2023 Fiscal Year Research-status Report
異世代シェア型地域居住モデル構築を通じた郊外住宅地の介護予防力向上に関する研究
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19K02354
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
藤岡 泰寛 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 教授 (80322098)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大原 一興 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 教授 (10194268)
田中 稲子 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 教授 (60345949)
野原 卓 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 准教授 (10361528)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 異世代シェア居住 / 地域居住(Aging in Place) / 高齢期居住 / 介護予防 / 住宅改修 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究課題1】は、住空間の自由度の高い戸建て住宅・住宅地を対象とした研究である。今年度は最近実施された高齢期の住宅リフォーム事例から高齢オーナーへのヒアリング調査を行う予定であったが、【研究課題2】において新たな動き(後述)が見られたことから次年度(最終年度)に研究計画を繰り越すこととした。関連研究として、2013年に分譲された16戸の戸建て分譲住宅地(景観協定付き)を事例として、うち5世帯8名へのヒアリング調査を行った。分譲後約10年が経過し高齢入居者も現れるなかで、現時点で住宅そのものへの目立ったリフォームはまだ見られないものの、庭や外構まわりの緑環境の個別改変が、景観協定による共通理解の元で協調的に実施されていることが明らかとなった。こうした良好な近隣関係による住まい方や暮らし方の相互作用(教え合い)がその後の住宅リフォームにどのような影響を与えるのか継続して捉えていきたいと考えている。 【研究課題2】は、住空間の違いが少なく、効果検証が行いやすい集合住宅・住宅団地を対象とした研究である。今年度は前年度に査読論文(日本建築学会計画系論文集)として投稿した論文が再査読を経て採択となり、2023年12月に掲載され研究成果を広く還元した。また、2022年度から開始された近隣の公営住宅団地における学生入居事業を新たに研究対象に加え、前年度は自治会や入居学生7名への詳細なヒアリング調査を行い、今年度は新たに6名の学生が入居したことから学生ヒアリング調査を追加で実施するとともに、高齢住民22名へのヒアリングを追加実施し、左近山団地との比較考察を行った。これらの研究成果を2024年度日本建築学会大会に口頭発表論文として投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
【研究課題2】が想定より順調に進展しているものの、【研究課題1】が想定よりやや遅れている。このため、全体としてはやや遅れていると評価した。 【研究課題1】本研究では高齢期の住宅リフォームのなかに、いかにして異世代シェア居住ニーズが顕在化しうるか、そのメカニズムに着目している。これまで旭化成ホームズ株式会社くらしノベ-ション研究所との共同研究(2019年度)により、2017年度リフォーム完工物件事例の調査分析からリフォーム後に高齢期に残存しやすい空き部屋典型4タイプを抽出した。さらに、高齢期に必要度の高い冬期ヒートショック対策(2020,2021年度)、夏期熱中症対策(2022年度)プログラムを地域ケアプラザと共同で開発し参加者へのアンケート等を通じて基礎的ニーズを捉えてきた。2023年度は関連研究として、経年経過した戸建て分譲住宅地(景観協定付き)を事例として住民の良好な近隣関係による住まい方や暮らし方の相互作用(教え合い)の可能性の視点を得た。 【研究課題2】本研究では異世代シェア型地域居住モデルの構築を目指しているが、非同居型の異世代シェアとはいかなるものか、その方法論構築が必要である。そこで、若者(大学生)の入居事業が進む住宅地をとりあげ、学生居住の効果検証を通じてこの方法論構築を目指している。2017年度から学生入居事業の進む横浜市旭区左近山団地において、2019年度、地元連合自治会の協力を得て学生居住に関するアンケート調査を実施した。2021年度までに基礎的な調査分析を終え2022年度に査読論文として投稿し2023年度に採択された。並行して2022年度から開始された近隣の公営住宅団地における学生入居事業を研究対象に加え、2023年度も継続して入居学生と高齢住民への調査を行った。その結果、当該公営住宅団地の方が入居学生への期待がより高いことなどを明らかとしてきた。
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Strategy for Future Research Activity |
【研究課題1】については、これまで構築した研究仮説(2階建て戸建て住宅を典型とした場合の、高齢期に残存しやすい空き部屋典型4タイプ)をふまえ、旭化成ホームズ株式会社くらしノベ-ション研究所の協力も得て進める予定である。 【研究課題2】については、最終年度に次の大きく2つの研究計画を予定している。①活動ポイント制などを導入している他団地事例を調査し、地域通貨のモデル検討を行う。②左近山団地については2019年度のアンケート調査から5年経過するため、あらためて全戸配布によるアンケート調査を実施し、経年経過を定量的に捉え、この間の学生入居事業が高齢住民の介護予防力向上にどのように寄与しているかを明らかとする。介護予防のスケールにはさまざまなものがあるが、現時点ではソーシャルキャピタル向上の観点からの分析を想定している。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は主に以下の2点である。使用計画とあわせて記す。 【研究課題1】として、初年度に旭化成ホームズ株式会社くらしノベ-ション研究所からリフォーム事例の詳細なデータベースの提供を受けることができたため、二年度目以降はこのデータベースの分類を通じて典型事例の抽出、および、抽出事例に対して具体的な調査や簡易シミュレーションによる分析を行い査読論文として報告した。この間、冬期に加えて、夏期等のより多様な環境視点からのリフォームニーズの把握を進めた。なお、新型コロナウイルス感染症が収束したため、高齢オーナーに対するヒアリング調査を最終年度の課題として位置づけた。 【研究課題2】として、新型コロナウイルス感染症が収束したため、これまで実施できなかった先進事例調査を行う予定である。また、コロナ禍の研究代替措置として、これまでの研究成果を査読論文としてまとめ投稿し再査読を経て2023年度に採択となった。一方、2022年度から近隣の公営住宅団地においても学生入居事業が開始されたためこの取り組みを研究対象に加え、2022、2023年度の2カ年度にかけて入居学生延べ12名と、高齢住民延べ28名への詳細なヒアリング調査を行った。最終年度は、先進事例調査から異世代シェア居住の効果を高める仕組みの検討と、2019年度実施済みアンケート調査の5年後調査を実施し経年比較研究を行う予定である。
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Research Products
(5 results)