2019 Fiscal Year Research-status Report
学校着用服が育む諸感覚の解明と服育への応用方法・効果測定指標の開発
Project/Area Number |
19K02353
|
Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
内藤 章江 お茶の水女子大学, グローバルリーダーシップ研究所, 特任リサーチフェロー (70367639)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 服育 / 学校着用服 / コミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「学校で着用する衣服(学校着用服)」が育む意識や諸感覚を明らかにするために、2019年度は三大都市(関東、関西、中部)の中学生、高校生、教師、保護者を対象にアンケート調査を実施した。調査対象者は、東京都、大阪府、岐阜県の中学生795名、高校生853名、中学・高校教諭89名、生徒の保護者189名の計1,926名であり、調査は2019年11月~2020年3月に実施した。 調査の結果、調査対象校の9割以上が学校制服や標準服の着用を義務付けており、生徒はそれを好んで着用していることがわかった。中学生・高校生ともに、学校着用服の着用により「通っている学校の一員であることを自覚する」、「通っている学校の生徒であることを誇りに感じる」と回答した。一方、学校着用服を着用しても「着ている姿を自慢したくなる」、「着ている姿を誰かに見てほしくなる」、「勉強したくなる」は「全く思わない」の回答が多くなった。 教師は学校着用服に「着用する場面に応じた服装ができる力を育む役割」、「規律やルールを守る気持ちを育む役割」を期待していた。着装指導する理由は「校則で決められているから」が特に多く、学校着用服を通じて「ルール順守」を生徒らに学ばせたいと考える様子がうかがえた。保護者は学校着用服に「通っている学校の一員としての自覚を促す役割」の他に「生徒たちの安全を確保(事故・犯罪防止)する役割」を期待しており、実際に肌の露出に関する注意喚起をしていることが分かった。なお、教師と保護者は「気持ちを『勉強モード』に切り替える役割」にも高い期待を抱いており、生徒の回答内容とは乖離が見られた。 以上より、着用者である「生徒」、教育者である「教師」、親である「保護者」のそれぞれに学校着用服へ期待する役割は異なり、それにより相互のコミュニケーションにずれが生じることが推察できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、「学校で着用する衣服(学校着用服)」が育む意識や諸感覚を明らかにすることを目的としており、3都市の中学生、高校生、教師、保護者計1,926名への調査依頼ならびに調査実施もスムーズに進められ、十分なデータを得ることができた。目的達成のために、データ入力をアルバイトに委託し、作業効率を高める工夫を図ることができた。そのため「おおむね順調に進展している」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、「学校で着用する衣服」が着用者とその周囲の人々(保護者、教師、地域住民など)との関係性をどのように構築し、どのような諸感覚を育むのか、今回得た調査データを用いて解析する。この結果をふまえ、具体的に「学校で着用する衣服」をビジュアル化し、中学生、高校生、大学生に呈示してどのようなデザイン要素がどのような意識や諸感覚を育むのか、コミュニケーションにどのような影響を及ぼすのか、心理実験を通じて明らかにする。
|
Causes of Carryover |
調査を依頼していた学校の都合により、調査が実施できないケースが生じたため。また、2019年度末に予定していたヒアリングについては、新型コロナウイルス感染症の影響により実施がかなわず、次年度実施することにした。
|