2020 Fiscal Year Research-status Report
和食に用いる調味液の香りによる間接的調味が五基本味の発現に及ぼす影響
Project/Area Number |
19K02343
|
Research Institution | Doshisha Women's College of Liberal Arts |
Principal Investigator |
真部 真里子 同志社女子大学, 生活科学部, 教授 (50329968)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保 加織 滋賀大学, 教育学部, 教授 (10190836)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 八方だし / しょうゆ / みりん / 鰹だし / 香り / GC-O分析 / GC-MS分析 / 減塩 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度、濃口醤油を超純水で25%希釈した未加熱希釈液とこれを10分加熱した加熱希釈液、醤油・鰹だし・みりん混合液、この液のみりんまたは鰹だしを超純水に置換した鰹だし希釈液、みりん希釈液、さらに、みりん希釈液は、みりんを熟成みりん、または酒と砂糖に置換したものを準備し、これら7種類の試料について、試料液の香りによる塩味増強効果を検討した。 みりん希釈液の香りに塩味増強効果が認められたため、今年度は、この塩味増強効果を誘導する香気成分を明らかにするために、上記7種類の試料について、HS-SPME法により香気成分を抽出し、GC-O分析とGC-MS分析を行った。 その結果、R.T.54.2分までは全ての試料に共通したにおいが検出され、これは、醤油由来であると考えられた。塩味増強効果のあったみりん希釈液にのみ検出できる特徴的なにおいはなかった。数値化に至っていないが、みりん希釈液のにおい強度が他試料に比べて著しく低かったことから、みりんに含まれるアルコールが加熱中に他成分と共沸することにより、香気成分が揮発しやすくなったことが示唆され、におい強度のちがいが塩味増強効果に影響した可能性がある。また、用いたSPMEファイバーでは吸着できなかった成分があるとも推察された。 熟成みりん希釈液を除く6試料について、フラッシュGCノーズによる香りの識別を委託分析したところ、やはり、みりん希釈液特有のピークはなかった。試料間の識別力の強いピークを基に主成分分析したところ、第一、第二主成分の成分得点プロットにて、各試料は明確に区別できたが、みりん希釈液は原点付近に配置された。 以上のことから、みりん希釈液による塩味増強効果は、特有の香気成分の生成によるものではなく、揮発性の変化により香気成分バランスが変化することに起因すると推察された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度は、コロナ禍により、上半期研究を進めることができなかった。また、本研究にとって、官能評価は主要な研究手法であるが、感染防止の観点から、官能評価の実施が不可能となった。そのため、下半期に香気成分の機器分析に絞って研究を実施した。 さらに、事前の予想に反して、塩味増強効果の認められた試料に特徴的な香気成分が見いだされず、香気成分分析の手法等の見直しも必要とされている。 以上の理由により、研究の進行が遅れていると言わざるを得ない。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、コロナ感染状況をにらみつつ、官能評価を実施する方向で、倫理審査等の準備を始める予定である。官能評価によって、本来、塩味だけでなく、他の味質についても煮汁の香りによる呈味強度の影響を検討する予定であった。差異が大きくないと検出できない可能性はあるが、評価者への負担が少なく、多様な項目を評価可能なCATA法を用いることで、他の味質に対する影響を把握したいと考えている。 官能評価ができない場合、もしくは、官能評価と並行して、2020年度の香気成分分析の不明確な部分を補填すべく、GCによる香気成分分析を行う予定である。ただし、研究室の人員だけでは迅速なデータ取得は容易ではない。機器分析については、2020年度からアルバイトを採用し分析効率を向上させる予定であったが、コロナ禍にて適切な採用ができない状況にある。コロナ感染状況と大学の態勢を考慮の上、分析委託も含め、引き続きアルバイト採用を検討したいと考えている。 また、本研究は、今年度最終年度に当たるが、今年度の官能評価も十分に行えない可能性があり、これまでの遅れを回収するためにも、研究期間の延長申請の提出も検討している。
|
Causes of Carryover |
2020年度は、コロナ禍により、上半期研究を進めることができず、また、感染防止の観点から主たる研究方法である官能評価の実施を見送った。以上のことから、昨年度の研究費に余剰が生じた。また、2019年度終了時には、2020年度からアルバイトを採用し機器分析による香気成分分析を効率的に進行させる予定であったが、それもコロナ禍にて適切な人員募集ができない状況となり、1件、委託分析を行うにとどまった。 以上、コロナ禍での研究態勢を整えることができず、研究の停滞と並行して、支出も抑えられ、差額が生じるに至った。 今後は、研究の停滞を解消すれば、同時に、費用が発生するため、この差額は解消されるものと考える。コロナ感染状況をふまえつつ、2021年度は、官能評価の実施ならびにアルバイト採用による機器分析の進行促進を予定している。さらに、昨年度の大きな研究停滞を解消するため、研究期間の延長申請の提出を検討している。
|