2021 Fiscal Year Research-status Report
地震災害後の高齢者QOL劣化状況把握と低減に資する時空間評価システムの構築
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19K02359
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
志垣 智子 三重大学, 学生総合支援機構, 特任講師(教育担当) (00722513)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 地震災害 / 高齢者のQOL / 居住環境 / 多職種連携 / 高齢者住宅等 / 救急医療情報の更新 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、平時から地震災害時を一貫的に捉え、地震災害後の高齢者QOL劣化抑制に資する時空間評価システムを構築することを目指す。具体的には介護・看護・医療ニーズの特に高い高齢者が集住する高齢者住宅等を対象に地震発生直後から1年間の健康被害の実態を図面分析と共に検証し、地震災害後の高齢者QOL劣化抑制に資する居住環境指標を抽出する。成果の特徴は、昼夜間人口比率の高い都市部における2次被害低減に向けた地区防災計画等に不可欠の資料となる。また住み慣れた地域で居住継続するための地域包括ケアシステム上の共助のさらなる在り方を考える際の特段の汎用性をもつ。 研究3年目の今年度は、コロナ禍で高齢者住宅等へ現地調査することができず、オンラインでのヒアリング調査を1件(熊本市東区にあるサービス付き高齢者向け住宅:2016年熊本地震)、現地でのヒアリング調査を1件(大阪市北区社会福祉協議会:2018年大阪北部を震源とする地震)であった。 地震災害による高齢者のQOL劣化状況把握のため、これまでに対象としている2地震(2018年大阪北部を震源とする地震、2018年北海道胆振東部地震)に加えて、石巻市災害弔慰金支給に係る資料と災害障害見舞金支給にかかる資料を収集している。高齢者住宅等(施設を含む)を対象に、1995年東北地方太平洋沖地震発生後から高齢者の被害実態を一部把握した。具体的には、停電による在宅酸素療法等の在宅療養の継続不可、交通事情等により救急車が現場に来られず医療機関への搬送の遅延、高齢者住宅等の介護機能の低下により転居・移動を繰り返し、既往症が増悪した事例が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の計画では、今年度高齢者QOL劣化抑制に資する居住環境指標抽出と多分野専門職によるその妥当性評価と地震災害後の高齢者QOL劣化抑制に資する時空間評価システムの構築と検証を実施する予定であった。 福祉の現場はコロナ禍でクラスター等防止の感染対策におわれたため、調査実施が困難であった。「平時から地震災害時へリンクした高齢者の健康と居住の安定を考える研究委員会」(オンライン開催もしくは現地訪問で実施)を開催したのは、熊本市東区のサービス付き高齢者向け住宅1件と大阪市北区社会福祉協議会1件であった。研究会では、住戸内のキッチン有無・配置別の被害の大きさ、早期発見に資する平面特性・階数に応じた見守り活動、職員と地域とのつながり/関係構築、救急医療情報の更新と共有の工夫、医療機関へのスムーズな搬送等が高齢者QOL劣化抑制に資する居住環境指標として抽出・検討した。 地震災害による高齢者QOL劣化抑制に資する居住環境指標をさらに検討・補強するため、石巻市災害弔慰金支給に係る資料と災害障害見舞金支給にかかる資料を収集している。高齢者住宅等(施設を含む)での高齢者の地震発生直後の詳細を死亡診断書、事故状況報告書、看護記録、家族の意見書、日誌等に基づき分析中である。 また、当計画では、震度5弱以上の地震発生時、上記計画性の実証性確認を含めた現地調査を実施予定である。2022年3月に発生した福島県沖を震源とする地震(最大深度6強)被害の調査・図面分析を実施する。既に改訂版調査票を作成しており早期に実施可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
当該計画の実証性を確認するため、2022年3月に発生した福島県沖を震源とする地震(最大深度6強)被害の調査を実施する(既に改訂版調査票を作成し早期に実施予定である)。過去の2地震(2018年大阪北部を震源とする地震、2018年北海道胆振東部地震)から得られた居住環境指標との違い・共通性について検討する。 石巻市災害弔慰金支給に係る資料と災害障害見舞金支給に係る資料分析より、2011年東北地方太平洋沖地震発生直後より高齢者のQOL劣化抑制に資する居住環境指標を抽出・検討する。 昨年度は2回のみの開催であった「平時から地震災害時へリンクした高齢者の健康と居住の安定を考える研究委員会」を随時開催し、地震災害後の高齢者QOL劣化抑制に資する時空間評価システムの構築・検証する。 昨年度の研究成果も含めて、学会発表等を通して随時報告していくこととする。
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Causes of Carryover |
今年度は2021年11月以降、学会等に現地参加し、最新の情報収集はできたものの、新型コロナウィルス感染症拡大により北海道、関西各地の高齢者住宅等への訪問ヒアリング調査が実施できなかった。 今年度は、昨年度の成果報告として積極的に学会発表を行うため、参加費・登録費、旅費等が発生する。 コロナ禍の状況次第であるが現地調査費、調査集計の人件費、ヒアリング調査対象者の謝金等が発生する予定である。
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