2020 Fiscal Year Research-status Report
異世代シェア型地域居住モデル構築を通じた郊外住宅地の介護予防力向上に関する研究
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19K02354
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
藤岡 泰寛 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 准教授 (80322098)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大原 一興 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 教授 (10194268)
田中 稲子 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 准教授 (60345949)
野原 卓 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 准教授 (10361528)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 異世代シェア居住 / 地域居住(Aging in Place) / 高齢期居住 / 介護予防 / 住宅改修 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究課題1】は、住空間の自由度の高い戸建て住宅・住宅地を対象とした研究である。今年度は旭化成ホームズ株式会社くらしノベ-ション研究所の協力を得て、実際に改修された二世帯住宅103件を対象とし、このうち、高齢施主(本研究では60代以上とした)かつ世帯縮小(つまり二世帯で居住しておらず単世帯居住)に該当する12件を抽出し、住宅改修時の空き部屋の取り扱いの現状を詳細に分析した。並行して、アンケート調査、ヒアリング調査を実施した。また、研究を通じて高齢期になってから新たな活用を考えること自体が現実的でない(体力的にしんどい、片付けるだけで大変)との声もあったことから、50 代施主による改修に対象を広げ、高齢期改修との比較を行った。また、世帯縮小時には、未使用の住空間が増加することから、潜在的に冬期のヒートショックリスクが増大することが考えられる。そこで、住宅改修時に間取りを工夫することによってどの程度ヒートショックリスクが低減するかといった点についてもモデル的な検討を加えた。 【研究課題2】は、住空間の違いが少なく、効果検証が行いやすい集合住宅・住宅団地を対象とした研究である。今年度は、ひきつづき2017年10月より横浜国立大学学生4名(2019年度からは3名)が居住している横浜市旭区左近山団地を重点的な調査対象とした。前年度実施したアンケート調査の追加分析を行い、学生居住の評価として、「地域に住んでくれていること」といった間接的な効果に加えて「住民同士のつなぎ役」などへの直接的な効果への期待の声もあることがわかった。また、2014年から運営されているコミュニティ拠点の運営NPOにヒアリングを行い、初期客層の減少傾向(加齢等の身体的理由に伴うもの)と、一方で、新たな高齢客層が獲得できていない状況などが明らかとなった。次年度導入予定の相互支援ツールの検討に活かしていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
【研究課題1】として、旭化成ホームズ株式会社くらしノベ-ション研究所の協力を得て、2017年度リフォーム完工物件事例の調査分析をすすめ、具体的な間取り分析や、アンケート調査、ヒアリング調査を実施することができた。研究を続けるなかで、60代施主による改修に加えて、プレシニア期における改修が高齢期を迎える上でひとつのポイントであることがわかり、次年度は50代施主に対象範囲を広げて研究を継続する予定である。 【研究課題2】前年度実施したアンケート調査結果をふまえ、より日常的な相互支援ツールである地域通貨(ポイントカードのようなもの)の導入を検討し、試行することを予定していたが、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、対面による相互支援を前提とした仕組み導入については延期を余儀なくされた。一方で、特に高齢世帯にとって、外出がままならない状況のなかで冬期を迎えるにあたり例年以上に在宅生活におけるヒートショックリスクが高まることが考えられた。このため、試作中であった「住まい改善手帖」(研究計画上は【研究課題1】成果による空き室活用のアイデアを含むもの)のうち、冬期ヒートショック対策に関する内容を小冊子としてまとめ対象団地において先行回覧した。その効果等については次年度調査により捕捉したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
【研究課題1】としては、以下の研究に取り組む予定である。 ・二世帯住宅の高齢期リフォーム事例の継続分析、および、プレシニア期における世帯縮小を伴うリフォームの内容と目的の分析を進める。具体的には、リフォーム未実施世帯へのニーズ調査や、リフォーム工事金額の幅を広げた調査分析などを進める。以上より、高齢期居住のリスク軽減に寄与する住宅改修のあり方を、年齢軸(プレシニア期からのライフステージ視点)、平面軸(バリアフリー視点)、環境軸(温熱環境視点)を組み合わせて行う。 ・一般的な戸建て住宅におけるリフォーム事例調査を実施し、比較考察を行う。 【研究課題2】としては、以下の研究に取り組む予定である。 ・学生入居事業の進む横浜市旭区左近山団地において、日常的な生活支援の仕組みを構築するために、地域通貨(ポイントカードのようなもの)の導入を再検討し、試行する。一定期間の流通実験後回収し、ツールの有効性や地域空間との対応関係等について分析を加える。 ・地域に設けられたコミュニティ拠点を、住民間(学生を含む)の地域通貨流通・交換の場としての可能性と役割といった観点から考察する。また、5年目を迎える学生居住が、地域に与えてきた影響や効果について調査を行う。例として、住民ボランティア拡充に与えた影響など(学生居住による間接的効果として)を調査により捕捉する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は主に以下の2点である。使用計画とあわせて記す。 【研究課題1】として、高齢期の住宅改修ニーズを把握する際に、少数事例からサンプル的に把握することを想定していたが、初年度に旭化成ホームズ株式会社くらしノベ-ション研究所からリフォーム事例の詳細なデータベースの提供を受けることができたため、二年度目はこのデータベースの分類を通じて典型事例の抽出、および、抽出事例に対して具体的な調査や簡易シミュレーションによる分析を行った。より詳細な分析を行うためには高性能のパーソナルコンピューターの導入と一定の分析期間が必要であり、次年度の継続課題として位置づけた。 【研究課題2】として、郊外住宅団地におけるコミュニティ拠点づくり・運営の先進事例を広く調査する予定であったが、2020年度に試験導入予定であった地域通貨と同様に、新型コロナウイルス感染症の拡大により、再延期を余儀なくされた。代替措置として、既往研究の整理や文献調査を通じた事例収集に注力した。2021年度は、先進事例団体との関係構築も含めた詳細な調査を実施し、より効果的な仕組み構築を目指していく予定である。
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Research Products
(7 results)