2020 Fiscal Year Research-status Report
子育て期後の共働き家族における妻のキャリア形成と夫の家庭役割、勢力関係
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19K02362
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
中川 まり 東京女子大学, 現代教養学部, 准教授 (00649634)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 相対的資源差 / 勢力関係 / 夫婦関係 / 共働き家族 / 性別役割分業 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、先行研究レビューおよび学会発表、専門家からの情報収集、依頼原稿執筆、研究成果発表のための単著執筆などを行った。令和2年度に計画の夫と妻へインターネット調査は、コロナ禍の社会状況から調査対象者の心理的状況を配慮し、令和3年度に延期する。研究実績として、2回の学会発表について概要を以下に示す。 1.第30回日本家族社会学会大会(東北大)での単著発表「共働き妻の相対的資源と働き方、性別役割分業意識」(2020.9.13) 本研究では、4年制大卒の共働き妻を対象にして、相対的資源としての夫婦の収入における妻の収入割合が、妻の働き方、家族から影響を受けるのかを明らかにすることを目的とし、インターネット調査を行った。対象は日本に居住し、4年制大卒の有配偶であり、雇用者である妻140名である。共分散構造分析の結果、妻の相対的資源を多くする要因は、妻が正規雇用である、通算勤続年数が長い、夫の教育年数が長い、夫の収入が低い、子どもがいない、性別役割分業意識が非伝統的であることであった。以上から高学歴の共働き妻が夫婦間のジェンダー平等に向けた相対的資源を多く獲得するためには、労働市場からの資源と非伝統的な性別役割分業意識を持つことが重要であることが示唆された。 2. 第40回日本家政学会家族関係学セミナー(和洋女子大)単著発表「高学歴である共働き妻の相対的資源と夫婦関係満足度との関連性」(2020.10.10) 目的は妻の相対的資源と性別役割分業意識が夫婦関係満足度に関連するのかを明らかにすることである。前項で用いた調査と同じデータを用い分析モデルを発展させた。パス解析の結果、妻の相対的資源と性別役割分業意識は、夫婦関係満足度との有意な関連性は見られなかった。結果から、妻にとっての相対的資源は、夫婦間における妻の勢力を強めるものであっても、情緒的な夫婦関係には関連しないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度は、二次データ分析、先行研究レビュー、国内・国際学会での発表、論文投稿を計画し、二次データ分析、先行研究のレビューは計画通りに実施した。研究成果の発表については、2回の国際学会での発表と1回の国内学会での発表、台湾成功大学との研究交流会での報告を行い、計画を上回る進捗となった。論文投稿は、令和3年度に計画している単著著書出版の執筆を優先し投稿は行っていない。計画にはなかったが、依頼原稿として、文献紹介および男女共同参画社会に関連した市民向け雑誌への記事掲載を行った。 令和2年度は、「末子中学生以上の共働き家族と妻の就業、ワーク・ライフ・バランス」に関する夫と妻へインターネット調査を計画し、準備をしたが、コロナ禍の社会状況から対象者の心理的状況を配慮し令和3年度に延期することにした。研究成果の発表として、2回の国内学会での発表は計画通りに実施した。両方ともオンライン開催となったが、ともに80名を超す院生・研究者に発表を聞いていただき、貴重なご意見をいただくことができた点で有意義であった。令和3年度に出版する単著の執筆を優先して、論文投稿は行っていない。また、関連する調査として6名の4年制大学卒の女性を対象とした「高学歴女性のウェルビーイング」に関するインタビュー調査を行った。調査結果は、『東京女子大学女性学研究所年報』No.31(印刷中)に掲載される。単著の執筆について、本書はこれまでの父親の育児・家事参加に関する研究、母親ゲートキーピングに関する研究に加え、本研究の成果としての共働き夫婦における妻のキャリア形成、勢力関係などに関する内容を加えた研究成果として位置づけている。このほかにも計画にはなかったが、依頼原稿として、書評および男女共同参画社会に関連した市民向け雑誌への記事掲載などを行った。以上の進捗状況に基づき、令和2年度はおおむね計画通りに進捗したと評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、令和3年には次の2点を計画している。第一は、「末子中学生以上の共働き家族と妻の就業」に関するインターネット調査の実施である。現在は質問紙の内容を精査しているが、末子中学生以上の子どもをもつ共働きの夫と妻を対象に行う計画である。令和3年度では、インターネット調査の実施とデータクリーニング、記述的なデータ分析までを行う。次年度以降に、多変量解析による研究成果を発信する。第二は、研究成果の発信としての単著の書籍出版である。令和元年度の二次データ分析にて行った、母親の家事・子育てのゲートキーピング研究およびこれまで行ってきた父親の育児・家事参加について、母親のキャリア形成、勢力関係の先行研究レビューも含めて執筆をし、11月の出版予定として進めている。二次データ分析による論文投稿も単著の出版と並行して行う方針である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由について、旅費はコロナ禍にともない、米国での国際学会の発表を行わなかったため、支出をしなかった。その他となるインターネット調査は、コロナ禍の社会的状況をふまえ、対象者の心理的影響を考慮して令和3年度に延期したため、インターネット調査費用の支出が延期となったものである。使用計画として、海外出張の旅費は、オンラインを通じた研究活動のための物品、図書資料に使用し、インターネット調査は令和3年度に予算額は同じで実施する計画である。旅費の未使用額があった場合は、インターネット調査に加える計画である。
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Research Products
(2 results)