2023 Fiscal Year Research-status Report
伝統発酵食品および新規発酵食品の機能性物質に関する研究
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19K02360
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Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
杉山 靖正 実践女子大学, 生活科学部, 教授 (90347386)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 未利用・低利用資源 / 摘果 / 機能性成分 / 発酵食品 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、昨年度に引き続き、新規発酵食品の原料となり得る摘果果実(未熟果実)を見い出すため、摘果果実に含まれる機能性成分を明らかにする探索研究を行った。本年度は未熟なレモンとリンゴ(ぐんま名月)を試料とし、機能性成分を単離後、機器分析することで化学構造を決定した。その結果、レモンの未熟果実に、抗酸化、抗炎症、チロシナーゼ阻害活性などが知られているオキシポイセダニンヒドラートと7-メトキシクマリンが含まれることを明らかにした。また、前者は完熟果実よりも未熟果実に2.7倍多く、後者は完熟果実には検出されなかった。さらに、ぐんま名月の未熟果実は、サンふじで明らかにしたクロロゲン酸、イソクエルシトリン、カテキンに加え、4-O-P-クマロイルキナ酸とフロリジンを完熟果実より多く含むことが明らかとなった。 続いて、昨年度と同様に発酵食品の原料の一部に摘果された未熟なリンゴを用いて機能性発酵食品の製造を試みた。まず、蒸した大豆に種麹を加え30℃で48時間培養し豆麹を作製した。次に、3種類の摘果リンゴ(品種:サンふじ、シナノゴールド、ブラムリー)それぞれに20%食塩水を加えミキサーで細かくした後、作製済みの豆麹と乳酸菌および酵母を加えて発酵を開始した。105日目に発酵液を濾過および遠心処理後、火入れを行った。これを4℃で1週間静置後、再度遠心処理して上清(サンふじ醤油、シナノゴールド醤油、ブラムリー醤油)を得た。同様に摘果リンゴを加えないで調製した発酵液を対照試料(大豆醤油)とした。製造した全ての摘果リンゴ醤油の抗酸化活性をDPPH試薬を用いて測定したところ、ラジカル捕捉率はサンふじ醤油:90.9%、シナノゴールド醤油:80.6%、ブラムリー醤油:55.0%、であり(大豆醤油のラジカル捕捉率:34.6%)、摘果リンゴを原料の一部とすることで抗酸化活性に優れた醤油を製造できることが証明された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
摘果レモンと摘果リンゴ(ぐんま名月)に含まれる機能性成分を特定できたことで、未利用資源の有効活用に繋がる成果が得られた。さらに、新規発酵食品の原料の候補として摘果果実の種類を増やすことができた。 また、新規発酵食品の製造にあたり、摘果リンゴ(品種:サンふじ、シナノゴールド、ブラムリー)を原料の一部に用いることで抗酸化活性に優れた醤油の製造が可能であることを明らかにできた。昨年度はブラムリーの摘果果実を用いて醤油を製造し、出来たブラムリー醤油は大豆醤油に比べて高い抗酸化活性を有することが明らかになったものの、想定していたよりも低い上昇率であったことから再検討が必要となっていた。本年度は3品種の摘果リンゴを原料として用いることで、摘果リンゴの品種が完成した醤油の抗酸化活性に大きく影響することがわかった。特に摘果サンふじを原料とすることで機能性醤油の製造が可能であることを明らかにし、昨年度の問題点を解決する手段を見い出すことができた。以上のことより、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
サンふじ醤油の抗酸化性の高さは原料とした摘果サンふじによるものであると推定されており、未解明の摘果サンふじの成分を特定する必要がある。そのため、これまでの研究を継続して未同定成分の単離と構造解析を進める。同時に、サンふじ醤油からの機能性物質の単離と構造決定も進める。さらに、サンふじ醤油を上回る機能性発酵食品を製造するため、多くの摘果果実などを原料として用いて研究を進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響を受けた研究の遅れの挽回に努め、機能性の高い発酵食品の製造に成功するなど本年度は大きく研究が進展したが、最終結論までに達しなかったため、次年度使用が生じた。そこで次年度を最終年度とし、これまでの研究の継続とまとめのため、予定通り発酵食品の製造と成分分析、機能性研究について必要な物品の購入に使用する予定である。
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