遅れて進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況に示した通り、コロナ禍のため当初の計画よりも研究はやや遅れて進展していることから、当初予定していたボタンの大きさやボタンホールの方向に関する実験条件を精査し、条件数を絞った上で研究を進めることを現在検討している。それ以外の部分(研究手法や研究手順など)については、引き続き研究計画に従い、研究を推進する予定である。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、2020年度に初年度に作製した試料を用い、ボタンの留め外し動作の筋骨格シミュレーションを実施する予定であったが、コロナ禍により、一部の条件でしか動作計測およびシミュレーションが実施できなかったため、未使用額が生じた。このため、未使用額は2020年度に実施できなかった条件における動作計測とシミュレーションの実施に係る経費に充てることとしたい。
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